文字で触れる

感想文です
今更ながら、宮木あや子さんの『官能と少女』をたった今読了しました。ずっと気になってたんだけど、どの図書館にも本屋にもなくて結局300円でメルカリで買いました。安い!やったー!

フィクション小説が好きで、中でもいわゆる少女文学が好きで、中でも思春期で揺れ動く少女の心や体が好きなわたしにはもってこいの内容でした。
「官能」と言っても、タイトルと可愛らしい表紙から、三浦しをんさんの『ののはな通信』や村田沙耶香さんの『しろいろの街の、その骨の体温の』程度の性描写かな〜と思ってたんだけど、結構グロい所までしっかりめに描写されてました。後から知ったけど、官能小説の分類だったんですね。失礼しました。
6つのお話で編成される短編集で、どのお話も歪んだ性愛の対象と愛と快楽に溺れた末に見えるグロさまで感じるほどの献身的な愛を感じる。

第一遍、カリブ海だけに存在するコンク貝から取れるコンクパールでできた指輪に恋する、少女趣味なお洋服に身を包む女の子の、マユコの話。うーんこの前説だけで素敵。
マユコとロリータファッション仲間でジュエリー販売店の店員である武田さんは、マユコの体を抱く。その理由は、マユコの体が自分の大好きなロリータファッションに似合うから。武田さんはロリータファッションに恋をしているのであって、マユコの体は武田さんとロリータを媒介するものでしかない。
そして、マユコも武田さんのお店で売っていたコンクパールの指輪をする女性、黒川さんに抱かれる。もちろん好きなのは黒川さん自身ではなく、「コンクパールをはめた黒川さんの指輪」である。
コンクパールというのは養殖が難しいらしいです。普通のパールは二枚貝に生息しますが、コンクパールは巻貝から採取されます。ジェリービーンズみたいな形と色。セボンスターのアクセサリーみたいな発色。口に入れたら間違いなく甘酸っぱい。
話逸れましたが。対物性愛と断定するまでではないけど、マユコや武田さんと同じようなに、本質を愛してなくてもセックスできる女性って割といるのでは?パッと思いつく例だと、巷で噂のパパ活もセックス中おじさんを見て感じてるわけではなく、チラチラと見え隠れする大金とか可愛いお洋服、更にその先にある優越感や承認欲求に感じてるんではないでしょうか?今のところ経験ないですけど、そんな感覚だと思います。
そして他人への依存は自分のアイデンティティへと昇華する。それがいなくなったときは空っぽになっちゃうね。そしてその時に縋ったものにまた依存する。
コンクパールみたいにハッキリとした何かを体の奥で欲しがっているのに自分とそのものを媒介するものを愛し、愛されるふりをする。いつまで続くのか分からない虚しへの絶望をひたすら隠しながら。 
それが百合セックスと対応しているようで少し悲しくなりました。多分、ここに出てくる女性はレズでは無いんだと思う。ただ、愛するものを媒体するものが女性であっただけで。(そうなるとバイセクシャルになるんですか?)
本来、陰茎が挿入されるはずの膣には、あまりにも物足りない細さの女性の指が挿入される。お互いに本能的に満足できないまま、か細い快楽に敏感に反応する様子が愛おしくて繊細でガラス細工や金継ぎや刺繍とと同じような細やかな官能さにクラクラしてしまいました。

蛇足ですが…。女の子同士のセックスって、生殖は確実に出来ないので機能不全のセックスというか、かなり不毛な事だと形式的には思うんだけど。男女の付き合いにはあって女同士、男同士の付き合いには本来成立しないコミュニケーションツールであることが悔しいなーと思います。
全然変な意味でも下心があるわけでもなくて、私は大好きな同性の友達とセックスしたいと思いますし、もっと精神的な部分で繋がれる機会になると思うんだけどな。
勿論、同性にデリケートな部分を触られることに不快感を感じる人が多いことは十分承知しております。小学生の時からBLにどっぷり浸かってしまった故の感覚なんでしょうか。そう言うことにしておきましょう。
(これについての追記を次の記事ですこーしだけ書きました)


話戻ります。みんなロリータが好きだから、きっとお部屋のカーテンもピンクなんだろうな。ベッドに天蓋とかついてるかも。きっと下着もたっぷりフリルとリボンがついてて…テンション上がりますね!
これも蛇足でしたね。

少し飛びますが、
テレビに出るアイドルを家でひたすら待つ幼妻の話。
結論から言ってしまうと、結婚していることも同棲していることも全部主人公の妄想です。行きすぎた現実逃避というか、精神世界で言う本物の現実逃避なんだと思います。母親からも父親からも「いらない」ことをハッキリと言われた14歳の彼女には抱えきれないストレスと不安があった。その捌け口が大好きな彼との妄想だったんですね これ女の子にはよくあることだと思う
さて、妄想の世界で(ちなみに彼女に妄想という自覚はなし)彼女は妊娠しています。しかし、初めて初潮を迎えて股から血が出た際にそれを初潮ではなく流産だと勘違いしたのです。なるほど。私14歳の時流産がどんなものか知らなかったと思う。そしても勿論彼女は大好きな彼との子を流産させてしまったとパニックになります。
生理を知らずに、股から血が出る=流産になる偏った少女の二次性徴への知識、独特の官能さ。
彼女は彼に「赤ちゃんが欲しい」って言うんですね。理由は彼と自分をつなぐ目に見える愛が欲しいから。あんな粘土より柔らかくて小さいもの育てられるわけがない、そもそも他人を自分の体で育てるなんて幻想文学もびっくりの奇天烈な事恐ろしくてできないと思っている私よりも、女性としての精神的な部分があまりにも早熟していて情けなくなってしまいました。
結婚、妊娠ってすごくデリケートで個人的なことなのに世間体や社会の目を気にしがちですが、「この人の子供が欲しい」って思って妊娠した女性ってどれくらいいるんですかね?うーん。

実は官能小説処女だったので、初手からこんなに良い官能小説を読んでしまって贅沢だな…と思いつつ、最高のひと時を過ごさせて頂きました。官能小説読んだことないくせに、古本で官能小説用語辞典は買ってしまった取らぬ狸の皮算用状態でもあったけど、それも解消できた!
自分の文書を書くアビリティのキャパが2000文字が限度らしいので今回はこの二篇しか書きませんでしたが、再読してまた感じた事があれば追記します

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