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廣嶋玲子・作 jyajya・絵「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 みせびら菓子と……」(ネタバレあり)

8歳の娘が、「一番最後のみせびら菓子が一番好きだから、ママにも読んで欲しい」と言いました。

銭天堂は不思議な駄菓子屋さん、考えごとをしていると急に見知らぬ路地に迷い込んでしまいます。そして、「銭天堂」の看板を掲げたお店が現れます。こんなところにあったのだろうか、と考えながら、足を踏み入れると、誰もが色とりどり、名前も様々な駄菓子たちにあっという間に虜になります。

「みせびら菓子と……」のお話は、子供の幼稚園のママ友の1人千春のことが気になって仕方がない美沙子の話から始まります。美沙子の夫は超エリート、家は裕福でブランド物で身を固めていますが、どんなに自慢話をしても、羨ましそうな顔をしない千春に、美沙子はイライラしてしまいます。千春はいつもニコニコして、ママ友みんなに好かれています。

その日も幼稚園のお迎えには、そぐわない位のおしゃれをして、息子を迎えに行くのですが、その途中で急に路地に迷い込んでしまいます。

店内の駄菓子たちを眺めていると、奥から女主人が出てきます。どんなものが希望かと尋ねられると、「千春から羨ましがられたい」と言う本音を打ち明けてしまいます。

そして希望がかなう不思議なお菓子を手に入れるのです。見た目も美しいそのお菓子を食べて幼稚園に向かうと、他の人はもちろん、千春までうらやましいと言い、ねたましそうな目で自分を見るのでぞくぞくしてしまいます。

一方千春は、なぜか急にその美沙子のことをねたましくてたまらないと思うようになった自分に、どうしたんだろう、と悩んでしまいます。

数日経ったある日、うとうと昼寝をしてしまい、ふと気がつくと千春の娘が電子レンジで温めた、小さなホットケーキを差し出してくれます。

「これを食べて元気になってね」
普段なら、娘に譲ろう、娘と分けて食べよう、と思うのに、あまりの美味しさに最後まで食べてしまいます。娘は元気になった千春を見てとても喜びます。そして千春は娘のためにホットケーキを焼いてあげます。

実は、このホットケーキは、ほっとけケーキという銭天堂のお菓子でした。千春が寝入ってしまった間に銭天堂の女店主が現れ、娘の欲しいものを言い当てた女店主から、お守り袋に入っていた500円玉を使って購入したのです。

私は最初、自分に美沙子のようなところがあっただろうかと思いました。ですが、千春のエピソードが出てきて、娘は千春の娘に自分を重ね合わせ、私にも元気になってもらいたいと思ったのだと気付きました。そして、私のことが大好きだということを伝えたいのだと。

この日、久しぶりに私自身の母親と言い争いになりました。私の子育てを批判した挙句、仕事をセーブしろ、仕事だってうまくいってないんだろう、何もかも上手くいかないんだ、と言われました。
頭に血がのぼり、向こうがかけてきた用件も終わっていたので、電話を切りました。
今はパソコンを持ち帰って仕事をしても終わらなくて、疲れ切っているし、全く順調とはいえません。
しばらくして、あれ、仕事がうまくいってると思ってる人なんて余程優秀か、挑戦してないかのどちらかだし、そもそもうちの母親、パートさえ3ヶ月もたなかったんだ、そんな人の発言、なんで気にしたんだろう、と思いました。

ほっとけ、だったな。

仕事でうまくいかないと感じているのも、意見の違いに感情を振り回されているからで、受け入れるべき内容とスルーすべき内容を落ち着いて分けるべきなのです。

こちらも、ほっとけ、なんです。

私に必要なのは、ほっとけケーキでした。娘がそこまで理解していたかどうかは分かりませんが、これを読んで欲しい気持ちがとても嬉しくて、温かい気持ちになりました。

あともう一つ思ったのは、自分の気持ちを無視してるな、ということでした。怒りの感情は一見自分の気持ちを出しているようだけど、アンガーマネジメントでいう一次感情を自分で気にしていない、ということです。

批判されて悲しい。
仕事で疲れていて辛い。
考え方を理解してもらえなくて、残念。
……
もっと子どもの頃に、いつも怒られて悲しかった。かわいい、と言ってほしかった。

それを飛び越してどっちが悪いとか考え、自分の非を認めたくないから、怒りに一気に行っていたかもしれまさん。

批判されるのは自分がダメだから。または相手が批判好きだから。
仕事が終わらないのは自分の能力が足らないから。または前の人たちが課題を残し過ぎたから。
考え方を理解してもらえないのは、自分の説明力が足らないから。または相手の理解力が足らないから。
いつも怒られるのは私が悪いから、不細工と言われるのは、自分がかわいくないから。またはひどい親だから。

自分が悪いんだと閉じこもっても、相手が悪いんだと憎んでも、何もよくなりません。じゃあ行動を改めるか、相手と距離を置くかといってもうまくいかないこともあります。
ほっとけは、相手のことであって、自分の気持ちは放っておいてはいけないのです。

ひょっとしたら、娘も本当は、自分がどんなに私を好きかを伝えることで、私にもっと愛情が欲しいと訴えているのかもしれません。でも深く考えるより、素敵な話を教えてくれたことを喜び感謝して、温かい気持ちを伝えたいと思いました。

「みせびら菓子と……」の美沙子も羨ましがられたい、の裏には寂しい気持ちがあり、仲良くなりたかったのだと思います。
この本、小学生の間で人気があり、なかなか図書室で借りられないみたいです。とりあえず14巻は他の章も読みましたが、ちょっと考えさせられる、魅惑的な物語ばかりでした。



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