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【転載】覚悟を決めた日(2018.11.17)

舞台版『眼球綺譚/再生』

綾辻行人さんの幻想ホラー短編集『眼球綺譚』から2作を原作とし上演しました。

上演期間11/16〜27
2作合わせて全31ステージ。

「眼球綺譚」は3チーム、「再生」は1チームで挑みました。
今でも関係者で話題にあがり、またidenshi195の朗読表現の特徴のひとつとして紹介される出来事です。
それは公演2日目の出来事でした。
本記事は、当時のツイートを転載しまとめたものです。


本日の朔回、上演中に倒れたお客様がいました。病院に付き添ったスタッフより報告がありました。貧血とのことで大事にはいたらず、すぐに回復されたとのことで、ほっとしています。お立ち会いのお客様のご協力に、心から感謝いたします。

中断の判断までの間、出演者も気が気でなかったことでしょう。にも関わらず、声がかかるまで集中力を切らさず、空間を維持し続けたプロ意識と表現力は圧巻でした。また、その表現に寄り添い続けてくださった皆様のお心が、再開後、無事に作品を結末に導いたのだと思っています。

ここからが、誤解を恐れず云うと「大変な朗読表現をつくってしまった」という話になります。倒れたお客様ですが、持病もなく健康な方でした。体調不良でいらしたわけでもありませんでした。ご本人のお話を要約しますと「迫ってくる情景に、気づいたら失神していた」とのことでした。

私は俳優の声の力、生身の存在そのものの力を信じています。#言葉の楽譜 では、それを最大限に生かす韻律を組み、また演出をしています。稽古では「“映像”を視せてください」「生の感情で観客の心を震わせてください」「客席と繋がるのではなく、観客一人一人と繋がってください」と言ってきました。

これまでも、目視していない情景が視えるという感想はよくいただいていました。『潮騒の祈り』では「自分も母娘と共に砂浜にいた」、朗読能『船弁慶』では「出演者は動いていないのに、義経と静御前がすれ違ったのを見た」などです。今回ももちろん、その効果を狙いつくっています。

(朗読能はidenshi195の公演ではなく、能楽の宝生流宗家の「和の会」主催の公演です。2012年から2015年まで4作、言葉の楽譜を用い、謡曲を現代語の朗読劇にいたしました)

この朗読表現を広めたいと思い、活動を続けてきました。そして今回、兼ねてから敬愛する綾辻行人先生の胸を借り、上演に至ったのが本公演です。出演者の力によって立体的になった表現、幻想ホラーとはいえ、まさかお客様を失神させることにまでなるとは予測していませんでした。

生みの親である私自身が、この朗読表現の効果を甘く見ていました。大事にはいたらなかったから言えることではありますが、驚きとともに大きな手応えを感じました。「想像力は創り手だけのものではない」「想像力で観客と溶け合う」この思いを持ち続け、今後も真摯に取り組んで参ります。

とりとめもなく綴ってしまいました。お目汚し失礼しました。明日以降も、劇場でお待ちしております。心ひとつに、丁寧に、綾辻さんの作品を奏でます。

2018/11/17
idenshi195主宰 高橋郁子

#眼球綺譚_再生 #idenshi195
#言葉の楽譜 #朗読劇


終演後、原作の綾辻行人さんを囲んで。チーム「朔」

振り返り用の各リンク

当時のツイート

公演概要

当時の関係者、お客様の感想まとめ

余談

このことをきっかけに次の公演から朗読キネマと掲げるようになりました。


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