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何と戦っているんだろう、灰色の街でもがく僕らは。

オードリー若林の旅行記を読んだ。『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』という本だ。


ぼくはリトルトゥース(オードリーのオールナイトニッポンを聴いているリスナー)で、どうやら顔の造形も若林に似ているらしい。最近まではそれが気に食わなかったんだけど、この本を読んでからはむしろ誇りにさえ思うようになった。それぐらいグッときた一冊。

詳しくはぜひ手にとって読んでほしいんだけど、この本では「東京という街に疲れてしまった若林と、キューバへ旅してちょっとだけ楽になった若林」が描かれている。


ぼくは大学時代までの二十数年間を地元の大阪で過ごし、就職を機に上京してきた。東京暮らしはそろそろ3年目だ。

地元の大阪はかなりの都会だったし、東京は言わずもがなのビッグシティ。生まれてこのかたシティボーイとして生きてきたぼくだけど、若林が感じていた「東京の心地悪さ」はなんとなく分かる気がする。


知名度のある会社、そこで得られる年収、ブランド物のバッグ、美女を連れて青山通りを歩くこと、休日のBBQをインスタグラムに投稿すること。

みんながみんな「お金」や「地位」や「見栄」みたいなものを追い求めて、終わることのないレースを戦っていること。

内心では「くだらねえな」と思いつつも、その競争から降りる勇気なんてないこと。涼しい顔で「興味ないよ」なんてフリをするけど、それがかえって滑稽に映ってしまうこと。


そういえばぼくは、大学を卒業してから「同窓会」というものに参加したことがない。

東京のIT企業で働いて、高給取りではないものの快適な生活をしていて、自分はそれに満足しているはずなのに、まわりと比べて劣等感を感じてしまうことを心の底から恐れている。

それを「同窓会には行かない」という態度をもって、「大人数は苦手だからさ」という言葉に甘えて、斜に構えてのらりくらりと過ごしている。それが今のぼくだ。


いつになればこの感覚から抜け出せるんだろう。サラリーマンとして上り詰めて、港区のタワーマンションに住んで、美女の横でシャンパンでも飲めば満たされるんだろうか。胸を張って同窓会に顔を出せるようになるんだろうか。

たぶんそんなことはない。上り詰めたら上り詰めたで、もっと高い山が見えてしまうだけだ。そのときぼくはまた落胆して、高い頂上なんて興味がないよ、なんてフリをして飄々と生きてしまうんだろう。


食うのに困らないだけのお金があって、そこそこやりがいのある仕事があって、少ない親友と大切な恋人がいるだけで十分幸せなはずなのに。

ちょっと目を向けると、「お前はまだまだだ」と言われているような、そんな気がしてしまう街。

何と戦っているんだろう、灰色の街でもがく僕らは。


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