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このドキドキは、いつか消えてしまうけど。

恋愛には春夏秋冬がある。大好きな作家さんが、そんなことを書いていました。

お互いの気持ちを探り合って、LINEの通知に一喜一憂して、ときに不安になって。恋愛でいちばん楽しい「春」の季節です。相手の気持ちは分かっているのに言葉にできなくて、思わせぶりに誘ってみて、思い切って手を繋いでみて。そんなドキドキが最高潮になったとき、キスをしてふたりの関係は夏へと移ります。

夏のふたりは怖いものなし。連絡には即レスするし、一日中相手のことを考えているし、会った日には早く抱きしめたくて仕方ありません。こんな毎日がいつまでも続くんだろうな。甘い期待を本気で信じています。けれどそんな最高潮の夏の終わり、とつぜん秋の風は吹いてきます。

ふとした瞬間からLINEの返事が遅くなって、会う量が減って、小さなことからすれ違いが生まれます。あんなに熱々だった日々はどこへやら、秋が深まり、とうとう冬がやってきます。


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ぼくはこの「春夏秋冬」を知ったとき、とても寂しくなってしまいました。

今は恋人のことが好きで好きでたまらない、季節でいえば「夏」なんでしょう。毎日が楽しくて、くだらないことを電話で話して、ふたりで過ごす時間がどうしようもなく愛おしい。そんな季節もいつの日か秋に移ろって、気づけば冬の北風が吹いてしまうのか。そんなことを考えて、イヤでも「終わり」を意識してしまいました。


そしてぼくは、「どうやって夏を長くすればいいのか?」と考えるようになります。

どうすれば最初のドキドキを感じ続けられるのか。お互いに求め合って、ちゃんと好きだと実感できて、倦怠期なんて言葉と無縁でいられるのか。

はじめての場所に出かけたり、恋愛映画を観たり、ときには服装を変えればいいのかな。ぐるぐるぐるぐる考えてみたものの、これだ!という答えにはたどり着けませんでした。いつか秋の風は確実に吹いて、この関係も冷え込んじゃう気がしていたのです。


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でもそんなある日、ぼくの恋人が言ったのです。

「どうせ誰と付き合っても秋はやってくる。だったら私は、あなたと一緒にいたいんだ」って。

ぼくはその言葉を聞いたとき、今まで感じていた寂しさがすっと消えた気がしました。そうか、無理に夏を引き伸ばさなくてもいいんだ。季節の流れに身をまかせて、ふたりで秋を過ごしていけばいいんだと。


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ぼくたちはどうしても、新鮮さを求めてしまう生き物です。恋愛にも必ず「飽き」はやってきて、目の前の大切な人をないがしろにしてしまう瞬間があるかもしれません。

でも、それは誰と付き合っても同じこと。こんなドキドキできる人は他にいない!と思っていても、時間とともにその気持ちは落ち着いていくのでしょう。恋愛の春や夏をずっと続けるなら、常に新しい人を探して、恋の上澄みだけをすくっていく必要がありそうです。


でもそんな消耗戦を続けるなら、ぼくたちは「秋も冬も一緒にいたい人」と恋愛するほうが、よっぽどハッピーじゃないでしょうか。

いまこの瞬間、相手に感じているときめきやドキドキ、そんな熱い気持ちがなくなっても一緒にいたい。そう思える相手と恋しているなら、それ以上に幸せなことってない気がするのです。


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恋愛の「秋」を受け入れるって、一種の諦めです。

でも、夏を引き延ばそうとジタバタして季節を遅らせる、それって綺麗な恋なんでしょうか。

季節の移ろいに身をまかせて、その時々の気持ちを共有する。ドキドキがなくなっても好きだと思える相手と一緒にいる。そんな風に恋愛できれば、ぼくはこの上なく幸せな気がするのです。


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