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声は身体 〜俳優の心を守る方法〜

ハラスメントを防ぐ手立てのひとつとして得た答え

芝居のクオリティを高めることを理由に、先輩俳優が後輩俳優に親密なコミニュケーションを求めたり、演出が俳優に求めるのはハラスメントを誘発する危険性があるのは知られていることだと思います。

感情に頼る芝居づくりの場合、上記の方法が感覚や表現の再現を引き出すのに有効であることは理解できます。
ですが、今のわたしは感情を使うことを俳優に求めないことにしています。

7年ほど前、日本演出者協会が主催したフランスの演出家・ロラン・クルタンさんの声に特化したWS(シンポジウム)で、感情にアプローチしなくても真実性のある表現を引き出せることを知ったからです。

(ロランさんのWSに触れるまでは、役との一体化を感情面でも求めるあまり、しんどい思いをさせてしまった出演者もいます)

よく言われていることですが「感情(気持ち)は作るものではなく、自然と湧いてくるもの」という点においても、ロランさんのWSは強い裏付けになりました。

身体的アプローチは俳優の心を守るヒント

心理的アプローチの有効性に加えて、身体的アプローチの有効性も知られていけば、俳優を危険から守り心身のバランスを取ることに繋がるのではないかと思っています。
(選択肢を増やしたいだけなんですが、感情偏重型の方には理解されにくい点です。モドカシイ)

私的な感情や、過去の体験を芝居に活かすかどうかは俳優個人が決めること

本人がどうしても使いたくてそれが効果的ならば使ってくれて構わないというのが今のわたしのスタンスです。

ただ、idenshi195の場合は「声で映像をつくる」「地の文とセリフとモノローグを瞬時に切り替えながら語る」必要があるため、感情に頼ると実は精度が落ちます。

感情にアプローチすると自意識に縛られていってしまう人も多いため、稽古の効率も悪くなります。
身体と向き合うことで、本人の心を守ったまま表現を磨くことができます。

「感情を使うな」ということではなく、演出側から求めなくても真実性のある表現は引き出せる、ということです。

私的な感情や体験に頼らなくても真実性のある表現が導き出せることを双方が知ると、稽古場で摩擦は起きにくいし、停滞もしにくいです。個人の人格や生き方に言及する必要もないから、ハラスメントと捉えられそうな発言も自然と回避できます。

作品の精度を高めるための負荷は、純粋な探究。
idenshi195が求めているのは徹底的な基礎力。
使うのは感情ではなく、持続性・再現性・汎用性の高い技術にて、別の作品、媒体が異なる別の現場でも役に立つんですよね。
(俳優に身体的な基礎力が備わっているとベスト)

元々、朗読劇のクオリティを高めることや、合理的な稽古プランを探す学びの中で触れた声に特化するロランさんのWSでしたが、それがそのまま俳優の心理的安全性を守ること、持続性・再現性・汎用性の高い技術を得ることに繋がりました。
予期せぬ一石三鳥でした。

「声は身体」と言い続け、idenshi195のスペシャルワークショップでは身体づくりの重要性からシェアするのも、技術と知識は俳優の心身を守る手立てになると感じているからです。

ロランさんのWSでの学び、山下亜矢香さんからの学び、Kouさんからの学びによって、今は安全で効果的なアプローチができていると感じています。

植松侑子さんによるリスペクトトレーニングの要素も含まれるハラスメント防止講座を受けたことで、演出家としての怯えも払拭されました。
ハラスメントを防ぐことが、演出を抑圧するものではないことを知れたことは大きな安心につながりました。
これは学んだからこそ得られた自由です。

ですが、ハラスメントの加害者には認知の歪みがあります。ハラスメント防止講座を受けたはずの演出家が加害行為を行い裁判に発展している現実もあります。
主宰、脚本、演出を全部担っている自分が間違わないとは言いきれません。だからこそ現状に甘んじることなく、学び続ける必要があると思っています。

※あくまでもidenshi195の場合であり、個人の意見です。


オススメのハラスメント防止講座(無料)

※2024.03.29までアーカイブ視聴が可能です
※無料で受講できます。

東京芸術文化相談サポートセンター ハラスメント防止講座2023 運営事務局
https://harassment-prevention.peatix.com


『声 ー共鳴する身体を演出するー 』
ロランさんのWSとシンポジウムの様子

ロラン・クルタンさんの来日WS、またないかなと思って調べていたら、2017年のシンポジウムの議事録pdfを発見。当時、現地で聴講したけれど、文章として読み感動がよみがえりました。

ロランさんと、シンポジウムに登壇された錬肉工房の岡本章さんのおっしゃることに深く共感。  

「顔や心理で演技するのではない、声と身体とのコネクションに表現の全てがある」

国際演劇交流セミナー2017 フランス特集
<声 ー共鳴する身体を演出するー >シンポジウムより

大丈夫、わたしは孤独ではない。まだ頑張れる。主催の日本演出者協会とWSを企画してくださった山上優さんに改めて感謝します。

内容が気になる方は、協会のページ内のこの2つの資料をご覧ください。WSの様子がわかります。シンポジウムに関しては「これ無料で全部読めていいんですか?」と驚く充実ぶりです。

▼ 国際演劇交流セミナー2017 フランス特集   
<声 ー共鳴する身体を演出するー >   

https://www.jda.jp/archive/seminar02.html

日本演出者協会のホームページ(該当の2箇所)のスクショです。  ① 日本演出者協会・年鑑『国際演劇交流セミナー2017-2018』について ② 国際演劇交流セミナー2017 フランス特集    < 声 ー共鳴する身体を演出するー >
サイト内の2箇所のリンクにpdf資料あります

有料記事にしてありますが、全文無料で読めます。あなたにとって価値があると感じたときだけ、そして無理のない範囲で応援していただけたら嬉しいです。

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