心に届けるために、大切なことは? 佐藤尚之さんと佐渡島庸平さんが語る『ファンベース』の本質について。
こんにちわ。IKEUCHI note 編集員の井手です。
「IKEUCHI ORGANICは、ファンになってくれたお客さんと一緒に成長してきた。」
池内代表をはじめ、多くのIKEUCHI ORGANICスタッフが語る、この言葉。
2003年、取引先の倒産の煽りを受けて民事再生をした際に、「がんばれ池内タオル」という応援サイトをファンの方々が自主的に立ち上げていただいたり、ファンの方々の応援と愛がIKEUCHI ORGANICを支えてきたといっても過言ではありません。
そんなIKEUCHI ORGANICが、これからの未来を創る上で大切にしていきたい考え方があります。
それが『ファンベース』というもの。
企業やブランドが大切にしている『価値』を支持してくるファンを大切にし、そのファンの方々と一緒に、創っていきたい未来の実現を目指すこと。
IKEUCHI ORGANICでは、こういう風に理解しています。
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10月5日・6日の2日間、東京・二子玉川ライズにて、ネットショップの運営支援サービスを行う株式会社アイル主催の『バックヤードフェス2018』が開催され、IKEUCHI ORGANICも出展させていただきました。
『バックヤードフェス2018』とは、「ECのドキドキ感をリアルに感じる。バックヤードが主役のイベント」というコンセプトを掲げ、Web店舗を軸に商品を販売している企業が、2日間限定でリアル店舗を構え集結するイベントです。
このバックヤードフェス2018にて、ファンベースについて理解を深めるのに大きな影響を与えてくれているお2人のトークイベントが開催されました。
1人は、著書『ファンベースー 支持され、愛され、⻑く売れ続けるために ー』などを通じて、この考え方を教えてくれたコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さん(以下、さとなおさん)。
実は、さとなおさんはIKEUCHI ORGANICのタオルをご愛用いただいておりまして、今年の今治オープンハウスにもご参加いただきました。
もう1人は、漫画『バガボンド』、『宇宙兄弟』などの数多くのヒット作品を編集し、コルクという作家エージェンシーの代表もされている佐渡島庸平さん。昨年、同社がエージェントを務める羽賀翔一さんが作画を担当した『君たちはどう生きるか』の漫画版が大ヒットしました。
佐渡島さんやコルクの皆さんとも、宇宙兄弟のバスタオルやタオルケットをIKEUCHI ORGANICで製作させていただくなど、親交を持たせていただいております。
IKEUCHI ORGANICがよりファンベースな企業を目指していくために、縁がある2人から学びたいということで、阿部社長含め、IKEUCHIメンバーで聴講してきました。
とても学びになることが多く、今回のnoteでは、僕らが印象に残った部分を中心にトークイベントのレポートをお届けします。
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そもそもファンとは、何なのか。
佐渡島さん:まずは、電通で広告という仕事をずっとしていたさとなおさんが、『ファンベース』という考え方に至った経緯から聞かせていただけますか?
さとなおさん:そもそも広告って、相手の気持ちを考えずに、一方的に情報を押し付ける一面があると思うんですね。昔はそれでよかったのかもしれないけど、これが通用しなくなってきた。
そこで、相手の気持ちをきちんと考えて届ける『コミュニケーションデザイン』という考えに辿りついたのだけど、様々な情報が溢れる現在では、これでも届けるのが難しいとわかってきました。
そして、結論としては、自分の価値観が近い友人・知人を介してであれば、この情報過多な状態でも、届くのではないかと思うに至りました。
自分たちを支持してくれているファンの方々を大切にし、彼らが自分と価値観の近い友人に薦めていってくれる。こういう流れをつくることが大切だと。
佐渡島さん:なるほど。そこでいうと、さとなおさんがおっしゃるファンというのは、どういう方々のことを指すんでしょうか?
さとなおさん:僕は商品を、ただたくさん買っている人はファンとは限らないと思っています。
その商品の裏側にある考え方とか、その企業が持っている志とか、背景を含めて支持してくれている人たちのことをファンと呼んでいます。
佐渡島さん:ファンを大切にするための第一歩として、やった方がいいと思われることはなんですか?
