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工業地域の荒れ果てた崖線林に、サンプルガーデンを作った話②

購入した神奈川県厚木市の工業団地の端にある崖線林(を含めた土地)は約400㎡。そのうち傾斜地が約70%である。前述の通り傾斜地の樹木は、択伐して残すことに決めていた。建築家の谷尻誠さんに依頼すれば、樹木を残しながら傾斜地に素晴らしい店舗を建てることができると思うが、当然現実的ではない。残り30%の平地約120㎡に、店舗を建て、駐車場とサンプルガーデンを作らなければならない。2014年11月まであと1年強。さあどうする・・・。

自宅兼店舗を2×4(ツーバイフォー)ガレージで…

まずは店舗建物を建てなければならない。最初は自宅兼店舗にしようと考えた。いろいろ探すうちに、2×4(ツーバイフォー)のガレージキットハウスの存在を知った。

建築家の中村好文さんと北海道の有名パン職人、神 幸紀さんの共著で「パン屋の手紙」という本がある。神さんから中村好文さん宛に出した最初の手紙の冒頭に「いまは、ガレージを改装した小屋で、パン屋をして生活をしています」という文章が。「これだ!」とピンときた。

「パン屋の手紙」には、中村好文さんの設計で、神さんがパン屋の新店舗をつくる顛末と手紙を介した交流が描かれている。私がピンと来たのは、中村好文さんの設計された新店舗ではなく、旧店舗の「ガレージを改装した小屋」の方である(もちろん、中村好文さんに依頼できれば、それに越したことはないのだが…)。

掲載されている旧店舗の写真、ガレージを改装した小屋は、素朴で落ち着いた雰囲気で、なんとも魅力的だった。しかも、小さいながらも店舗併用住宅として使われているようだ。色々調べると、どうやら2×4(ツーバイフォー)のガレージキットハウスを改装した建物らしい。WEBサイトを見る限りでは、コストも魅力的だった。

仕事やプライベートのゴタゴタで、あっという間に時間が過ぎた。少し取引のあったガレージキットハウスメーカーさんにコンタクトを取ったのが、2014年4月。何度か打ち合わせをして、2階建ての小さな建物の図面と見積を出していただいたのが7月。ここで問題が二つ発生した。

一つは「金額」。ガレージキットハウス本体価格はWEBで確認していたこともあり、想定の範囲内。しかし造作や特殊仕様の金額が本体価格をはるかに超えていた…。二つ目は「工期」。設計担当さんによると、11月末の旧店舗立ち退き時に間に合わない可能性が大きいという。これは困った…。

国産杉材・板倉工法のガレージキットに変更

最初の相談で「間に合います」というところから始まっていた。ちょっと納得いかない部分もあったが、図面も書いてもらったし仕方ないか・・・。腑に落ちない気持ちを抱えながら、何気なくネット検索をしていると「おやじの隠れ家」という別のガレージキットハウスが目についた。

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「こっちの方がいいじゃん!」。国産材(杉材)を使っている。柱の溝に板を落とし込む「板倉工法」。2X4よりも、伊勢神宮などでも採用されている板倉づくりの方が日本の気候には合っているようだ。しかも短納期っぽい・・・。景色工房サフランには、こっちの方がコンセプト的にも合ってるんじゃなかろうか。でも頼んでしまったしな。しょうがないか・・・。悩んでいると、店長(嫁)が一言「変えちゃえばいいじゃん」。

まだ正式契約したわけではなかった。ただ図面を書いてもらっていた。同じようにプランニングを職とする立場として、申し訳ないという気持ちがあった。おやじの隠れ家の販売元、フレックス唐津さんに聞いたところ、今なら11月引き渡し可能だという。店長の一言もあり、決断した。「スミマセン、今回はお断りします・・・」

設計費や諸経費などはお支払いして、2x4の会社にはお引き取り頂いた。もう少し早く気づいていたら、手間を取らせることもなかった・・・。反省しきりであった。

8月のお盆が過ぎた。仕切り直しで、おやじの隠れ家の神奈川県代理店、ニュースタイルガレージの高谷さんに相談。もう時間もないので兼用住宅はあきらめ、店舗のみの建物にした。設計の新村玲子先生と相談して、店舗の広さと配置を決めた。山の手入れ、庭は建築後にもちろん自分たちで行う。

事前準備、いよいよ着工

建築会社変更のバタバタの間に、いつでも着工できる様に準備はしておいた。旧建物の基礎を一部解体した。道路際の樹木は、景色工房サフランのコンセプト「モリニワ」と合わないため、忍びなかったが伐採・伐根することにした。

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ようやくゴールが見えてきた。建物基礎工事、足場仮説工事、内部造作工事、水道設備工事、電気工事はすべて施主=景色工房サフランが手配。建築確認許可の看板も自分で作ることにした。

販売元フレックス唐津からは、監督と大工さんが2人、材料と一緒にやってくる。上棟や屋根施工は施主も参加する。景色工房サフランでウッドデッキや金物を施工する親方(江口さん)と仲間の大工さん、そして私が手元(助手)で参加することに。通常業務をこなしながら、建築の工程を組む。頭と体を使う段取りの日々だった。

コメント 2020-03-12 142730

9月29日に地鎮祭を行った。高谷さんとの初回打ち合わせが8月28日。それから、わずか1か月での着工であった(③へ続きます)。



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