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【数字に振り回されたのね】

夫は手術を受けられない状態までがんを悪化させていたから、始めから手術は諦めていました。
しかし、放射線や抗がん剤治療が功を奏し幸いにも手術は一度だけは受けることが出来ました。

でも、実際は開けてみたらやっぱりといった状態でリンパ節に転移が見られ主治医からは「取り切れてはいない」という説明がありました。

再発は100%、近い将来必ず来ると説明されていたので覚悟は決めていたものの、3か月も経たないうちに転移が見られました。

転移しているかもと診察で主治医から告げられた日「明日ハッキリした検査の結果が出るので、奥さんに電話しますね」と告げられました。

翌日の電話では案の定「転移は確実」と断言され、覚悟はしていたものの目の前が真っ暗になったのを覚えています。
私は気持ちを奮い立たせその電話で「先生、あとどのくらい時間がありますか。うちは事業をしているのでそちらの整理もしないといけないし、数字で知りたいです」と私が詰め寄ると「平均からみると28カ月かな、でもこれはあくまでも平均だからね」と仰られたのでした。

26カ月・・・って2年と少しか。まだ時間はあると安堵した気分とそれしか無いんだと思う気持ちが入り混じった気分でした。
聞いた直後よりも日が経つにつれてその数字が私に恐怖となって重く圧し掛かってくるようになっていきました。

結局私が教えて貰った数字って余命なのよね?
私は何を質問してしまったのだろうか。
聞いてしまった事に後悔する気持ちと、聞いて良かったと思う気持ちと。
やっておかないといけないことがあるから聞かなければいけなかったんだと正当化したり。でも聞いたことが悪かったのかなと自己嫌悪に陥ったりと訳の分からない、答えなんてないことが頭の中をぐるぐると廻り続けました。
終いには一人で抱えられないほどに、その消化できない感情はどんどんと育っていきました。

そもそも余命って。
推定方法は色々とあるそうです。
罹患している病気に関係のない年齢別の平均的な余命は、厚生労働省が発表する“完全生命表”を参考にするそうです。
同じ年齢で同じがんの患者であっても、全身状態がよい場合、普通な場合、悪い場合によってその余命が変わってくるため、年齢別に平均余命を寿命が長かった上位25%と中央値付近の50%、そして、寿命の短かった75%とに分け、その人の全身状態に応じて「あと何年生きられる見込みか」ということを推測するそうです。

参考:edicalnoteより

夫には言えない余命を聞いてしまった私の精神状態は、大波小波と揺さぶられそのどうにもならない気持ちを話せるのは数名のお友達くらいでした。それを聴いて励まし続けてくれたお友達もかなり辛かったのではないかと振り返ると、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
少しでも話せる場所があって良かった。本当に有難かったのです。

不安や気分の落ち込みなどが続いて、そこから離れられない場合は相談できる機関を頼ることも必要だと思います。心療内科もありますし、そこには臨床心理士の先生もいらしたりしますよね。日本はカウンセリングを受けるという文化ではないので、まだまだ躊躇されがちですけれどカウンセリングを早めに受けるのも気持ちを楽にする方法の一つだと思います。

一人になってホッとできる時間をあえて捻出するのも良いですね。
静かなカフェで珈琲を飲むとか、美味しいケーキを食べるとか。
私はこれが一番出来なかった事ですけれど。

気持ちの浮き沈みで鬱になる場合と躁になる場合があるようですが、私は完全に躁になってしまいました。

これらのことは私が出来なかったからこそ、今辛い最中にある方には注意して欲しいと思います。話す事だけでも人の心は楽になります。安心して話を聴いて貰える誰かがいるのであれば、相談するのはとても大切な事ですよ。

診療内科を受診したり、臨床心理士やカウンセラーさんに話を聴いて貰うことは決して恥ずかしいことでは無いですからね。
そして自分の時間を持つことは、自分自身を守る事でもあると私は振り返って今文章を綴っています。


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