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ピアノ演奏でのオーケストレーションとは


Chère Musique



以前に、元(?)声楽家の方から
「ピアノ演奏での“オーケストレーション”って、どういうことなの?」と、ご質問を受けました。


オーケストレーションという言葉は、もともと本来はアナリーゼ(楽曲分析)の意味ではなかったと思います。
作曲、編曲の世界での言葉でした。
今では音楽のたくさんのシーンで使います。


ピアノ演奏で、実はとても大切な“アナリーゼ”。

日本語だと“楽曲分析”でしょうか。
そう言ってしまうとカタいですね。


とても大切な過程なのに、なぜかそこを飛ばして、いきなり指の練習をし始める。
これはアマチュアの方に多いパターンです。

ひと言でアナリーゼといってもやり方は多種あって、その中のとても楽しいひとつが“オーケストレーション”です。


ピアノ作品のアナリーゼの中でのオーケストレーションとは。。。



ピアノ曲の音たちは、たくさんの“パート”で出来ています。
それは曲によっては“モティーフ”(曲を構成する、音形のひとかたまり)と考えてもいいものもあります。

どうとらえるかは、時代と作曲コンセプトによって様々に異なります。


まずは、出来るところだけでもいいので細かくパート分けをして、それらひとつひとつのパートに、他の楽器なら‘何で’‘どんなふうに’演奏するだろう?と考えます。

その考えた楽器の音色や奏法が、「そのパートが生み出された根拠」になります。


ちなみに、たくさんの楽器についてその音色と奏法と作曲家によるそれらの使われ方を知っていることも、ピアノ弾きの素養なのです。


そして、その選んだ楽器に聴こえるような音を出すつもりで弾いてゆくと、、、、

不思議なことに少しずつ、どんなタッチで弾いたらいいかが見えてくるのです。


この 「つもりで弾いてゆく’」というところが、じっくり時間をかけてよく自分の音を聴き
タッチと音色との関係をつかみ、、、と、深い作業なんですね。

指と手の動きや形のクセなども、音色を決めてしまうので、本当に耳を使えていれば、そのあたりを直すこともできるはず。



入れられない音と付け足しの音


ついでに、その作業で気づくのは、、、

もしこれがオーケストラ演奏(ひとパートひとりの奏者)だったら、「本当はもっと
こんな音も加えたかった(ピアノでは無理だから入れなかったけれど)」

逆に「実はこの音は付け足しに過ぎない(ピアノだとこれを弾かないと伝わらないから入れたけど)」

という、音楽構造の面からの作曲家の意図です。
ピアノと管弦打楽器は、当然その楽器‘らしい’音楽構造というのがそれぞれ違うのでね。

そんな気づきも、ダイレクトにピアニストの表現になります。




そして更に、その楽器で出来る奏法や特徴的な奏法の音色を作ろう!とすることで、あえて書いていない自然なダイナミクスやアーティキュレーションも見えてきます。


(ダイナミクスとアーティの面で、作編曲家も編集者も楽譜には書かない奏法を必要とする曲はたくさんあります。
そういうものは、時代と楽器とその人の作風の知識があれば、自分なりの答えを生み出せるはずで、「どう弾けばいいんですか?正解を教えてください」というのは、プロは禁句です)


ピアニストの基本


というわけで、「オーケストレーションする」というアナリーゼは、ピアニストにとっては常識的なことです。

声楽家の方からは、確かにあまり聞いたことのない言葉ですね。



優れたピアノ曲には、弾いているとオーケストラに編曲してみたくなる曲がたくさんあります。
そんな感じの編曲作業が大好きだった代表が、あのフランスのM.ラヴェルですね。



技術はある程度優れているピアニストの演奏には、「今弾いている作曲家の特徴的な音色とリズム表現、人によっては民族的な面白さの部分が、もう少し表現できればさらに魅力的なのになぁ」と思わせる演奏もあります。

もしもそのピアニストが「ちゃんとオーケストレーションしたのに」と言うのであれば、更に深くやった方が良いのでは?ということなのでしょうね。




Musique, Elle a des ailes.

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