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ビールのブランドの立ち上げを目指し研修中!スキルも経験もなかったから、日々学ぶことだらけ。

僕の人生を豊かにしてくれたビール。
次は、自分の手で造りたいと思った。

髙羽開さん

高知県日高村地域おこし協力隊1年目。「今まで自分の人生を豊かにしてくれたビールを自分で作りたい。」そんな想いを持って2020年12月に岡山から高知県日高村に移住。ブルワリー(ビール醸造所)の立ち上げを目指し“MUKAI CRAFT BREWING(ムカイ クラフト ブルーイング)”で研修を受けながら、地域おこし協力隊として活動中。

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Q:なぜ、地域おこし協力隊になったんですか?
A:ブルワリーになるための手段として協力隊を選びました。

「前職は岡山県の美観地区にあるローカルベンチャーに所属。岡山県らしい商材を使った商材を企画して商品化し、県内外の販売店に卸営業していました。

商品企画をやっている中で、生産者や作り手に会うことが多くて。人や環境に敬意を持って本当に素晴らしいモノづくりをしている方々、さらに、ライフスタイルごと素敵な方々がいっぱいいたんです。そういう人と仕事上でお付き合いをしている中で、自分は企画しかしてこなかったけど、『自分の手で何か作りたいな』と思うようになったんです。

何を作ろうかと考えた時に、一番最初に頭に浮かんだのがビールでした。単純にビールが好きってのはもちろん。自分はビールで人生が豊かになったというのもあったので、自分にとって、辻褄があうのがビールだったんです。

飲み会が好きってだけなんだけど。ビールのおかげでたくさんの人間関係を築けたんですよね。今いる友達もビールがなかったら、友達になってなかったみたいな人もめちゃめちゃいると思います(笑)『ビールを作るのが一番やる気出るやろな』って思ったのがきっかけで、クラフトビールのブルワー(醸造家)になることを目指しました。」

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「しかし、いざ求人などを見ていると、全然募集しているところがなかったんです。コロナ禍ということもあって、クラフトビール業界もダメージを受けていたんでしょうね。
『これは直接、門を叩くしかないな。とりあえず手当たり次第行ってみよう!』と思って、2020年8月に仕事を辞め、9月には中四国の醸造所を20箇所ぐらいぐるっと回りました。

周り始めた時に、岡山の六島という小さな島で、地域おこし協力隊の制度を活用して、醸造所・クラフトビールのブランドをを立ち上げた方がいることを知りました。地域おこし協力隊の制度は知っていたけど、『ブルワーになるのに協力隊の制度が使えるのか…!?』と驚いて、協力隊の募集に関して調べてみました。

調べていく中で、『どうやらミッション型とフリーミッション型があるぞ』ということを知りました。自治体が希望する業務を提示しているミッション型と、自分のやりたことを提案して採用されるフリーミッション型という感じ。そもそもフリーミッション型の採用は比較的少なく、限られていました。

フリーミッション型を採用している自治体をいくつかピックアップして、『ブルワーを作りたいこと』『今はまだスキルも経験もないということ』を伝えて、色々とお話を聞きました。

その中で、日高村の協力隊担当の方に話したところ、『うちであれば、こういうお手伝いができるよ。こういう補助金の使い方ができると思うよ』と前向きな反応をしてくださったので『ここならやれそうだな』と。それで、地域おこし協力隊の制度を活用してブルワリーになることにしたんです。」

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Q:他にも、数ある自治体の中から日高村を選ぶ決め手になったことはありますか?
A:日高村の立地が、修行できる場所候補の中間地点だったんです。

「仁淀川町にある“MUKAI CRAFT BREWING(ムカイ クラフト ブルーイング)”と、南国市にある“山本麦酒”というクラフトビールのブランドが2つあって、そのちょうど中間に日高村があるんです。地域おこし協力隊として採用された時には、そのどちらかのブルワリーで研修させてもらいたいと思っていたので、日高村に来ることにしたんです。地域おこし協力隊に応募した時点では、“MUKAI CRAFT BREWING”にも”山本麦酒”にも、研修するOKはもらっていなかったんですけど…(笑)

前職では営業や、商品企画やデザインのディレクションで関わらせてもらったりしていたので、それなりに役に立つ自負があったし、協力隊って立場もあり、ブルワリー側には人件費がかからないため断られる理由がないなとも思っていました。

日高村の立地的に修行ができるブルワリー(ビール醸造所)が周りにあって、そのどちらにも素晴らしいブルワー(醸造家)がいて、お2人のどちらからの下で働けるのであれば、すごく成長できるんだろうなと思って決めました。」


