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テレビレビュー『凪のお暇』(2019)「お暇」が人を成長させる

女子力が高い OL から一転、
安いアパートでの暮らし

以前、放送されていたドラマを
妻が配信で観ていて、
気になったので観てみました。

原作は2016年から
『月刊Eleganceイブ』にて
連載されているマンガです。

主人公は節約が趣味の
大島凪(黒木華)で、

彼女は女子力の高い
自分を演出した OL でしたが、
ある時、同僚たちに陰口を
言われているのを知ります。

さらに、隠れて交際していた
同僚・我聞慎治(高橋一生)が、

自分のことについて
同僚たちに話しているのを
見てしまい、

彼女は過呼吸で
倒れてしまうのでした。

それがきっかけで、
会社を辞め、家財道具を処分し、
都心から郊外のアパートに
引っ越します。

そんな凪の「お暇(いとま)」を
描いたのが本作です。

「お暇」が人を成長させる

わかりやすくいうと、
ラブコメディーの作品です。

凪が引っ越した先の
アパートには、
個性的な住人が多くいて、

それぞれ、凪の人柄に惹かれて、
友人になっていきます。
(ハローワークでも友人ができる)

それまで「空気を読む」ことで、
女子力の高さを演出してきた
凪はありのままの自分で、
住人たちと交流し、

徐々に本来の自分を
取り戻していくのです。

それぞれの友人には
それぞれの問題もあり、
時にはトラブルに
巻き込まれることもありますが、

その経験を通して、
凪は、これからの人生に
必要なことを学んでいきました。

このように長い人生において、
一時の「お暇」を得ることによって、
ガムシャラに働くことだけでは
得られないものがあるんですよね。

私自身も若い頃に、
一度就職した会社を辞めて、
フリーターになったことがあり、

その時の経験は、
今でも生きている気がします。

そういう意味でも、
会社を辞めた凪の
ゆるやかな進路変更に
共感できるところがありました。

ラブコメディーなので、
恋愛要素が強い作品ではありますが、
それだけがメインではなく、

いろんな人との出会いが
凪を成長させていくのです。

文字を大胆にあしらった演出

本作の推したいところは、
映像のおもしろさです。

何より、私は本作の映像の
おもしろさに惹かれて、
本作を観ました。

全体的に映像は柔らかく、
明るい印象で、
凪のゆるいキャラクターとも
非常に合っていました。

特に、好きなのが、
時折、画面の中に
文字が出てくる演出です。

凪が誰かと会話している時に、
凪の頭の中には
さまざまな選択肢が現れます。

その選択肢が
大きなテロップで表示されるのです。

(ある時は、道路のアスファルトに、
 ある時は、道路を走る
 トラックの側面に)

この文字の演出が
背景に違和感なく融合され、
心地よいテンポも相まって、
独特な臨場感を引き出します。

もともと、空気を読み過ぎる
性分でもある凪は、
相手の態度を見て、
いろんなことを考えてしまうのです。

その葛藤が心の声と、
文字による演出で
バッチリ表現されていて、
笑ってしまいます。

基本的には、
映像作品で文字を使い過ぎるものを
認めないことが多い私ですが、

ここまでの魅力が出るならば、
文字の演出もアリですね。

むしろ、よくぞここまで、
違和感のない文字の演出が
できたものだと、
感心してしまいました。

また、本作の特筆すべき点として、
音楽の良さを挙げたいですね。

劇伴を担当しているのは、
パスカルズという14人編成の
アコースティックオーケストラです。

オーケストラといっても、
そのサウンドは「軽音楽」
といった感じのサウンドで、

ハーモニカやリコーダーによる
かわいらしい旋律が
映像にとてもマッチしていました。

音楽単体でも
素晴らしい作品だと思います。


【作品情報】
2019年放送(全10話)
原作:コナリミサト
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄
   山本剛義
   土井裕泰
   大内舞子
出演:黒木華
   高橋一生
   中村倫也
放送局:TBS
配信:U-NEXT、Hulu、TELASA、Paravi

【原作】

【坪井敏雄の演出作品】


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