カープダイアリー第8284話「左の被打率1割代の右腕を左で攻略、首位ロッテ相手に幕張の風に泳ぐ赤いコイ」(2023年6月9日)

北の大地から臨海幕張新都心へ…一夜にしてガラリと変わる環境の中で、パ・リーグ首位を相手にどう戦うか?ZOZOマリンスタジアムの風速計表示は「上空5m」程度でいつもよりずいぶん控え目だったが、追い風は赤いスタンドも含めてビジターサイドに吹いていた。

オリックス、ソフトバンクに連敗した6月2日、開幕から50試合を消化した時点で11度目の勝率5割ラインまで後退した。しかも交流戦1勝3敗、単独最下位。「ほーらね…」の声がきっと首脳陣の耳にも届いたはずだ。

ソフトバンクとの初戦に先発した床田は六回、柳田に2ランをかち上げられ、左肘炎症によるローテ離脱からの復帰戦を白星で飾ることができなかった。

しかしそこからまた盛り返す、新井カープに宿りつつある反発力とは、そいうものなのだろう。

森下-曾澤で7回無失点(勝ち投手森下)
アンダーソン-坂倉で5回無失点(負け投手栗林)
大瀬良-曾澤で6回2失点(勝ち投手栗林)
九里-坂倉で7回無失点(勝ち投手九里)
コルニエル-坂倉で7回2失点(勝ち投手コルニエル)…

先発陣の安定感+曾澤&坂倉のリード+バックの堅い守りで4勝1敗。チームの貯金は最多タイの3まで増えた。しかも日本ハム相手に3連勝。直近5試合で計17得点、1試合平均3点ちょっとでも勝利を引き寄せる、ディフェンス主体の闘いだ。

マツダスタジアムでの敗戦から中6日、ZOZOマリンのマウンドに上がった床田は初回7球でアウト3つ、二回も7球で片付けた。戦線離脱の影響で規程投球回に届かなくなっていたから、長いイニングを投げることを強く意識して坂倉のリードに頷いた。

2点リードの四回に1点を返されても果敢に攻める投球スタイルを継続、パームを織り交ぜながら8回101球4安打で九回を矢崎に託し、3対2のスコアで5勝目を掴んだ。

「ふたりでリレーできたらいいねってずっと話していたんで、7年かかりましたけどようやくできて良かったです」

2016年ドラフト3位の床田はヒーローインタビューで同年ドラフト1位矢崎との共同作業による成果を口にした。すでに5月9日の長良川球場で中日相手に待望の勝ちとセーブを記録してはいたが、この時は島内にもホールドがついた。

左腕を援護したのも、左打者の共同作業だった。

・先発オーダー
菊池
龍馬
秋山
松山
坂倉
ライアン
田中広輔
マット(二軍再調整から再合流)
野間

ロッテ先発の西野は昨季、先発なしながら今季はここまでローテを守り7試合6勝1敗、ハーラートップ、しかも左打者の被打率・159という状況にあった。

新井監督はこれらのデータを前にしても常々口にする「まず自分たちの状態から」という姿勢を崩さなかった。

三回の先制点は4人の左打者“共演”によって導かれた。先頭の田中広輔が右前打、マット空振り三振、野間左前打で一、二塁、菊池空振り三振でツーアウトとなって龍馬が粘った末にまず中前に適時打を放ち、秋山も続いた。

ポイントゲッターの龍馬と秋山は北広島での第2、第3戦でともにヒットなしという珍しい状況に陥っていた。

それをプラスの力に変えるのがふたりの最大の魅力でもある。

「僕と秋山さん、2試合続けてヒットを打てていなかったので、お先ですと秋山さんに告げてから行った」(龍馬)

「きのう、おととい打てておらず、どっちが打つかと龍馬と話してました。龍馬が先に打ったので打てて良かったです」(秋山)

龍馬は七回にも西野の114球目、内角ボール気味の143キロを広い三遊間へ打ち返して貴重な追加点を叩き出した。今季初めて球数が3桁に達した西野は、ここで降板を告げられ何を思っただろうか…

他球場の結果も踏まえると交流戦同率1位は前日の6チーム並走から3チームに半減した。そのメンツはソフトバンク、DeNA、そして今季4度目の4連勝となった新井カープ。

連勝中のスコアは3-2、1-0、7-2、3-2。ひとたび後手に回ると徹底的に叩かれる「交流戦の掟」に緒方監督の最終年と佐々岡監督の2シーズンでことごとく引き込まれた過去とは無縁の勝負強さ。初夏の幕張の風を受け、コイはますます元気に泳ぐだろうか…

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