見出し画像

映画というエンタメの進化論

映画はアートであり、興行でもあると言われています。であるならば、エンターテイメントでもあるともいえます。

エンターテイメントであるということは、常に最新の科学技術が反映されているということですね。なぜなら演出でビジネスを成功させるにはテクノロジーが不可欠だからです。つまり、映画史は、撮影や映像テクノロジーの歴史とリンクしていると理解できます。

テクノロジーとエンターテイメント

前提として、エンターテイメントと科学技術について触れておきます。
例えば彫刻ならば、紀元前6世紀頃の古代ギリシャ彫刻。柔らかい大理石の発見と加工技術によって成立していきます。
また絵画では、19世紀になって発明されたチューブ絵具。これにより、チューブ絵具とキャンバスさえ持てば、いつでもどこでも絵を描けるようになりました。(それまでの絵画は、すべて工房にこもって描いていました。)
モネなどの印象派はこの発明から誕生しました。


映画史を振り返る試み

映画のテクノロジーの進化について、以下の5点に絞って、簡単に振り返ってみました。
1.音声(トーキー映画の誕生)
2.映像(カラー映像)
3.撮影技法
4.特殊効果(CG含む)
5.配信(ストリーミング)

これは私の試みであり、同時にこれを読んでくださる皆様の心に響き、かつ知的好奇心が満たされるよう心を配っています。

というのも、映画史は新技術やスターといった縦軸だけでは語れないためです。
我々のような観客一人ひとりの横軸が存在します。縦と横が交差する点に、それぞれ思い出の作品や傑作があると考えることができます。
皆様に「あぁ、そんな映画もあったね」と共感していただければ幸いです。

映画のはじまり

映画の歴史は19世紀後半からはじまります。
当時の最新技術であった写真(フォト)について、いかに運動(動画)として記録するかテーマでした。
そうした中、トーマス・エジソン(米)とリュミエール兄弟(仏)がほぼ同時期にシステムを開発しています。

覗き込んで1人ずつしか見れないエジソンの機械に比べて、リュミエール兄弟のシステムは現在の映写機と基本がほぼ同じであり、多数の人間が同時に閲覧できる点で画期的なものでした。ここから映画の歴史がスタートします。


1.音声の進化

初期の映画は、画像のみで音声のないサイレント映画と呼ばれるタイプ。これは1920年代末期にトーキー映画(音声付き映画)が登場して普及するまで続きました。

世界初のトーキー映画(長編)は、1927年に米国で公開された『ジャズ・シンガー』です。(全編ではなく、一部のみ音声付き)
ちなみに、ディズニーのミッキー・マウスのデビュー作、『蒸気船ウィリー』が公開されたのは、翌1928年です。こちらは短編ながら、音声付きの映画でした。

2.映像の進化

白黒映画からカラー化したのは1930年代。世界初のカラー映画は1935年の『虚栄の市』ですが、その数年後に2本の革命的な作品が登場します。

《映画史を変えた傑作》
①白雪姫
②風と共に去りぬ

1937年、ディズニー制作の世界初のカラー長編アニメ映画となる『白雪姫』が公開。桁外れの大ヒットを記録します。
また1939年、『風と共に去りぬ』が公開。長編のオールカラー映画であり、世界的に大ヒットとなります。世界観客動員数歴代最多の20億人(!?)という記録をほこります。
いずれも映画史に輝く傑作と言われています。

3.撮影技法の進化

撮影技法の点では、1941年公開の『市民ケーン』は、パン・フォーカスやローアングル等の技法が確立した作品として知られています。
また1950年公開の黒澤明監督『羅生門』では、同じ出来事を複数の登場人物の視点から描く技法『羅生門効果』が世界で認識されるようになりました。
さらに1958年、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』が公開。ズームレンズを使ってズームアウトしながらカメラを被写体へ近づける『めまいショット』はこの映画から誕生しました。 


4.特殊効果の進化

特殊効果が映画の重要ファクターとなったキッカケは、1977年ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』と言われています。この作品以降、90年代前半まで世界的なSF映画ブームが到来します。

《映画史を変えた傑作》
③ターミネーター2

1991年公開の『ターミネーター2』では映画史上で初めて、映像合成を全てデジタル処理で行った世界初の作品です。このシュワちゃんの傑作以降、映画でのCGの使用が一般的となり、また飛躍的に進歩していきます。例えば、『インデペンデンス・デイ』『ツイスター』をはじめ、『アルマゲドン』『ディープインパクト』『GODZILLA』『ディープ・ブルー』などは、ターミネーター2とほぼ同じ技法を用いたCGを多用した作品です。(いずれも90年代後半)

なお、『タイタニック』もこのころの作品です。(1997年)
CG多用ブームの象徴的な作品として認識されていますね。

《映画史を変えた傑作》
④マトリックス

CG技術をアクションに取り入れた1999年公開のキアヌ・リーブス主演『マトリックス』では、CGだけでなく、ワイヤーアクションやバレットタイムなどを融合した表現手法が話題となりました。個人的にもマトリックスは「映像革命」として映画史に残る傑作だと思っています。
(本文と趣旨は異なりますが、マトリックスは、テーマが東洋文学であり、このあたりも斬新でしたね。)

さて、CG技術と最も相性が良いのはファンタジー系の作品と言われています。魔法とか、他に表現が不可能ですからね。
2000年代の『ロード・オブ・ザ・リング』『トロイ』『エラゴン 遺志を継ぐ者』『300 〈スリーハンドレッド〉』などはその代表と考えています。CG技術がなければ絶対に創れない作品ばかりです。

《映画史を変えた傑作》
⑤アバター

2010年代初期は、3D映像の時代でしょうか。『アバター』は「映画という概念を根本から破壊する」作品として世界中でヒット。興行収入はジェームズ・キャメロン監督自身の持つ『タイタニック』の記録を大幅に上回る約28億ドルを記録しました。

5.配信の進化

2010年代後半からのサブスク方式の定額制動画配信サービスが本格化しました。ストリーミングサービスである「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」などの登場で、自宅で4K画質の最新映画を楽しめるようになりました。


映画への期待

歴史を振り返ると、映画はテクノロジーと共に進化してきたエンターテイメントであると改めて認識しました。

「ネットやサブスクの登場で映画は衰退するのでは」という声もありますが、わたしはそうは思いません。
映画は、プロパガンダ利用やテレビの誕生という危機をエンターテイメントの魅力で乗り越えてきました。
人類史は常に繰り返します。
むしろこれからは映画の需要が増しそうに思えます。なぜなら、いつでも、誰でも、作品を発信できる時代だからです。玉石混淆の時代だからこそ、歴史の重厚さを持った作品に皆が期待しています。100年の歴史は素人が真似ようと思ってできるものではありません。
これからの技術の進歩とプロの仕事に期待したい。映画好きの心からの願いです。

#映画にまつわる思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?