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ノック12本目:社会人の基本100本ノック ~ブレーキではなくアクセルを~

<プログラム概要>
社会人として根底に持つべきマインドセットを学ぶ研修。
アルーの新人向け主力プログラムの一つ。


社会人の基本100本ノックは、2008年11月~2009年1月頃に開発しました。
初期顧客は大手IT企業様の2009年4月の新人研修案件でした。
当社の若手営業メンバーNさん(2007年新卒入社~2016年まで在籍)の大活躍により、ライバルの研修会社様とのコンペに勝ち受注した案件です。

しかし上記の研修会社様が提案をしていた「社会人基礎研修」がお客様社内で評判が高く、それを上回るプログラムの開発をすることが、受注の条件でした。

<すごい開発バイブル まとめて読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル


①商品設計段階での迷走

社会人の基本100本ノックの思い出といえば、企画段階での迷走です。
営業・受注段階で「ビジネスマナー以前に社会人として重要な倫理・モラルを学ぶ」「シミュレーション形式の演習を通じて深い内省の機会を作る」という大まかな方向性は見えていましたが、それを形にするのことに苦しみました。

受注が決まった段階で、落合社長、「無敗営業」高橋浩一さん、営業Nさん、そして私の4名で商品構成を検討する企画会議を実施しました。
その時の議事録が手元にありますが、今から見返してもひどく議論が迷走しています。

2008年11月9日のメモを見返してみると・・・、当初は「働くことの基本100本ノック」という仮タイトルが付けられていました。

メモの一番最初には、


Keyとなるポイント:
対社会:社会人としての自覚を持ち、約束を守る
対人:どこまでも、相手を思いやる
対仕事:相手の立場になって、自ら考え行動する
対自分:できるまで、やり続ける

と書いてあります。

最終的に完成した社会人の基本100本ノックのラーニングポイントに、近い概念が記載されているのですが、実は「対社会~」等という部分から考えていました。
それはなぜかというと、コンペティション時の競合企業様のプログラムをベンチマークにしていたためです。かなり引っ張られてしまったという印象です。

(競合プログラムの「社会人基礎研修」の学びのポイントは、
「対仕事:ミスなく仕事する」
「対顧客:お客様を大切にする」
「対社会:社会のルールを守る」
というように場面別の学びのポイントになっていたかと認識しています。)


②ブレーキではなくアクセル

方向性が固まらなかったこの日の議論でしたが、一つだけ開発チームの方針として見えたことがありました。

前述の研修会社様のラーニングポイントは、全体的に「やってはいけないこと」を学ぶものになっていると、私たちは認識しました。つまり新入社員の行動にブレーキをかけるもの、という風に捉えることができます。

この点については、アルーはどうなのかという議論になりました。

アルーの研修としては「してはいけない!」というブレーキではなく、「こういう良い行動をもっとしてください!」というアクセルでありたい、ということが開発チームメンバーに共通する意見でした。

それは「自分から動くことで人を動かすリーダーシップ」にも通じる主体性開発の観点から、なるべく行動を後押しする研修を創りたいという私達の想いでした。

その日は私が持ち帰りコンセプトを検討することになりました。当時の自宅近くの東京の四谷三丁目のスターバックスコーヒーに篭って、企画検討をした記憶があります。

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(※スターバックスコーヒー四谷三丁目店)

休日のスターバックスコーヒー四谷三丁目店は、午後になると地元の方を招いてミニライブイベントが開催されたりする洒落たお店です。活気のある地元ミュージシャンの音楽を聴きながら、進め方を考えました。

結局、その日は思考が進みませんでした。商品コンセプトを延々と考えても仕方がない、まずはラーニングポイント調査をしてから、改めて商品コンセプトを練ることが早い。というのが私の結論でした。


③ラーニングポイント調査と絞込み

スターバックスコーヒーを後にし、近くの書店に入り新入社員の心構えに関する書籍を10冊ほど購入しました。
いつもの開発の最初のアプローチである「書籍の目次の書き写し」に取り組んでみました。しかし、新入社員向けの心構えは過去にいくつも研修プログラムを創っていることから基本的に知っていることばかりでした・・・。

どうすればいいかと悩んでいたところ、一つ閃きました。

購入した10冊の書籍で語られていることを全部書き出して、それを既存研修プログラムで扱っている部分とそうではない部分で切り分けていくことです。

例えば「PDCAサイクル」や「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」はプロフェッショナルスタンス100本ノックで扱っています。
会社の仕組みについては、会社の基本100本ノックで扱っています。
挨拶、言葉遣い、名刺交換、職場のルールはプロフェッショナルマナー100本ノック・・・。

そのように整理をしていくと、見つかりました!これまで他の研修プログラムで扱っていない部分で、かつ社会人の最初の心構えとして本当に大切な部分が。


そこで出てきたのが「自立する」というシンプルなキーワードでした。

「社会人とは自立した存在であり、自立することを目指そう!」という核になるメッセージが見つかりました。

このメッセージは世の中にある情報を地道に収集して分析していったことと、直感的に重要であると私が感じてことの掛け合わせで出てきたコンセプトワードです。

「自立する」というメッセージが出来てからは早く進みました。
お客様の与件である「モラル」に加えて、「責任感」、「他者を尊重する」ということ、「主体的に貢献する」という4つのサブポイントにラーニングポイントを整理することができました。これらも調査の中で見つけた、他プログラムで扱っていなかったポイントでした。

