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牧野浩樹「コミュ障だった僕を激変させた公務員の『伝え方』の技術」

こういうタイトルを見ると、「とは言ってもこんな本を書くような積極的な人なんだから、コミュ障というのは大げさなんじゃないかな」と思ってしまう。私も最初はそう思っていた。数々の失敗談を交えながら、なぜ失敗したのか、どう考えれば良かったのか、振り返りながらそこから学び取っていく様子をトレースするうちに、もしかして本当にそうだったのかな、と思うようになった。
クレームを受けやすい職業というのがある。公務員はそのうちの一つだと思う。景気が悪ければ、公務員の給与を削減すべきだと言われ、不祥事があると、ひどく叩かれる。マスコミでもそういう論調が行われるから、なんとなく、クレームを言うことが正義みたいになっているのかな、と感じてしまうこともある。もちろん、先に税金をいただき、住民の福祉の増進という使命を持っている以上、厳しい意見も受け止めなければいけないこともある。けれども、現状を理解し、納得してもらったり、義務を果たしてもらったり、ルールを守ってもらうために、私たちの方から、市民に言いにくいことを言わなければいけないこともある。
この本は抽象的な話は少なくて、具体的にどうすればよいか、ということが書かれている。例えば最初の方は「冒頭に何の話か宣言しよう! タイトルスタート」
頭の中がそのことでいっぱいだと詳細からつい話してしまいがちだけれど、上司は部下の色んな業務の進捗を把握しなければいけないから、まず何の話かをしなければいけない。まして市民や民間事業者と話す時には必須だ。そして、コミュニケーションだから、このやり方でいけば全てうまくいくというわけではなくて、相手の状況や立場、話す内容、目的などによって、使い分けが必要だ。
この本の素敵なところは、この本を閉じた後にどんどん実践して、自分なりの伝え方を身につけてほしいと結んでいるところだ。確かに、本当に自分のものにするには、自分なりに実践してみて、その中から自分に合ったやり方を見つけていくということになるのだと思う。
市民の方はともかく、特に職場で毎日接していると慣れてきて、つい伝え方がいい加減になりがちで、それでも汲み取ってもらえるけれど、改めて、日々のコミュニケーションを丁寧に行いつつ、ブラッシュアップしていきたい。市民も職場も人たちからもそうやって信頼を得ることで、またさらに相手も心を開いて、いろんな考え方を伝えてくれるのだと思う。

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