カープダイアリー第8286話「また出た165キロ、ZOZOマリンで連続無失点記録を続ける令和の怪物を”封じる”ことができた訳」(2023年6月11日)

2日連続満員御礼が出たZOZOマリンスタジアムでのデーゲームは「令和の怪物」擁するロッテに5対6、2日連続の1点負け…。しかし「戦いながらチームが強くなっている」と試合後、新井監督は振り返った。

そう、試合には勝てなかったが“勝負”には勝った。2月のキャンプから積み重ねてきたことが見事に証明された、と言うべきだろう。

交流戦初優勝に挑む戦いは一軍再昇格即プロ2度目の先発となった黒原が、三回に満塁弾を浴びるという最悪の展開になった。

打線は逆に三回まで佐々木朗希の前に出塁なし。ライアンの出場登録が抹消され、スタメンに並んだ左打者8人でどう攻略していくか…

龍馬
野間
秋山
松山
坂倉
田中広輔
韮澤
マット
羽月

佐々木朗希は開幕から7戦4勝1敗、防御率1・23。計44回を投げ69奪三振で真っすぐが50%以上、フォークが3割ちょっと、あとは高速スライダー。3球種とも右左関係なく被打率1割前後と“怪物”に相応しいデータが揃っていた。

しかも本拠地ではここまで4試計25イニング無失点。カープベンチにとってはありがたくない数字をメディアは盛んに取り上げた。

一番に龍馬、は新井監督の勝負手のひとつ。初回、いきなり来た159キロの真っ直ぐを打ちに行ったが結果はセカンドファウルフライだった。

初対戦の右腕に「真っすぐをまずはしっかり打ち返そう」と真っ向勝負を挑んではみたものの、そのまっすぐを一巡目でフェアゾーンに飛ばしたのは韮澤だけ(157キロを打って中飛)。一方で坂倉の遊ゴロ、マットの遊ゴロ、羽月のニゴロは変化球。しかもよくよく見ているとフォークが左打者の内角に食い込むようにして落ちていたから前に飛ばしても詰まる。

4点を追いかける四回、三塁側ベンチ前に円陣ができた。ガチンコ勝負から2巡目ではどう対処していくか?

打順は一番から。龍馬は初球の156キロストライクを見送った。2球目のフォークを空振りしたあと160キロを左にファウルにした。結局5球目の162キロを打って三ゴロに終わった。

野間は2球で遊飛に倒れ、秋山はまた初球の160キロを左へファウルにした。5球目の161キロが“暴発”気味に体に向かってきて空振り三振に終わったが、この回の攻撃では変化の兆しが見てとれた。

その兆しが続く五回の攻撃でイッキに形になった。先頭松山の打球はワンバウンドして佐々木朗希のグラブの上を越え二遊間へ。ショート藤岡がダイビングキャッチした時にはすでに松山は一塁手前。起き上がった藤岡は送球を途中で派手に落としてエラーをアピールしたが内野安打になった。打ったのはストレート。

続く坂倉は空振り三振に倒れたが159キロと160キロを2度、逆方向へファウルにした。そう、明らかに各打者が超速球の“内側”にヘッドを入れる打法でストレートに対処し始めた。ロッテバッテリーもすぐに気づいたはずだ。続く田中広輔はバントの構えで揺さぶりながら四球を選んだ。

一死一、二塁となって打席には“怪物”と同期の韮澤。初球161キロはやはり左へのファウル、2球目162キロ空振りのあとまた163キロもファウル。4球目フォークもファウル、5球目フォークで空振り三振…

ツーアウトになりロッテバッテリーに軍配が上がりかけたところで、マットが2ストライクから2-2まで戻してスライダーを中前打!二死満塁になった。

スタンドが騒然とする中、今季ここまで10試合7打席無安打1四球の羽月の出番となった。一週間前のマツダスタジアムでソフトバンク・モイネロ相手に12球粘って四球を選び、中継解説だった黒田アドバイザーも「いいですね」と感情移入する“実績”があった。

ひと握り短く持つバットのそのポテンシャルは“怪物”相手にも発揮された。ボールカウント1-2からファウルにしたストレートは”怪物タイ”165キロで計4度の超速球ファウルを経て9球目のストレート、この回トータル34球目を左前へ。2者を迎え入れ、“怪物”の無失点記録は29イニングでストップした。

「自分で抑えないと勝ちにふさわしくない」

佐々木朗希は試合後に負けを認めて?いた。

その証拠に六回、ロッテバッテリーはここでも29球も投げさせられたが、そのうちストレートはわずかに3球、だったのである…

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