Q:“MUKAI CRAFT BREWING”を選んだ理由はありますか?
A:すごく素敵な方々なんだろうなっていう直感でした。

「まず、多くのブルワリーが使っている大きなタンクを使う醸造方法(ブリューハウス)での醸造経験を積みたかったので、その方法で製造しているブルワリーを探していたんです。

その中で見つけたのが“MUKAI CRAFT BREWING”でした。“MUKAI CRAFT BREWING”をネットで調べて、取材された記事を読んでみて、素敵な方々なんだろうなっていうのはずっと思っていて、実際に行ったら本当にイメージ通りでした。

でも、実は中四国を周った時に連絡した中で唯一返事がなかったブルワリーなんです(笑)
開業準備中というのを記事を見て知ってたから、お忙しいんだろうなって。

協力隊になってからすぐに直接行ってみようとブルワリーの向かいにある“しもなの郷”に宿泊予約をして、『めちゃくちゃ飲むぞ!』と気合いを入れて飲みに行きました。
その時に、『実はメッセンジャーで連絡したものなんですけど…』って伝えて、『あの時はごめんね、返信する間もなく忙しかったんよー』と飲みながら話をして、『改めてなんですけど、お手伝いすることはできませんか?』とその場でお願いをしました。
検討するとお返事をいただいた後も、週2回くらいのペースでお客さんとして飲みに行きました。少しでも馴染みを感じてもらえればな…という下心もありつつ(笑)
その後、年末ごろに、お手伝いしてもらおうかなとOKをもらいました。」

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Q:協力隊としてどのような活動をしていますか?
A:ビールの仕込みから、瓶詰め、配送、接客までひととおり、ブルワリーの勉強中です。

「ビールの仕込みって、丸一日かかるんです。丸一日かけて発酵タンクに入れて、3〜4週間発酵させる。仕込み作業自体は、週1回あるかないかくらいです。それ以外に、発酵が終わったビールの瓶詰め作業やラベルを貼る作業、注文が入れば配送作業や、県内の配達をしたりしています。ブルワリーにタップルームが併設されているので、そこの接客作業などもしています。」

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Q:ビール作りのどんなところが面白いですか?
A:いろんな学問が関わり会って、知れば知るほど楽しいです。

「ビールは原料は大麦とホップと酵母と水の4つ。これらに熱を加えたりだとか、人の手を加えたり、力を加えたりして、それらを混ぜ合わせてビールっていうものを作っています。その中には熱や手を加えるといった、物理学や化学が関わっています。

そして酵母は微生物なんです。酵母が麦汁の中に含まれる糖分を食べて、その排泄物として二酸化炭素(炭酸)とアルコールを排出するから、ビールが出来上がるんです。酵母という生き物の生命活動が入ってるから生物学も関わっている。

さらに、分子レベルの化学反応をタンクの中で今何が起こっているのかを理解して、何度でどの酵素が働くのかとか、そのための温度管理もすごく大事だからそういう自然科学的な知識も必要になる。

最近お酒離れが進んでたり、会社の飲み会は面白くないよねっていうので飲みニケーションとしての立ち位置が下がりつつあるけど…それでも人々の生活にビールって密接に関わっているなと思うんです。だから、ビールを通してどう人の暮らしをより良くするのかていうのを考えたりすると社会学的な知識も必要になってくると思います。

他には『人ってなんなんだろう』とか、『お酒ってなんなんだろう』とか、『じゃあ人の暮らしにとってお酒って何ができるんだろう』みたいな哲学的なことも考えています。

社会学や哲学って一見ビールと無関係のような気がする分野だけど、ビールを造っていると自然に考えちゃう。それくらい懐が大きいんです。ビールっていうコンテンツって。本当にいろんな学問が関わりあってる。」

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「『70度のお湯に大麦を入れて1時間おいて、それをタンクに移し沸騰させて…』
って文字にすれば簡単だし、その通りにすれば、誰でもビールは造れちゃう。だけど、それで美味しいビールが造れるかどうかとは別なんです。タンクの中ではすっごい複雑な化学反応がたくさん起きていて、いろんな酵母が働いている。それを知らなくてもビール作りはできるけど、知れば知るほど、美味しいビールはできると思うし、知れば知るほど、やってる身としても楽しいです。ビールって奥が深いんです。


もともと文系で、化学、物理とか全く知識がないですが、“MUKAI CRAFT BREWING”のオーナー・ケンさんは、アメリカで化学物理の高校教師をしていたこともあり、そういう内容についても僕に講義してくれます。ブルワリーの中にあるホワイトボードに、高校の授業みたいにこういう時にこういう化学反応が起きててね、って。

