ピチカッ、リー


光りを吸い上げた葉が
その空白になった、文字の
ひとつとしてきざまれた緑地の、
通路に沿っていくつも並んだ小部屋の
埃こりまみれの蛍光灯ごしに
青く点滅したりする植物の一株。
コラージュ画のノートを一枚やぶいて
ゆるくつなぎとめられた鱗の
もしくは魚群がおとづれた痕の
あいまいになっている紙束に滲みこんだ
ブルーインク、犬たち、
眠りながら なにか口ちづさんでいるのか
なにか、つぎはぎのmonologueなのか。
、白熱した
羊歯の、夢。
弯曲し続ける窓辺に、注そがれた水
紙の上で、不適切に並べられた文字をくしゃくしゃにする
消印ばかりがたまっていく。
葉脈をなぞるぼくらの指ビさきに
かすかに残るゆるやかな旋律が
ふさわしかったの?
足もとでは
わざとらしく広がった水辺で増殖する貝類が腐敗して、
削除される。
木々の切レ目に差し込まれたplastic片カミーユ
ますますぼくらを不安にさせる
ふるい名前にwilsonをうかべ、
頭上で膨れあがる球体をつつくと
あふれだす腐液の粘度が
いつもゆるやかにくだっていく時間の
切断されない一部になっている。
ガラスに覆おわれた光る、
複合器官はくりかえされる、
bubble。

『現代詩手帖』2024年6月号 新人作品投稿欄 佳作(杉本徹・選)

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