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[2023.10.06]密室づくりが仕事のぼくは、宮崎を訪ねて気分がいい

夜が明けるのがずいぶん遅くなった。
9キロのナップザックを背負って夜明け前の鎌倉を駅まで1時間弱かけてゆっくり歩くつもりだった。
朝が早いとバスがまだないしタクシーも呼んでも来ない。普通に歩けば40分だが、荷物も多いしゆっくり歩こう。と、思っていたが、数日会えない猫猫犬との別れを惜しもうとしたろころ小さい方の猫が見つからない。どうしても一目見たくて家中探して見つけ出し無理矢理頬擦りしたりしていたため、結局乗りたい電車に向けて早足で歩かなくてはならなくなった。

6時過ぎに羽田空港に到着。こんなに早い時間でも東京方面に向かう電車は多くのちゃんとした仕事着の人々で混み合っていた。本当におつかれさまです。
搭乗便からするとこんなに早い時間に来なくて良いのだけれど、空港が好きすぎていつも早く着いてしまう。朝が早すぎて開いてるお店も限られているが、ひとしきり一回り空港を散歩して、お弁当を買って早めに手荷物検索を済ませ、飛行機がよく見えるロビーで秋の炊き込みごはん弁当を広げる。一口食べてお茶のペットボトルを開けようと隣の椅子にお弁当を置いたら、椅子の角が滑らかな曲線を描いており、見事に180度ひっくり返って滑り落ちた。誰もいなかったので何事もなかったように拾って食べる。とても美味しい。こう言う時、育ちの悪さに感謝の気持ちが湧く。

飛行機に乗るのは久しぶりだったが、手荷物検査で携帯とPCを出さなくて良くなっていたのと、緊急避難時にスマートフォンで撮影をするなという注意が増えていた気がする。前からあったかな。

9時過ぎ、宮崎空港に到着。初めての宮崎。
これでまだ行ったことのない都道府県は、秋田、山形、富山、滋賀、鳥取、島根、広島、徳島、大分の9県。早く行きたい。
これまたひとしきり空港を回る。帰りに奮発して宮崎牛を買うぞと誓うが、高い肉を自分で上手に焼けた試しがない。
空港でいくつか会議して、隙間の時間で市内に移動。空港から市内が近いと、なんだかうれしい。
ホテルに荷物を置き、また道端でしばらく会議。そのあと目的地のひとつ、宮崎キネマ館を目指す途中で、ものすごく味のあるひなびた路地を見つけたので、Googleマップの指示に背いて曲がってみる。好みの路地の突き当たりには、赤と白のストライプのファサードがグッと来る外観の飲食店が佇んでおり、近づくとそれは「味のおぐら」であった。え!あの!チキン南蛮発祥の店!行きたかったところだ!と、駆け込む。
偶然辿り着けたおぐらは、まだ昼前だがほぼ満員だった。2階に案内される。コンパクトで天井が低くやたら段差が多い昭和建築そのものの店内もものすごく好み。
胸肉のチキン南蛮は思いのほかさっぱりしていて、飲むように一瞬で食べてしまった。好きな食べ物何?って聞かれたときに真っ先には出てこないけど、タルタルソース、すごい好きだ。添えられているケチャップ味の結ばれたスパゲッティも最高だった。

思いがけずありつけた大満足の昼食後、宮崎キネマ館に向かう。
早稲田松竹みたいな昭和建築をイメージしていた宮崎キネマ館は、おぐらとは逆に平成モダンって感じの洒落た建物で、一瞬気付かず通り過ぎてしまった。「猫と、とうさん」を鑑賞。
男は犬を飼うものだ。猫を飼う男はCat Dadと呼ばれて変人扱いされる、という前提にまず驚いた。さまざまな境遇の男性と、そのパートナーの猫の生活と関係性を描くドキュメンタリーだったが、この数年で起きたコロナやアメリカの大規模な山火事、格差社会のことも、思いがけずなのかもしれないがありのまま映されていて、猫を通じて他者への優しさや、自分自身のケアについて気づいていく男性たちの姿(または逆にそういったことには一切気付かぬまま猫を自身のステータスのために飼い慣らそうとする姿)が描かれていて、期待よりずっと面白かった。特にジョージアからアメリカに来て職を失い、路上生活をしている最中、瀕死の猫を見つけて看病し、以降生活を共にしているデヴィッドとラッキーの話は身につまされた。
猫を自身のステータスのために云々などと批判的に書いたそばから、うわ、自分だってここに猫の写真あげてるじゃん!何が違うんだ。と、みっともない気持ちになった。



なんか好みの古着屋さんがいくつかあるなと後ろ髪を引かれつつ、荷物を増やしたくないので我慢。ホテルにチェックインしてまたしばらく仕事。暗くなりかけた頃に「クレイトンハウス」を目指して1時間ほど歩いた。
バナナマンのせっかくグルメでなつさんが行ってたから絶対行くと決めていた。そう、夕飯もチキン南蛮だ。
おぐらとは完全に趣の違う、上等なファミレスといった風情の店構えで、入るとすぐケーキのショーケースがあったので、最初、あれ?店間違えたかなと思った。

ノーマル、梅、バジルカレー、明太の4種類のタルタルがたっぷり乗せられたチキン南蛮と、生卵の乗ったおしんこピラフ、それにサラダとスープとアイスティーと季節のタルトがついて1400円くらいだった。大体アレンジされたものは定番に敵わないものだよねとたかを括っていたが、どのタルタルもすごく美味しい。そして何より、おしんこピラフが信じがたい美味さ。関東に出店してほしい。

その後、ニシタチのスナック入り口に行ってみたけどまだやってなかったのでいったんホテルに帰ってまた来るか、と言うつもりが21時前に完全に寝落ち。
眠くなる直前まで何かしている普段の生活様式と、生来のものぐさがかけ合わさって、ホテルのベッドのぴっちり敷かれた掛け布団をめくって布団に入って眠れたことがほとんどない。悔しい。
主にチキン南蛮食べてただけなんだけど、純粋な旅行が久しぶりで、とんでもなく楽しかった。旅ってもう、ただなんにもしないでも知らない街を歩いてるだけで最高のエンタテインメントだなあ。ピーマン食べたい!



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