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会いたい人に会えた奇跡(T校長のこと)

昨日、奇跡が起こりました。
なぜか数日前から思い出されてならない人に、近所でばったり出会ったのです。
運命でしょうか?
近所にお住まいでもないのに。

その方は、私が支援学校の小学部に勤務していた頃のT校長。
私は管理職に立てつくタイプのやりにくい教員でしたが、T校長には尊敬しかありません。

T校長が小学部の子どもたちに追いかけられて嬉しそうに逃げ回る姿は、今でも鮮明に思い出します。

小学部の子どもたちったら、給食を食べ終わると、「校長と遊んでくる!」と言って教室を飛び出していくのです。

一目散に飛び出していく子どもたちの多くは、児童養護施設から支援学校に通う子たちでした。

T校長のことをお父さんのように思っていたようです。

T校長も、施設の子どもたちのことは特に気にかけておられ、喜んで追いかけられていらっしゃいました。「助けてくれ~」と笑顔で叫びながら😂

小学部6年生の修学旅行に付き添っていただいたときのこと。

白浜の海岸で、みんなで朝のお散歩。
ダウン症のたっくんと手をつないでいたT校長は、
「たっくん、クツぬごか」と靴を脱がせ、ふたりで水の中に入っていきます。
そのうちふたりでキャッキャとはしゃいで水のかけあいっこ。
たっくんも校長もビチャビチャになっています。

たっくんは赤ちゃんのときから施設暮らしです。
大人が自分とだけ一生懸命遊んでくれるという体験は、ほとんど持っていなかったでしょう。

「やんちゃさん一等賞は校長やな」と教員たちも誇らしげに笑います。

またこんなこともありました。

「ブートキャンプ」という動画が流行っていた頃です。
子どもたちが帰ったあと、私も含めた教員が10人ほど教室に集まって、「ブートキャンプやってみようか」ということになり、こそっとやり始めました。
しばらくすると、校内を見回っておられたT校長の姿が扉のガラスの向こう側に!
みんな冷や汗です。(勤務時間ですからね)

扉を開けて入ってきたT校長に、
「もうやめます!」と急いで片づけ始める先生たち。

けれどもT校長は、
「いやいや片づけんでいい。わしも一緒にやらしてくれ。こういうことも大事な仕事ですやん、みなさん。次からは初めからさそてや。」

そしてもう一回初めから、T校長も一緒にみんなでブートキャンプをやったのでした。
教員同士のつながりや教員の心身の健康を、何より大事にされていたのだと感じます。

T校長は元は高校の教員をなさっていましたが、管理職になられ、知的障がいのある子どもたちのための支援学校長になられました。
その後ながらく視覚支援学校の校長をされ、大阪府の支援学校校長会の代表もつとめておられました。
校長職を辞された後は、地域の障害者支援センターの代表をされていました。


ほんの2日前、私はなぜか急にT校長が懐かしくなり、ネットで検索してみたり、昔の懐かしい写真を見たりしていたのです。

そしてなんと昨日、近所の小学校の裏門前でばったり出会うという奇跡!

:T先生ではありませんか?

T先生:はい、そうですが…。
え?あれ?かぼちゃさん?どうして?なんで?

:私はこの辺に住んでいるんです。去年退職しまして。
先生こそなんでここに!?

T先生:実は近所の○○中学校の支援担当やってんねん。
来年度に小学校から入ってくる支援学級の子どもらに会いたいと思てな。

支援センターで仕事してたんやけども癌になってなー。
それで仕事辞めたんや。
そやけど、癌が治って両親も亡くなって、何もすることなくなってな。
奥さんからは家出てけ言われるし(笑)
で、おれは何がしたいんかなぁと思た時にな、
やっぱり障がいのある子どもらと一緒におりたいと思たんや。
それで知り合いに「なんか仕事ないか」て聞いてみたら、
○〇中学校の支援学級担当探してる、て聞いてな。
それでこれや。

ほな、次の小学校行ってくるわ。
会えてホンマに良かったわ。
いつでも○○中学校に遊びにきてや。

T先生は、今年一番の暑さの中、ママチャリに乗って、次の子どもたちに出会いに行かれたのでした。



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