カープダイアリー第8382話「打線に2本軸のソフトバンク、四番・牧固定のDeNA、開幕三、四番秋山・ライアンが小園・堂林になったカープ打線考察」(2023年9月21日)

もしも新井監督ら首脳陣がこの試合を見ていたらどう思うか?

福岡PayPayドームであった3位ソフトバンクと2位ロッテの23回戦。初回にポランコの25ソロで先制されたソフトバンクはその裏、三番柳田のタイムリーで追いつくと四番近藤の特大23号3ランで勝ち越した。

3万5578人を集客したドーム空間が盛り上がったのは言うまでもない。

4対2で逆転勝ちしたソフトバンクは勝率を5割に戻してロッテとのゲーム差を1にした。3連敗となりヒタヒタと迫ってくる足音に脅かされるロッテは苦しい立場だ。9月は5勝11敗と失速中…

“新戦力”の近藤は開幕二番。5月以降は柳田の前、三番を打っていたが8月からはテレコになった。

パ・リーグの打撃10傑を見ると、オリックスの頓宮が打率・307で1位、同中川圭が打率・271で6位、同紅林が打率・268で8位。

ソフトバンクは3人いる。2位柳田、3位近藤、4位中村晃だ。

柳田の152安打はリーグ最多で打点77はリーグ2位。20本塁打はやや物足りないが、開幕前に“軍団”を引き連れ広島市内や呉市内で自主トレを行った成果は十分出ている。

近藤は66得点、82打点、33二塁打、97四球、出塁率・423がいずれもリーグ最多で、FA移籍成功のお手本のような状況だ。

ふたり合わせて推定年俸およそ9億円。中村晃も加えれば10億円を軽く突破する。まさに額面通りの働き、だ。

ソフトバンクも打順は固定しづらい状況にあるが近藤、柳田の二枚看板を軸として、中村晃を一番や下位打線に拝する策で今季を戦っている。

軸が1本でないところが最大の特徴だ。外国人選手は五番以降。その顔ぶれもいろいろで、帯に短しタスキに…状況だ。

秋山、ライアンの三、四番で始まった新井監督の1年目はそのあと目まぐるしく軸がブレることとなった。

6月上旬にまずライアンが”脱落“した。「すべての球をうまく打とうとし過ぎて形を崩した」(朝山打撃コーチ)のがその理由だった。新井監督は「リフレッシュ」を強調したが、二軍調整はケガもあって長きに及んだ。

秋山、龍馬の三、四番で交流戦5連勝もマークした。しかし右脇腹を痛めた龍馬が7月12日に出場登録を抹消され、この“コンビ”も解消となった。

その後は秋山を三番に固定したまま、マット、菊池、松山、上本の四番で19試合を乗り切った。龍馬不在となった途端にチームは9連勝したのは“采配力”と話題にもなった。

8月8日のヤクルト戦(神宮)で四番龍馬、復帰、すると今度は8月12日の中日戦(バンテリンドームナゴヤ)で秋山が開幕104戦目にしてスタメン落ちとなった。

要するに開幕前に秋山、ライアンの2軸を配した打線は100試合を越えた時点で完全に息切れしたことになる。

そこからは小園と龍馬の三、四番を本線として2度、チームは4連勝した。ところが9月に入って龍馬の右脇腹がまた悲鳴を上げたようで12日、龍馬は一軍を離れた。

ここ9試合は小園、堂林の三、四番が中心で、しかしチーム6連敗の後半も含めて3勝6敗と黒星が先行している。

この日がウエスタン・リーグスタメン出場3試合となった上本は一軍復帰間近となった。龍馬も打撃練習を再開した。菊池と野間も治療と調整を急ぐ。

2日前に発熱などのために特例2023による抹消となった秋山、さらにはコンディション不良で離脱中のターリー。多くの故障者が出ている現状からすれば確かに「マネージメント不足」(新井監督)を反省する部分もあるだろう。

だが何と言っても問題なのは打線の芯になる部分がしっかり固定できていないこと。それは大事なDeNAとの最終戦でリーグ最多157安打、最多38二塁打、最多102打点の牧に強烈カウンターを浴びせられたことでも明らかだ。

実は今のカープ打線に一番必要なのが牧のような存在だ。1年目から本塁打数は22、24、29本と右肩上がり。打点も71、87、102と上昇カーブを描く。強いリストを使っての広角打法が特徴で、大瀬良から放った初回の2ランは誰もが“あそこまで伸びるのか”と驚かされた。

巨人には岡本和真がいるし、阪神なら大山がいて、森下翔太という“スパイス”も効いている。

新井監督ら首脳陣の「四番ライアン」構想はあくまで暫定プランであるが、さりとてかつての鈴木誠也や、もっと言えば旧広島市民球場時代の「四番新井」のような人材はチーム内には見当たらない。

「四番堂林」は今季、開幕前から松田元オーナーがことあるごとに口にしてきたプランであり、それが皮肉にも?ここに来て現実のものとなった。さりとて堂林が牧のように長きに渡り四番に座る訳ではない。

クライマックス・シリーズではセ・パともに好ゲームを演じることになるだろう。不動の四番を据えるチームが勝つか、それともオリックスのように臨機応変に打順を組み替えるチームが勝つか、勝敗を決めるのは誰のバットになるだろうか?

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