さとなおさん:共感・愛着・信頼という感情をつくっていくことだと思います。
共感とは、「あぁ、こういう感じ好きだなぁ」と共感して使ってくれている方々の意見を傾聴し、改良・改善を加え、その共感の感情を強くするということです。
愛着は、「他に代えがたい」「ここではないと」と思っていただくような感情をつくること。例えば、商品にストーリーやドラマを纏わせたり、ファンとの接点を大切にすることで、愛着を生むことができるのではないかと思います。
最後の信頼とは、どちらかというと商品をつくっている会社や人のことで、「この人たちが作っているなら大丈夫」といった評価や評判を高めていくことです。
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まず、型が大切。型を破ってこその個性。
佐渡島さん:さとなおさんは、ラボという形で、こういったことを教える活動もされていますよね。
そういう活動を始めようと思われたのは、なぜでしょうか?
さとなおさん:広告や広報って、「先輩の背中を見ながら盗め」みたいな風潮が強いんです。体系立てて教えてくれることが、あまりない。
僕は商品だったり、企業が存在する意味は、生活者が持っている課題を解決することだったり、生活者を笑顔にすることだと思っています。
それを実現するためには、いきなり属人的なプレーに走るのではなくて、まずは型を身につけることが大事だと思うんです。
その手助けをするために、僕が約30年間やってきたことを共有するという姿勢でやっています。
佐渡島さん:確かにそうですね。今、個性が大事だと言われる中で、型を身につけることがダメってなりすぎている気がしますね。
さとなおさん:そう。僕は個性とは”型破り”だと思っていて、最初に型がないとダメだと思うんですよね。
よくレストランで例えるんですけど、創作料理ってあるじゃないですか?
あれって、型がある人が、それを破って創作料理をやると美味しいんですよ。
でも、型がない人が、いきなり創作料理をやり始めると、ほとんど美味しくないんです。思いつきの、芯がない味になりがちなんです。
佐渡島さん:しかも、そういう人たちって、自分は「これは和食だ」とか思っているんだけど、食べた人からすると「これは和食じゃない」って評価されて、創作料理と呼ばれるようになるんですよね。
食べたこっちが枠を超えていると思うのであって、やっている本人たちは自分は何の型をベースにしているのかを明確に持っているんですよね。
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ファンとの触れ合いで感じた気づきを一般化する。
佐渡島さん:『ファンベース』の書籍を出版されたのが今年の2月ですよね。 本を出されてから気づいたことはありますか?
さとなおさん:本を出してから、実は100回くらい講演をしているので、その中で沢山の質問をもらってきました。そこで気づいたことがあります。
みなさん、自分たちのファンを特定して、ファンコミュニティをつくったりして、数十人とか100人くらいのファンの方々と深く付き合っていくことがファンベースだと思ってしまっている。
もちろん、コミュニティでファンの方々と接する中で、どういったところをファンが支持しているのかや、どういうことをファンが求めているのかをつかむことは大切です。
でも、それを一般化して、コンテンツにしたり、顧客接点を改善したりと、他の施策に活かしていくことが重要なんです。
ここがあんまり伝わっていなかった。
佐渡島さん:それは、すごく理解できます。
僕らもファンコミュニティを作ろうとした時に、コミュニティを担当しているメンバーが、コミュニティの十数人とずっと連絡をしているだけで仕事をしてるみたいな話になってしまうことがあって、そういうことじゃないよなぁ…と思うことがあります。
ファンの声を傾聴しながら、それを一般化して、どうやって繰り返していくのかってことが一番大事ですよね。
さとなおさん:そう、それが本当に大事。
でも、それ以前に、ファンが怖いという人も実は多いんです。ファンに声をかけるのに勇気がいるという人が本当に多くいます。
相手は、好きで好きで、その商品やブランドについて話したくて仕方がないのに。
佐渡島さん:でも、それは、その本人が自分が関わっている商品のファンになれていないからかもしれない。
自分が、本当のファンになれていないから、ファンの人たちと話すときに、会話がちゃんとできるか不安なのかもしれないですね。バレてしまうという恐怖が強いんじゃないでしょうか。
ファン同士のミーティングにならないから避けてしまう。負い目があるから、ただただファンの声を聞くと言った感じになってしまっている気もします。
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心に届けるためには、文脈が必要。
佐渡島さん:僕は、注意を引くタイプのコンテンツと、受け取った人の感情を動かすタイプのコンテンツがあるなと思っているんですが、さとなおさんにとって、その違いって何でしょうか?
