[翻訳]バーチャルコンサート配信プラットフォームWave(WaveXR)について
はじめに
こんにちは。シリコンバレーに3年駐在し、これまで約8年大企業とスタートアップとのオープンイノベーション活動をしてきた森杉(@ikmorisugi) です。普段はStartup、DX、MarTech、マルチクラウド、Digital Entertainmentあたりの情報をつぶやいています。もし関心のある話題がありましたらTwitterやNoteでのフォローよろしくお願いします。
本記事について
シリコンバレーのB2C専門Venture CapitalのMaveron(WaveのSeries B RoundのLead Investor)のPartner David Wuさんに翻訳許可をいただいて、彼の「バーチャルコンサート配信プラットフォームWAVEについて - Introducing Wave」の記事を掲載します。
“A concert is not a live rendition of our album. It’s a theatrical event.”
-Freddie Mercury
"コンサートはアルバムのライブ再現でない。演劇的なイベントだ。"
-フレディ・マーキュリー(Queen)
私の最初のコンサートの思い出は未だに色あせていない。それは1982年のCow Palace(注: CaliforniaにあるDaly Cityという町にあるアリーナ)でのAC/DCだった。そのスケール、サウンド、オーディエンスのユニゾンしたうねりや動き、すべてが衝撃的だった。この出来事を昨日のことにように覚えているし、未だにコンサートに行くたびにあの時と同じ興奮が蘇ってくる。
コロナウィルスの流行の前に参加した最後のコンサートは10代の娘と一緒に行ったSan FranciscoのBill Graham Auditoriumで行われたTyler the Creatorだ。会場は音圧とオーディエンスのエネルギーや歓喜で溢れ、物理的に上下に揺れていた。私はいつの間にか自分の1/3の年齢のキッズ達とモッシュピットに飛び込んでいった。観客達との交わり、音楽が持つ力、アーティストの素晴らしいパフォーマンス、それらはライブミュージックの体験以外の何ものでもなかった。
1982年のAC/DCのコンサート以来、モバイル、ストリーミング、XR、5Gといったようにテクノロジーは大規模にかつ急激に変遷してきた。一方でそうした急激な進化にもかかわらず、オンラインのライブコンサートの進化は完全に止まっていて、実際のライブコンサートの魔法のような体験と比べると色褪せていた。本当にライブコンサートと呼べるような体験がオンラインにはなかった。Waveが出てくるまでは。
ここで発表したいのが、我々が行ったWaveへのスタートアップ投資だ。Waveはライブコンサートの体験とエネルギーを共有できるバーチャルコンサートの製作と配信を可能にするテクノロジープラットフォームだ。我々はWaveのCEOであるAdam Arrigoと才能あるチームとパートナーになれることに大変興奮している。なぜなら、Waveはデジタル世界におけるライブ・コンサートの体験を再定義し、音楽とゲームの間をつなぐ突出したコンシューマーブランドを構築しているからだ。
私自身がかつてはプロのミュージシャンであり、いまやコンシューマテクノロジーの投資家となったこともあり、私はキャリアの大半をかけて、エンターテイメントとソーシャルの未来がどのようになるのか模索し続け、どのような特徴を持つチームや企業が成功すべきか考え続けている。Waveが行ったLindsey Stirling(Youtubeで1200万の登録がある舞踊バイオリニスト)のバーチャルコンサートでは、Lindseyが40万人の観客とオンラインでインタラクションした。私が偏執狂なまで考えていたこのテーマに対してWaveがやったことは私の想像を超え、新たな未来を見せてくれた。