そもそも温度ってなんなのか、光ってなんなのかって基本的なところから教えてくれています。講義だけでなく、ビール科学的観点からの考察の本を読んだり、自分が興味あることだから率先して勉強して、分からないところはケンさんに質問して教えてもらいます。すごく良い方のもとで働けてることを実感していて、ありがたいし、自分はラッキーだなと思います。」

Q:これからどのような活動をしていく予定ですか?
A:アメリカ研修で勉強したいなと思っています。

「“MUKAI CRAFT BREWING”では、2022年の夏頃まではお世話になりたいなと考えています。その後、3ヶ月アメリカ研修で勉強したいなと思っていて、帰ってきたらブルワリーの立ち上げに向けて準備を進める予定です。

アメリカ研修へ行く理由は、日本って自家醸造が酒税法で禁止されているんですが、アメリカは自家醸造が出来るんです。海外では、アマチュアの人たちが趣味感覚でお家でビールを造って、ビール作りの奥深さ、楽しさに触れて、プロになるっていう流れがあるんです。

ケンさんもその一人。ロサンゼルス生まれで、15年間くらいホームブリューイング(自家醸造)をやったのち、奥さんと日本へ移住し、ブルワリーを立ち上げたんです。

今、“MUKAI CRAFT BREWING”でビールの醸造の手伝いをさせてもらっているけど、あくまで“MUKAI CRAFT BREWING”というブランドの中でやらせてもらっているから、自分でレシピを考えてゼロから全部自分ひとりでやる…というのは難しい。

そう考えると、やっぱり自分でブランドを立ち上げて、いちから作るのが一番早いんじゃないかなって。やるからにはどんなレシピで、どんなスタイルのビールを作るのか考える期間もないと厳しいと思うので、ケンさんに相談したんです。そうしたら、『アメリカに行ってきたらどう?』って。ケンさんがアメリカで自家醸造をやっていた時のホームブリューイングのコミュニティがあって、『仲間達を紹介するから、そういう人たちと3ヶ月間みっちりビールを作ったらいいよ』って言っていただきました。」

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Q:日高村ではどんな人に出会いましたか?
A:まだ関わりが少ないので、今から人脈を広げていこうと思ってます。

「自由に活動させてくれる協力隊担当の安岡さんに出会いました。安岡さんがいなかったら、きっと日高村に来てなかったし、自由に動けていなかったですね。やりたいことを応援してくれるのはもちろん、本来ならば日高村の協力隊が、村外の仁淀川町の“MUKAI CRAFT BREWING”で修行をするなんてことは普通では考えられない。でも、それも許してくれる、そんな柔軟な考えをもった安岡さんが担当だったからこそ僕は、ここでブルワー立ち上げに向けて活動ができています。

その他はまだ協力隊のまわりくらいしか関わりがないけど、日高村に来て半年経って、1年目の残り半分は、日高村の中で人脈を作る、仲良い人を作るのが目標です。」

協力隊集合

Q:日高村の魅力は何だと思いますか?
A:仁淀川っていう超優良コンテンツが近所にあること。

「最近、仁淀川でSUPをしたら、超いいなってはまりそうです。仁淀川っていう超優良コンテンツが近所にあるんだから、これはやったほうがいいんじゃないかと。めちゃ綺麗やし、超リフレッシュ出来るし、おすすめです。他には、サウナに週2くらいで行ったり、飲みに行ったり、勉強したりしています。

日高村は市内からそれなりに近いのに、自然豊かだし、夜帰ってきて見上げる満点の星空に毎日感動してます。ここに来て半年以上経ったけど『すごっっ』て、いまだに言ってる(笑)」


Q:この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
A:あたたかい人たちに囲まれて、充実した日々を過ごしています。

「高知の人はあたたかいなと思います。日高村の酒蔵ホールでイベント出店した時に、役場の人たちや、村のいろんな人がきてくれて、応援してるからねって声かけてくれたりとか。
近所の焼き鳥屋さんは、移住してきてすぐに『移住してきました!将来はビール作りしたいと思ってるんです。』って挨拶したら、それからずっとサービスしてくれるんです。
大盤振る舞いというか、出会ってすぐだったのでそれが衝撃的でした。

他の地域で協力隊をやったことがないから、他の人や自治体がどうか分からないですけど、
協力隊としてすごく充実した日々を送れていると思っています。

役場の方々が、すごく暖かく支援してくれていることもあり、先輩協力隊や卒業した協力隊の方々もすごく個性的で面白い方々がたくさんいますよ。」


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