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藻谷浩介×寺本英仁「東京脱出論」

コロナが蔓延するようになって、地方移住が進むといった話も出ていたけれど、結局は東京都の転入超過の傾向は一時期低水準になったものの変わらない。でも本当に東京を中心とした都市にいることが正解なのだろうか、ということについて徹底的に討論しています。タイトルは分かりやすく「東京脱出論」となっていますが、「都市」と「地方」についての議論になっています。
私自身、大学は片道1時間以上かけて都内に通い、なんとなく東京に勤めるのだろうなと思いつつ、結局そうはならず、就職してからも「東京に脱出」のために、何度か都内の公務員試験にチャレンジしていたわけなので、ぼんやりと東京に対する憧れを持ち続けていました。けれど今は、市原市で仕事をしていて良かったなと思っています。
藻谷氏はプロフィールを見ると、平成合併前3,200市町村のすべて、海外 1 1 4 ヶ国を自費で訪問し地域特性を多面的に把握と紹介されている。また、「里山資本主義」を書かれた方であり、お金がなくても生活していくために必要なものを手に入れられる安心安全の仕組みの必要性を提唱している。また、寺本氏は邑南町役場の職員(現在は退職)、「ビレッジプライド 『0円起業』の町をつくった公務員の物語」という著書を書いた方です。本では、本来地域が持っていたビレッジプライドを掘り起こし、見える化し、いきいきと輝かせることができるようになるまでの経過が書かれています。
この対談が行われたのは2020年の春過ぎ。コロナが蔓延し、緊急事態宣言が出され、連日のようにコロナに関するニュースが報道されていた時期です。そのリアルタイムにここまで先を見据えた議論がされていたことに驚いてしまいます。
「ビレッジプライド」の中では、邑南町の素晴らしい産品を東京に売り出すことから、来てもらって食べてもらうことにシフトした話などが書かれていますが、コロナにより、来てもらうということができなくなりました。町内にコロナを蔓延させないためにはどうすればよいか、それはウィルスを持ち込ませないこと、そこで、すぐに手につけられることとして、町内の飲食店を危機から救うために邑南町職員弁当プロジェクトを始めたり、A級グルメも通販に力を入れることで乗り切りました。その他、感染対策に関しても、小規模な街ならではの、顔の見える関係により、スムーズにスピード感を持って行われています。
でも同じ方法をとればうまくいくというわけではない、また、人数が多い自治体ではできないということもないような気がします。
全体を通して感じるのは、何かをしなければ、というときに、起きている課題、あるいはこれから起きそうな課題を予測して、では地域の中で何ができるか、ということ道筋で考えているということです。そこは、根本に、「里山資本主義」があったからだと藻谷氏も話しています。これは、邑南町で定期的に藻谷氏を塾長として開催されていた「藻谷塾」のために実際に足を運んで現地を見て感じたことに基づいた感想ということになります。
私が市原市で仕事をしていて良かったな、と思うのは、多分、市内でいろいろ活動している人たちを魅力的に感じているからだと思います。いちはらには素敵な店がないとか、他の地域で活躍している人を見て、いちはらにはこういう人がいない、といったことを言う人とたまに会いますが、「あなたはどこを見ているのですか? 誰と話しているのですか?」と言いたくなります。もちろん、理解のない発言や、何ともできないことに対する苦情を受けたりして、気持ちが滅入ることもありますし、庁内でもがっかりすることもたくさんあります。でも素敵な人や、その人たちの取り組みのことを考えると、今の自分に何ができるだろうか、と前向きに考えたくなります。
友人が「地元のことを悪く言うことで、自分の意識が高い位置にあることを見せようとしているのではないか」と言っていました。都会で自然と入ってくる情報、メディアから、テレビから入ってくる情報は、参考にはなるかもしれませんが、そのまま解決策になるようなものではないのだと思います。それをたくさん知っているから、地域を変えることができるわけではない。もっと地域を見た上で、何が足りないか、何を必要か、ということを考えていきたいです。
仕事を離れれば、みんな好きなところに住めばいい、と思います。ですが、いちはらに住みながら、ホントはここじゃない、と思っている人は、少しでも減らしたいと考えています。そのためにできることを考えていきたいです。そして結果として、東京脱出の行き先がいちはらだった人がいれば、ありがたいことだと思います。


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