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中石和良「サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書」

サーキュラー・エコノミーは、単なるリサイクルとは違う。徹底的にリサイクルする、というのでも足りない。最初から、使い続けることを想定して作る、というところに新しさがある、というのも少し違う。使い続けることは実は昔は当たり前に行われていたことであって、人類の歴史の本の最近、大量消費、大量廃棄の時代があって、また昔に戻ろうという考え方ともいえる。
本の中では様々な事業者の取り組みが紹介されている。ものを作る会社はもちろんのこと、グーグルやアップル、フェイスブックなどの社会インフラを成り立たせている会社も、グーグルのように企業活動の全てを再生可能エネルギーで行ったり、アップルのように製品を回収し分解して、新製品にしたりする。こうした活動をしなければ、生き残れないと考えているからだ。
商品の概念も変わってきている。例えばロボット掃除機なら以前は、新品を購入し、利用し、壊れたら廃棄する、という形だった。けれど、私たちが必要としているのは掃除機本体ではなく、掃除機の掃除する機能の部分だ。そこに着目し、サブスクリプション方式で掃除機サービスを販売する。ロボット掃除機は例えば5万円だとすると、躊躇する場合もあるけれど、月々2,200円と言われれば使ってみようかなという気になる。企業は収益を得られるまでに期間を要するけれど、それを超えても収入が得られるとなると悪くない。
イギリスに本部のあるエレン・マッカーサー財団は、世界規模でサーキュラー・エコノミーを推進している団体であり、次のように、サーキュラー・エコノミーの3原則を提示している。

廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う。
製品と原料を使い続ける。
自然システムを再生する。

このうち、自然システムを再生する、については、単に地球に悪影響を与えないというだけではなく、自然システムを再生、つまり、プラスの効果ももたらさなければいけないということだ。例えば、森林減少が進んでいる地域では、森林を維持するための取り組みも必要となってくるといったことが考えられる。
様々な企業のサーキュラー・エコノミーの取り組みが紹介されているが、どれも簡単にはできないことであり、持続可能なスタイルができ上がるまでには、長い時間を要するものもある。けれどそこには強い思いがあり、それに共感を示す従業員や消費者がいるからこそ、できあがっているのだと思う。

 日本の企業はどちらかというと、消費者の動向ばかりを気にして、消費者の後をひたすら追ってきたのではないでしょうか。そうして、消費者のニーズにいかに即応できるかを各社で競ってきたのです。でも、従来の経済システムが行き詰まりを見せた今こそ、企業が、私たちが未来に向かって進むべき道を指し示す番です。
 意識の高い消費者はすでにサーキュラー・エコノミーの観点で購買行動をとり、暮らしていますが、まだまだ大多数ではない。消費者にそうした気づきを与える責務を企業が負っている、と考えます。

著者はこのように指摘している。確かに私たちは、目の前の商品のどちらを購入した方が得か、ということだけを見て、ものを選んできてしまった。それがどのように作られたか、どういった影響を社会に、環境に与えているか、これから先どうなるか、ということについては、あまり気にしない。気にしないから、見せられるということもなく、私たちも知らずに来てしまった。
今の商品の選び方からすぐに変えよう、という気にはなれないけれど、少しずつ、目の前の商品の、目に見えない部分についても考えながら、選べる力をつけていきたい。

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