1. Right founder, right team.
アーリーステージの投資家として、我々はいつも創業者のことを最初に考える。AdamはWaveを構築することができる理想的なリーダーだった。Adamはこの分野の中で出会った中で特にクリエイティブで想像力に富んだ人物で、音楽、ゲーム、技術が交わる環境でずっと過ごしてきた。彼はサウンドデザイナー、ゲームデザイナー、プロダクトリーダーとして13年間 Music Tech Productに関わってきた。もしあなたが音楽ゲームのRock Bandでドラムを叩いたことがあったら、Adamが行った仕事を楽しんだということだ。彼はいくつもの楽器を操るプロデューサーであり、シンセファンであり、さらに彼の周りにはアーティスト、技術者、そしてRiot / Twitter / Bungie / Harmonix / Google / Livenation / SoundCloud / Microsoft出身の産業リーダー達がチームとして取り囲んでいる。
2. Category Creator
スタートアップは時としてある既存カテゴリーにおけるリーダーシップを発揮するのみならず、カテゴリーそのものを新規に定義することがある。Waveはまさにカテゴリーを新規に作るBrand New Worldタイプの企業だ。Waveはエンターテイメントにおける2つの巨大な市場、ゲーム($137B=14.6兆円)とライブコンサート($31B=3.3兆円)の中間に位置する。ゲームは若者にとって、ソーシャルなつながりとエンターテイメントのハブとなってきている。NetflixのCEO Reed Hastingsは2019年の決算発表時に、競合はHBOのようなメディア企業ではなく、Fortniteが大きな競争相手の一つだと述べた。ゲームがエンターテイメントと混ざり合うことで、我々はオンラインのライブコンサートの世界へ足を踏み入れはじめることができ、近年バーチャルコンサートに対する膨大なユーザの反応が現れだした。2020年4月23日に1200万人以上のFortniteのプレイヤーがFortniteの中でデジタルアバターとなったTravis Scottの10分間の事前収録されたバーチャルコンサートを楽しんだ。
リアルな場でのライブコンサートはアーティストの初期のキャリアからその成長を見届ける場であるので、バーチャルコンサートとリアルな場でのライブコンサートは並列なエコシステムではない。世界中のミュージシャンが薄汚れたバーやカフェで演奏しながら、いつかソールドアウトしたスタジアムでトップクラスのステージビジュアルや没入感のある演出を受けながらプレイすることを願っている。我々は今後のオンラインデジタルコンサートの急速な進化を予想しており、現状の低予算のライブストリームから、本当にスペクタクルで文化を新しく定義してしまうようなイベントへ変わると考えている。すべてのオンラインのライブ・コンサート体験を比較した時に、Waveはゴールドスタンダードになる可能性を秘めている。
3. Live, Immersive, Interactive, and Social
Maveronにおいては我々はコンシューマーに関することに没頭し、現在、明日、それから20年後におこることについて再考を重ねている。リアルな世界ではライブコンサートはユーザの情熱が溢れかえる最高の事例の一つであるが、デジタルの世界においても類似した感覚や感情を呼び起こす体験が急激に進化することを我々は見届けるだろう。オンラインコンサートの未来はリアルタイムで、没入的で、インタラクティブでソーシャル性を持っていることだと信じている。オンラインコンサートは本質的にはリアルな場のコンサートは異なるが、コンサートの体験をデジタルなプラットフォームで提供することは新たなエンターテイメントの機会を生む。(将来的には)オンラインコンサートはグローバルスケールで開催され、オーディエンスは高いレベルで製作された超現実的な空間に入り込み、アーティストやオーディエンス同士が自由にインタラクションできるといったことができるはずだ。Waveのプロプライエタリなテクノロジーと中心にあるゲーム性を通じて、Waveはユニークなアーティストのアバター、素晴らしいバーチャル世界、インタラクティブな体験を提供し、リアルなライブコンサートやストリーミング配信を超えた、まさにゲームとエンターテイメントの融合した体験をもたらすことができる。
2016年にAdamとSanta Monicaの彼の自宅アパートではじめて出会った時、我々はバーチャルリアリティによるソーシャルな音楽体験に打ちのめされた。より多くのオーディエンスを魅了するために、WaveはVRを超えたプラットフォームの拡張を行い、それがWaveに$310億ドル(3.3兆円)のライブコンサート市場をリードする機会につながっている。
Adamのアパートでの出会いから4年が過ぎ、AdamとWaveのチームは世界で最も才能のあるミュージシャン達と一緒にバーチャルコンサートを作り上げようとしている。Waveは最近"One Wave"と呼ばれるJohn Legend, Galantis, Tinasheらをフィーチャーしたバーチャルコンサートシリーズを発表した。アーティストはみなデジタルアバターに変身し、グローバルスケールでオーディエンスへパフォーマンスを届けられる。こうした動きはチャリティ団体にもつながっていて、例えばThe Bail Projectという団体によるBlack Lives Matter運動への寄付を求める活動の一貫としてバーチャルコンサートで寄付を集うということを行っている。実はこれらの取り組みはまだはじまりでしかない。Waveは音楽業界の大物達とパートナーシップを組んだ。Warner Music Group、Roc Nation(JayZ所有のタレント事務所/レコード・レーベル)、Scooter Braun(Justin BieberやArinana Grandeのマネージャー)が次世代のデジタルコンサートの推進を支援している。
Maveronでは人々の生活を本質的に変えることのできる企業を作るために疲れ知らずで働き、人間性とテクノロジーが組み合わさる場所で限界を超えることのできる力強い起業家に投資をしている。Adamはデジタルな環境ノア中でバーチャルライブコンサートを推進するコンシューマブランドを定義する最適な起業家だ。
AdamとWaveのチームのみなさん、Maveron Familyへようこそ!
訳者より
Waveには私もCVCの立場で今回の出資に関わらせていただきました。私自身も昔から音楽が大好きで、Davidさんと同じくバーチャルコンサートの可能性を強く信じています。よく現実のコンサートと比較してどうなのかという話がありますが、バーチャルコンサートがリアルを代替するものでなく、新しいメディアだと考えてもらうのが良いかと思っています。リアルはリアルで楽しいですし、物理的に参加できないのであればバーチャルで参加してリアルとはまた違ったデジタル世界でしかできない演出や体験を楽しめます。Waveは現状はUSでの展開がメインですが、日本やアジアにもその波は来ると思っていますので、その時を期待したいと思います。音楽やライブ・コンサートが好きだという方、ぜひWaveを応援してもらえるとありがたいです!
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