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一つとして同じデザインは存在しないマオリタトゥーをバッグにペイントした話

こんにちは、トライバルデザイナーの伊吹です。
バッグなどにもトライバルデザインを手描きで描いています。
以前、社会人チームのラグビー選手の方から「バックパックにマオリ柄を描いて欲しい」とご依頼をいただきました。
そのカバンの紹介をYouTubeにもUPしたのでご紹介します。

もともとバック中央に入っていた牛ロゴは、ハリウッドを代表するアクション俳優のドウェイン・ジョンソンがUNDER ARMOURがコラボしてできた「PROJECT ROCK」のブランドロゴです。
信念とともに困難を乗り越え目的を達成するためのギア」の意味が込められており、このロゴとマオリ柄が絡むデザインはどんな感じがいいか凄く悩みました。
そもそも、マオリ柄はどんな意味が込められているのかまずご説明いたします。

■マオリ柄の意味
ニュージーランドの先住民族のことを「マオリ族」と呼びます。
顔に「モコ」というマオリタトゥーを入れる柄をマオリ柄と言います。

■マオリタトゥー「モコ」
モコは現代社会で言う身分証明書のようなもので、顔に入れる部位でその人の階級やステータス、権力、家系を表しています。
そのため、マオリタトゥーは二つとして同じものが存在しない「唯一無二」のデザインであることが特徴です。そのタトゥーを持つ人にとっては大切なアイデンティティの一部になり誇り高き象徴とされています。

■尊敬されるマオリタトゥーの入れ墨師
複雑で細いデザインが特徴のマオリタトゥー。
マオリタトゥーには、モコのスペシャリストである入れ墨師がいます。その人たちはとても尊敬されており決して冒してはならない聖なる存在です。
今回「マオリ柄を描いて欲しい」と依頼をいただいた時、マオリと縁がない私がマオリ柄を描くことに恐れ多いと感じました。
自らのルーツを重んじるマオリ族にとってタトゥーは大切なものなので、横槍入れるようなことや、知ったかぶりなデザインで描くことはしたくなかったです。
だから今回は、私なりにマオリ柄に影響を受けてできた「マオリ柄風のデザイン」ということで描かせていただきました。

■私なりのマオリ柄
正面・左側面・右側面・上面・底面とバッグ全体に描くオーダーを受けました。バッグをマオリ柄で覆い尽くすデザイン。
「PROJECT ROCK」の意味も含め「力強く、目的達成のため努力を続ける」表現を、カバンを一枚の絵と見立ててマオリ柄で覆い尽くすデザインにすることを決めました。

牛ロゴが映えるように円のデザインにしました。
その周りを囲うマオリ柄。上から下へと波打つのデザインを左右に配置し、見ていて飽きさせないためにも縦、横、斜めのそれぞれに規則性を持たせたデザインにしました。

各側面も正面を中心に柄が繋がるようなデザインにしました。


民族柄を描くことは難しいです。特徴を掴むことももちろんですが、そのデザインの成り立ちや意味を理解したうえで描かないと薄っぺらく見えます。
「マオリ柄風」のデザインですが、より本物に近づきたいと感じるのは入れ墨師の存在があるからです。

■マオリ柄に惹かれた理由
マオリ柄が「唯一無二」のデザインであることに強く惹かれました。
今回のバッグの依頼は誰かからの紹介ではなく、私のYouTubeを見て、「色んなデザインを見てきたけど、あなたのデザインが一番ハマった」という理由で声をかけていただきました。
この瞬間自分が唯一無二であることが証明された瞬間でもあり誰かの心に刺さったことが一番嬉しかったです。

「あなただからお願いした」
そんな存在になりたいと思っているからこそ、マオリ柄の意味と自分の気持ちがリンクし「カッコいい」と感じました。

■自分にとってのアイデンティティ
マオリ族にとって顔にモコを持つことがアイデンティティなら、私にとって絵を描くことがアイデンティティです。
このバッグは「今までで一番気に入っている」と、コメントをいただきました。
自分が描く絵が誰かの心を動かす可能性を秘めていると思うと、絵を描くことを辞めることができません。
今回のバッグを描くにあたりマオリ族のことを知ったことはとても貴重な体験となりました。
ありがとうございました!

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