見出し画像

海老澤功「いまさら聞けない! 自治体予算・会計の超基本」

それなりに自治体で経験を積んできて、ここ数年は自分発案で、新たな事業の予算要求をして、獲得したりもしてきました。でも実は予算関係で分からないこともたくさんあることは認識していました。
例えば債務負担とか継続費とか、実際に要求するまでは、言葉としては聞いたことがあっても聞いたことはありましたが、よく理解していませんでした。実際に使うときに初めて知ったこともたくさんあります。
なのでまさに、今更聞けないというのが、その通りという感じでした。

この本は4つのパートに分かれています。

  • 財政ってなんだろう?

  • 予算はどうやって使うの?

  • 予算はどうやって作るの?

  • 地方財政の仕組みはどうなっているの?

項目のタイトルからわかるように、とても親しみやすい語り口で統一されていて、でも考え方については、財政経験者ならではの、そして、財政課と担当課で納得しあえる査定をしたいと言う意思が感じられ、そのためと本というのがよくわかります。

これを読んでいるのは11月ですが、今の季節には、ほとんどの自治体で予算要求を終えたあたりではないかと思います。12月下旬には、財政課が査定を行った結果の内示が出ます。その後、どうしても必要なものについて改めて要求する復活要求が1月ごろに行われます。

…と私の勤める自治体の予算編成の流れを書こうと思ったのですが、文章で書くのはかなり厳しい位、1年間のほぼすべての月に、予算化決算の何らかの工程をやっていることに気づきました。さらに、6月、9月、12月、3月の補正もあります。

法律で定められているなど、例年実行しなければいけない事業だけでも相当の作業があるので、地域独自だったり、新たな政策的な事業を検討する場合は、かなり早くから準備し、市内の状況を確認したり、他社の動向情報を収集したり、見積もりをもらったりして、説得力のある資料を作成しなければなりません。

予算を執行しているというか、事業を実施しているときは、正直なところ、担当課としては、予算の範囲内でできるかどうか以外は財政のことを考えているわけではないです。
でも、この授業の実施を予算の執行と言う考え方で見ると、もう少し視座の高いところから考えざるを得なくなるのだと気づきました。

そう思ったのは、自治体財政には3つの機能があると言うところを読んだ時です。

資源配分機能=地域に不足する資源を行政が整備すること。
所得再分配機能=所得が多い人からはより多く、少ない人からはより少なく税を徴収し、低所得者対策を行って所得格差を緩和する。
経済安定化機能=不況の時に財政支出を拡大し、また減税を行うなどして、消費や投資を刺激し、経済活動を活性化させたり、その逆に公共の時は財政支出を削減し、増税を行うなどして、需要を抑制する。

本書より要約

現実的には、所得債分配や経済安定化を自治体が担おうとすると、都市館競争が起こり、財政力のある自治体が有利になる消耗性を引き起こしかねないと言うところで、資源配分機能が、1番自治体財政が機能を発揮しやすいと言う説明がありました。

確かに、何か新しい授業行うときには、問題が顕在化していることを示し、その課題が何であるかを特定し、それを解決するための最も効果的な方法事業として組み立てることが求められます。
これを予算の観点から考え直すと、問題の計算化についても、極端な例を出せば、生活に支障は無いものの、皆が困っているようなことについては、優先順位的に低いと言うことになる場合もあるかもしれません。最も効果的な方法についても、もし民間が持っているのであれば、民間に任せ、それが補えないところは、民間にインセンティブを与えたり、それでも難しければ、公費で補うという考え方とマッチするのかなと思いました。

次に興味深く読んだのは、時代の変化に対応した予算とはと言うところです。スクラップ&ビルドが必要と言う事は、長年言われてきていますが、実際にはスクラップは非常に難しく、それまで便益を受けてきた人の激しい反対に合うことが想定されます。

そこで、新たな事業を立ち上げた上で、既存の事業を廃止する、例えて言うなら、事業の衣替え的な形で、ビルド&スクラップをしようと言う流れになってきています。改行実は私も影響与える範囲が非常に小さい事業ではありましたが、過去に事業をスクラップしたことがあります。自分的にはかなりいいことをしたと自負していたのですが、廃止したことを堂々と言えなかったりと言うこともありました。もちろん必要なところには説明し影響のないようにしましたが、あれは良かったのに、とどこかで言われないかと気にしたりもしました。

でも新たな時代に対応するためには、やはりビルド&スクラップは必要なのだということを改めて思いました。

はじめに、のところにも書かれていますが、この本の裏テーマは、コミュニケーションの大切さとのことです。予算等に関する知識を少しでも分かち合うことで、財政と担当課との間でより良い行政運営を目指してほしいとの思いが伝わってきます。

私自身、財政課の担当には、細かいことまで聞くなあと思うくらい聞かれることもありますが、それも全てきちんと財政的な観点から説明できるようにするためのことなのだと改めて思いました。財政課の視点も意識しながら、事業を考えていきたいと思います。

ついでにいえば、予算をつけた後、財政課の視点の通りにいくかどうかは、逆に事業課の手腕にかかっているともいえます。
加えて、投資効果を最大限にし、かつ域内で循環させるようなことも、やっていきたいです。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集