「自立する」とこの4つのサブポイントの対応は、我ながら芸術的だと思っています。自立するが目標、4つのポイントはその手段という形に整理したのはマイセンスです。
(※後年、ある方から「アルーの100本ノックは、研修の学びを網羅的に調べたうえで『大胆に絞り込み』をしているのが特徴ですね」と言われたことがあります。嬉しいメッセージでした)


4つのポイント「モラルを守る」「責任感を持つ」「相手を尊重する」「周囲に貢献する」は、語感にかなりこだわりました。

簡潔かつキャッチーな語感を持った強いメッセージでなければ受講者の記憶に残らないからです。また4つの並びにもこだわりがあります。基本を守る(ブレーキ的要素)から始まり、順を追う毎に行動を促す(アクセル的要素)になっています。

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④クライマックスは体感型ゲーム演習

ラーニングポイントの絞込みができましたので、次のステップは演習開発でした。
社会人の基本100本ノックは、前半に「ガツンとショックを与える」提案シミュレーション、後半に4つのポイントを学ぶ演習という構成にすることは提案段階から決まっていました。

演習づくりで苦戦したのはノック4本目「周囲に貢献する」に関する演習でした。

元々ケーススタディを用いた演習にしようかと考えていましたが、チームでの議論結果「最後は体感型のゲームにしよう」ということになりました。ケーススタディで1日のプログラムが終了するより、盛り上がりと一体感がある体感型ゲームの方が望ましいためです。研修は参加型のエンタテインメントです。クライマックスが盛り上がることは大切です。


さて、では盛り上がる体感型ゲームはどのようなものにしようか?

ここでの教訓はゲーム型演習は完全にゼロベースで開発するよりも、世の中の上手く行っているゲーム型演習にオリジナル要素を加えてアレンジするのがよいということでした。

当初、開発チームで多数のオリジナルゲームを考えたのです・・・・散々なものばかりでした。途中から体感型ゲーム演習を多数紹介する海外のWEBサイトからネタを探して、休日にトライアルをやってみる等、ネタ探しの方向性にチェンジしました。

最終的に、自分から動くことで人を動かすリーダーシップ100本ノックで開発をした「ラインマネジメントゲーム」の改良バージョンである「パズルマネジメントゲーム」を作る形で落ち着きました。

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実はラインマネジメントゲーム自体も元ネタがあるゲームでした。それをアルー流にアレンジしたものです。パズルマネジメントゲームは、元ネタのアレンジ版の再アレンジという経緯をたどって生まれた演習でした。

完成した社会人の基本100本ノックは、シンプルながら強いメッセージを発信するとても良いプログラムに仕上がりました。


⑤初期顧客よりも前に実績ができる成功事例に

営業担当Nさんが受注をしたIT企業様の納品は2009年4月後半でした。しかし、それより前に5社のお客様で先に納品があったのもこのプログラムの思い出です。

当時のアルー関西支社のHさん、Iさんが中心となり、社会人の基本100本ノックが出来上がったタイミングで様々なお客様に提案をしていただきました。その結果、立て続けに導入が決まり、初期顧客であったIT企業様より先に5社のお客様で実施することになったのでした。

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その後、現在では「面接シミュレーション」と組み合わせて2日版研修としてお客様に紹介をすることができるようになりました。

強いインパクトを持つ「面接シミュレーション」を1日目に、社会人に必要な骨太な心構えである「自立する」を2日目にじっくりと学ぶ強力なプログラムとなっています。

この2日版開発にあたり、サブ講師数の見直しを図ったことがよかったと感じています。本プログラムは前述のノック4本目のパズルゲームなど、サブ講師が必要となる部分が複数あります。しかし人手が必要となる研修はオペレーション負荷やコストが高くなりがちです。
サブ講師は出来る限り必要にならないように、開発段階から工夫をするべきですね。

社会人の基本100本ノックは、新入社員向け研修プログラムとして元々あった「プロフェッショナルスタンス100本ノック」と合わせて、アルーの代表的商品の一つとなっています。


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社会人の基本100本ノック 開発における教訓


DNA56:アルーの研修は「ブレーキ(してはいけない!)」だけではなく「アクセル(こうしよう!)」でありたい
競合他社の研修はブレーキの要素が強いと認識した
アルーの研修は、望ましい行動を推奨するアクセルの要素を強くした

DNA57:キーラーニングポイントは、簡潔かつ強いメッセージで受講者の記憶に残す
「自立する」「モラルを守る」「責任感を持つ」「相手を尊重する」「周囲に貢献する」というシンプルかつ記憶に残るメッセージを作成した

DNA58:クライマックスは盛り上がる演習にする
1日の最後の演習は、体感型ゲームで盛り上がる形にした

DNA59:体感ゲームは完全オリジナルで作るよりも、既存のゲームをアレンジする方が出来がいい
ラインマネジメントゲームを改良して、パズルマネジメントゲームを作成した

DNA60:サブ講師はできるかぎり必要にならないように工夫する
社会人の基本100本ノックを2日版に改定するにあたり、サブ講師の必要が無いように工夫した

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よろしければ、続きの記事もご覧ください!

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本noteでは別途アルーの創業からの歴史をまとめた「スタートアップ企業としての営業組織づくりノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

<「スタートアップ営業組織作りの教科書」をまとめて読むには↓>

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