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スラーは何をつなぐ?


Chère Musique


とある音楽講師さん向けの講座。
講師資格試験の筆記課題で誤答の多かった過去問題を取り上げて、その内容となぜ間違えてしまうのかを解説するという場面がありました。

その一番初めに出てきたのが、弦楽器の楽譜を見て質問に答える問題。
その中のひとつでスラー記号の意味を問われていて、かなり多くの方がフレージングと答えられたようです。




弦楽器でのスラーはほとんどの場合“ボウイング”。
スラーで囲われた音は、(‘上げ弓’‘下げ弓’どちらか)一方向で弾き切ってほしい、という意味です。

管楽器、特に木管楽器でのスラーは、“ノー・タンギング”。
つまりタンギングしないでひと息で吹き切ってほしい、という意味。

歌では“メリスマ”。
歌詞の単語の中のひとつの音節で複数の音符を歌うことです。
「夕焼け小焼けの赤とんぼ」の中の「小焼け」の「け」のように。




そしてピアノでは、“フレージング”を表すことがとても多いですが、ここでも気をつけなければならないのは、時代や作曲家によってスラーの意味が変わること。
例えば古典期の作品では、メロディの表現を助言するために、「このメロディを弦楽器で弾いたらこういうボウイングになります」のスラーが書いてあることも多いのです。

これをそのまま額面通りにフレージングだと受け取って弾くと、おかしな演奏になります。
かと言って、レガートで弾いてよい音すべてをスラーで囲ったら、ロマン派期のような演奏になりかねないので、そんな表記はしないほうが良いのです(と私は思います)。




この試験問題は、提示された楽譜が弦楽器のものだと見抜けるかがポイント。
でもよく見ればそのヒントはとてもたくさんあちこちに書いてありました。
知っている人が見れば明らかに、弦楽四重奏の楽譜以外の何物でもないです。




ピアノという楽器の音の出し方だけを教えるのではなく、ホンモノの音楽を教える講師であるためには、ピアノ以外の楽器も指導の話の中に出てくるはずです。
そして、アンサンブル演奏の編曲などを生徒さんのためにしてあげるには、当然いろいろな楽器の知識が必要です。

そして肝心のピアノ演奏の中でも、いろいろな音楽記号や音楽用語は、時代によってその意味が変わる、すなわち演奏方法が変わる、ということも、センセならしっかりお伝えできるようになりたいですよね。

特にスタッカートは、とっても意味深いです。。。


Musique, Elle a des ailes.

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