さとなおさん:まず、コンテンツって、内容だけではなくて、その届き方も含めてコンテンツだと思うんです。
そして、感情を動かすコンテンツというのは、文脈が伴うコンテンツだと僕は思っています。
例えば、佐渡島さんから紹介されたコンテンツは、「佐渡島さんが、なぜそれを紹介したのか?」という興味や関心も乗っかってくるので、佐渡島さんの文脈が加わっているコンテンツですよね。
店頭で、パッと見て買うだけだと、その文脈はつかない。
だから、ファンベースの話をする時によく云う『友人を介すと伝わりやすい』というのも、そういうことで、友人の文脈が乗っかってくるから感情が動きやすいんです。
今年ヒットした映画『カメラを止めるな!』もそうで、映画の内容そのものも素晴らしいんだけど、友人のクチコミを介して、友人の文脈が伴って見に行くから、より記憶に残るのではないかと思うんです。
佐渡島さん:そう言われてみれば、ヒットした漫画版『君たちはどう生きるか』もそうで、親や友人からもらったという声を聞くことが多いんです。
そもそも本は、それ自体のメッセージ性が強いんだけど、さらに人から渡されると、それを渡した人の文脈が乗っかるので、とても強いメッセージになりますよね。
僕らの会社のビジョンが「心に届ける。好きを熱狂に」なんですが、心に届けようと思うと最高のコンテンツを作るだけでは絶対にダメで、その届け方まで考える必要があると常々感じています。
さとなおさん:そうですね。心に届けようとしたら、価値観の近い誰かを通じて届けることが本当に大事だと思います。なぜなら、そこには共感があるので。
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何かをすごく愛させるという価値。
佐渡島さん:僕もファンコミュニティをやりながら、ファンのツボのようなものを知ろうと考えるんですが、でも、実際これってすごく難しいですよね。
自分の妻のツボを知ることすら難しいのに(笑)
結局、相手のツボを知るということを考えると、限りなく人間力を上げるみたいなことに近づいて行くと思うんです。
さとなおさん:いや、本当にその通りで、ファンの声を受け取る側の人間性が問われるので、本当に難しいと思います。こればかりは、わかりやすく体系化できない。
時間をかけて、手間をかけて、汗をかいて…。そういったことができないなら、ファンベースなんて考えない方がいいと思います。
佐渡島さん:僕なんかは、ファンの声を聞くのではなくて、自分自身がまずは圧倒的なファンになるように練習するんですよ。
そして、「何で自分がファンになれたのか?」、「どこがツボだったのか?」を考えて、自分と同じような人がいるんじゃないかと想定し、毎回施策を打つんですよね。
さとなおさん:それは、全く素晴らしいですね。広告業界も、昔は自分が担当する商品を徹底的に愛してみるところから始まっていました。
佐渡島さん:そう考えると、さっきの人間力的な意味でも、何かをすごく愛することができるということ自体が、そもそも大事なのかもしれないですね。
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以上、さとなおさんと佐渡島さんのトークイベントの内容をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?
思い返せば、僕とIKEUCHI ORGANICとの出会いも、「この人たちの価値観、素敵だなぁ」と思う方々がIKEUCHI ORGANICのタオルを愛用していて、彼らの文脈があったからこそ、深く心に届いたのだと思い返しました。
共感され、愛着を感じていただき、信頼される。
そんな会社が世の中に増えていってもらいたいと思いますし、IKEUCHI ORGANICもそういう会社であり続けて欲しいと思います。
これからのIKEUCHI ORGANICが楽しみです。
Text & Photo:井手桂司
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