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佐々木常夫「人生は理不尽」

佐々木氏の名前を知ったのは、育休中の時。ワークライフバランス関連の記事か何かで紹介されていた。肝臓病とうつ病で入退院を繰り返す妻を支えながら、自閉症の長男を含む3人の子育てをしつつ、東レの取締役まで勤めた。3人の子ども、うち一人は障がい児、多忙な夫に頼るのは現実的ではなくて、仕事に復帰して、うまくやっていけるのだろうかと不安だった時に、その経歴を読んだだけでも、勇気を与えてくれた。別に上昇志向が強いわけではないつもりだけれど、せっかく仕事をしているのだから、自分らしい仕事をしたい。そんな風に前向きに考えられるようになった。
その後読んだのは、「働く君に贈る25の言葉」。仕事を始めたばかりの甥っ子に向けて書かれたその言葉は、仮にもし、その甥っ子と同じくらいの年齢だった頃の自分が読んだとして、素直に受け止められただろうかと、恥ずかしくなった。けれど、30代も半ばを過ぎた私にはとても心に染み入るもので、今からでも遅くない、こんな風に仕事をしていこうと考えた。
そういう気持ちを忘れないように、佐々木氏の本は時々読みたいと思っていて、今回見つけて迷わず手にとったのだけれど、ターゲットは50代以降、ちょっと早過ぎたかも、とは思った。「自然体で老いてみよう」とか。でも一度、この人の言うことは信頼したい、と思った人の言葉は受け入れられるもので、少しいろいろと振り返るべきかなとも思った。
改めて経歴を見返した時に、自分の両親よりも少し年上であることに気付いた。自分の親がこんな人だったらな、と少しだけ思ってしまった。でも、現実はそうではない。もちろん、これだけの人はなかなかいないのだろうけれど。むしろ、この本を親に差し出したら、どういう意味?、と怒り出しそうな感じさえする。内容も受け入れられないだろう。でも佐々木氏だったら、両親の良いところを見つけて、敬意をもって接するのだろう。
読んでいて一番印象に残ったのは、大学を留年して卒業までに7、8年かかったという次男が、たくさん迷惑をかけたのに文句も言わず、愛情だけかけてくれた、このままでは親として子供を教育できない、と言って、留年以降にもらったお金を少しずつ返済することにしたという話だった。親が責めたりしたくなるような状況の時は、子どもも反省しているはずで、それを理解しなければいけないということだった。佐々木氏は若者にも敬意を払って接すると言っているけれど、それは自分の子どもに対しても同じなのだと思う。
謙虚さと、人への敬意を大事にしたい。

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