【朗読】大人向け読み聞かせ『水野仙子/夜の浪』

恋愛の悲哀と希望、温もりが散りばめられた作品です。

民子の胸にはある不安が萠した。海草の漂ひ寄つたにも等しい自分のこの一週日ばかりの生活が、この無心に雄大な浪に再び根を誘はれるような機会が、明日のわかれではないかと思つた時にであつた。二人がたのしい生活の記念にと、ある夕方岩の上と下とに立つて撮らせた写真。その薄ぼんやりとした映像を目のあたり見るやうな氣がしながら、それが何かの凶い兆でもあるかのやうに思いだされるのであつた。

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