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【小説】さくら


周りと比べて、少しだけ浮いている少女。

浮いている、と言っても、いい意味で。

顔立ちが良く、スタイルもそこそこ、

勉強も得意だった。

歌も、絵も、字も得意…

というより、少女はいろんなものに興味をもち

自分のものにするのが得意だった。

そんなようだった。

いつも、周りからは褒められ、羨ましがれる存在に。

妬まれる存在になることも多かった。

そのせいか、昔から同性の友達は少ない。

だからと言って、異性の友達が多いわけではない。

結論、友達は少ないのだ。



その頃は、いろんな葛藤と不安を抱えながらも

なにより自分を愛し、自信に満ち溢れていた。



少女はやがて女性に。

ひとりの大人として、世に出た彼女は、

ごく普通の女性になった。

あの頃感じていた、“特別さ”は

どこかへいってしまったのかもしれない。

いや、彼女はきっと、

その“特別さ” をどこかに隠し込んでしまったのだろう。



23歳になった彼女は、

喉の奥に感じる違和感とともに

毎朝、通勤列車に揺られ会社へ向かっている。

自分のやりたかったことは、

本当にこれなのか。

今の自分のままで良いのか。

そんなことを考えながら出社する。


プライベートの彼女と働く彼女は、

全くの別人のようだ。

さっきまで、ネガティヴ発言ばかりの彼女は

社内へ一歩踏み込むと、

明るい部下に変身する。


「誰も私が鬱病寸前の重症患者とは思わないだろう」

なんて考えながら気丈に振る舞う。


だけど、自分を“鬱病寸前の重症患者”と置き換えることで

彼女自身を守っているようにも思えた。


彼女は短い人生で、たくさんの大きな壁を乗り越えてきた。

まずは、母の温かいお腹の中からこの世に送り出されたとき。

彼女は未熟児で産まれ、生存確率は20%といわれていた。

彼女の生命力は強く、ICUの中で懸命に生き延び、

23年間、特に大きな病気もなく

今も健やかに生きている。



小学生になると

女の子にとっては嫌な時期だ。

女子同士の謎のはぶりの標的に。

ちょっとモテただけで

居場所がなくなる。

その時は、彼女というより

彼女の母親の方が辛そうだった。

自分の娘が悩み、悲しんでいる、

という状況が耐えられなかったのだろう。


母親は、多くの時間、彼女と共に泣いていた。


中学校に上がれば、

高校受験が待っている。

彼女の学力は至って普通だった。


いや、普通よりも下だった。

なのに彼女は、自分のレベルよりも少し高い公立高校を目指していた。


当然、担任の先生からは心配されたが、

見事に試験に通ったのだ。

この高校生活で、彼女は大きな出会いを果たした。

彼女は、学年に1クラスしかない英語に特化したクラスに入学した。

3年間クラスメイトも担任の先生も変わらない。

ここで友達選びをミスれば高校生活が終わる…

と心配していた彼女だったが、

今でも仲の良い信頼できる友人と出会うことができた。


担任の先生も、先生らしい先生だったが、

今までの学生生活の中で、彼女が1番信頼した先生となった。

勉強の楽しさを知り、

彼女の才能が開花した瞬間だった。



大学受験。

高校3年になれば、全員が次のステップに向けて

ひたすら必死に勉強に励む。

こんなにも楽しく勉強に取り組んだことは今までになかった。


将来就きたい仕事を見据えて大学を選んだ。

彼女は努力家だった。

日々の努力が実り、推薦枠で志望大学への入学が決まった。

これはゴールではなく、スタートだった。

当時、彼女には恋人がいた。

小学校の同級生だった。

彼とは高校の間に再会を果たし、

恋仲になり、彼女の青春をより鮮やかなものにしてくれた。

彼も受験を控えていた。

ある日、受験に集中するために

彼が突然、携帯電話を封印すると言い出した。

当然、当分会えなくなると告げられた。

寂しさと不安、いろんな感情で

先が真っ暗になったが、

1年後に再会することを約束して

彼との連絡を断った。

彼女は、これから始まる大学生活に期待を抱き

残りの高校生活を満喫した。

彼とは、結局そのまま戻ることはなかった。

だけど、彼は間違いなく

彼女を大きく成長させた存在だっただろう。

彼は彼女にどんな時も自信を持たせてくれた。

人間的にも。そして、女性としても。


まるでひとりになっても、大丈夫なように。


to be continue...


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お久しぶりです。言織🕊です。

“小説風”に挑戦してみました(* 'ᵕ' )

従来、啓発活動をしていた言織とは異なり、

なんちゃって小説家なふんわりした言織をお届けしてみました。

また気分で投稿していけたらなと思っています。

それでは、本日もお疲れ様でした- ̗̀☾ ̖́-


言織🕊 @ikirukotoba_

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