一華 -Ikka-

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内燃「5.掲げた両手」

 それからというもの、俺たちはスター街道を駆け抜けていった。今までの挫折や苦渋をバネに、快進撃を遂げた。  賞レースを総なめにし、注目の的となった。勢いそのまま…

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3週間前
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内燃「4.それでも二人は」

 目を覚ました。何時かさえも分からない。辺りはまだ暗い。  乱雑に置かれた洗濯物の山からリモコンを引っ張り出した。三回くらい電源ボタンを押した。テレビは退屈なニ…

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1か月前
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内燃「3.笑われた夢」

 数年前から始まった「ネクスターズ」は、結成5年以下の漫才師の大会で、若手の試金石である。初回の覇者「浮上サブマリン」の活躍もあって、メディアの注目も自ずと集ま…

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2か月前
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内燃「2.書き潰した願い」

 俺たちは大会を一ヶ月後に控えていた。若手の登竜門で、五年目になる俺たちにとっては、ラストイヤーになる大会だ。まだ、勝負のネタが完成していないので、少し焦りを感…

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3か月前
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内燃 「1.漫才バンザイ!!」

「漫才バンザイ!!」  突然、一ノ瀬が叫んだ。通りがかったカップルと足早に歩くサラリーマンがこちらをチラリと見たが、そのまま雑踏へと消えていった。 「どうもありが…

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4か月前
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内燃「5.掲げた両手」

内燃「5.掲げた両手」

 それからというもの、俺たちはスター街道を駆け抜けていった。今までの挫折や苦渋をバネに、快進撃を遂げた。
 賞レースを総なめにし、注目の的となった。勢いそのままに、テレビ出演が増え、帯番組「バンバン言っちゃいな。」が始まった。今までの苦労と暇が嘘かのように、多忙で充実した毎日だ。売れっ子になってしまったら、それはそれで困ったものだ。

 と、まあ、ありきたりな物語だとこんな調子でトントン拍子に話は

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内燃「4.それでも二人は」

内燃「4.それでも二人は」

 目を覚ました。何時かさえも分からない。辺りはまだ暗い。

 乱雑に置かれた洗濯物の山からリモコンを引っ張り出した。三回くらい電源ボタンを押した。テレビは退屈なニュース番組だった。乾いた笑い声がやけに耳についた。
 時計は午前五時二十一分を指し示していた。どうやら眠ってしまっていたらしい。
 
 ひとまず、タバコを吸うことにした。ベランダに出ると、見慣れた灰色の街が均一に広がっていた。空には、重た

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内燃「3.笑われた夢」

内燃「3.笑われた夢」

 数年前から始まった「ネクスターズ」は、結成5年以下の漫才師の大会で、若手の試金石である。初回の覇者「浮上サブマリン」の活躍もあって、メディアの注目も自ずと集まっていた。結成5年目の俺たちにとって、最後のネクスターズだった。
 「炭酸ヒットチャート」は最近、SNSで脚光を浴び、若者を中心に大人気のコンビになっていた。「だるさんズ」は今まで鎬を削った同期である。他にも、この界隈では名の知れた漫才師た

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内燃「2.書き潰した願い」

内燃「2.書き潰した願い」

 俺たちは大会を一ヶ月後に控えていた。若手の登竜門で、五年目になる俺たちにとっては、ラストイヤーになる大会だ。まだ、勝負のネタが完成していないので、少し焦りを感じている。それは、一ノ瀬も同じのようで、とにかくネタ合わせをしようと訴えてくる。切羽詰まっていることは確かだったので、とりあえず集まることにした。

 そういう日は必ず、半額の惣菜を買い、俺の家で集まることになっていた。四畳半のワンルームは

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内燃 「1.漫才バンザイ!!」

内燃 「1.漫才バンザイ!!」

「漫才バンザイ!!」
 突然、一ノ瀬が叫んだ。通りがかったカップルと足早に歩くサラリーマンがこちらをチラリと見たが、そのまま雑踏へと消えていった。
「どうもありがとうございました!」
 受け取り手のいない虚しい音は、サラリーマンのように街に溶け込んでいった。空の水色は鮮やかさを急速に失い、ビルが辺りに暗い陰を落としていた。
「今日はこの辺にしとこか。」
 そう言って、カンパ用の箱を取り上げた。サク

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