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[2023.10.08]密室づくりが仕事のぼくは、大分の夜に閉じ込められた

朝、朝食バイキングでたっぷり冷汁を堪能。
冷汁と言う名の具沢山味噌汁にツナと生のきゅうりや薬味をぶっ込んだものを、冷ますのも待てず温かいままご飯にかけるもの、が唯一と言って良い自炊レパートリーであるくらい、冷汁が好き。
味噌汁冷たくしてきゅうり入ってるとか意味わかんない。味噌汁でいい。とか言ってた冷汁を食べる前の自分を殴りたい。冷汁と味噌煮込みうどんは、食べるまで誤解してた2大好物。

宿を出たら夜降り出した雨は土砂降りになっていた。
旅に出るたびに、雨が降るということを考慮に入れられない。
いつの間にか靴に穴が空いていて靴下がびしょびしょになる。この世の不快なことの中で、靴下が濡れるのいちばん嫌いと言っていいくらい嫌い。ひとときも我慢ならない。
にちりんという電車で、昨日とは逆の北に向かい大分を目指す。
3時間半、またゆっくり読書でもするか、と思いきや爆睡して一瞬で到着。
これでまだ行ったことのない県は秋田、山形、富山、滋賀、鳥取、島根、広島、徳島の8県!
九州に来ると、関東では見ない華丸大吉の生き生きとした華々しい広告がたくさんあるのでついついポスターを写真に撮ってしまう。見返すことなんてないのに。
夜、旅館でローカルニュースを見ていたら、自分の到着と数分違いで大吉さんが大分駅でPR活動をしていたらしい。それがニュースになるのも九州ならではで良い。会いたかったな。

大分で福岡や鹿児島で仕事をしていた人たちと数年ぶりの再会。
自分が仕事で関わっているモノが、東京から遠く離れた場所で、全く見ず知らずの人たちに遊ばれいて、それを何年も会っていない人たちがこんなにも熱心に高品質でお客さんに提供してくれている、ということに、毎回いたく感動する。
感動した、っていう感想は、特に思うことのない時の逃げだと思ってたりもするんだけど、でもこの時に感じる感情は感動以外の言葉では言い難い。
もう二度と、不要不急のもの、どんな場面でも排除されない世の中であるように、して行きたい。
大分駅前にラグビーのパブリックビューイングの特設会場が作られていて、そうか今日は予選最終戦か。と気づく。

別府温泉に移動。と思いきや、予約した旅館は亀川という駅で、別府とは少し離れていた。とても寂れた街で、旅館までの道すがらすれ違った数組の人が、全てヤンキーカップルで一抹の不安とびしょ濡れの靴下を抱えながら歩いていると、到着目前にかなり大きな廃墟があったり、血の池地獄この先と書いてあったりで、後で見に行ってみるかとワクワクする。

温泉旅館に泊まるなんていつぶりだろうと振り返ったらコロナが始まってすぐ箱根に支援のつもりで行って以来だから3年ぶりくらい。あの時は3年A組青春高校の出演者がたくさん泊まってて密やかに興奮してた。好きだったな3年A組。なんか方針変わって途中から見なくなってしまったんだな。

チェックインを済ませ、濡れた靴を乾かしながらディアトロフ峠のWikipediaを読んでたら、そっち方面の興味が続々と湧いてきてしまい色々な動画を見始める。と、突然部屋の電話が鳴る。
ビクっとしながら出てみると、5時だった食事を7時半に変えてくれないかと言われる。ああラグビーに間に合わないなと思いながら了承する。
急にできた2時間半で廃墟か血の池地獄に行くか、と思うが靴も濡れてるし雨も止まないしすぐに諦めて、また遭難事故の話ばっかり見てしまう。

夕飯が絶品の宿!ということだったのでかなり楽しみにしていたが特に美味しくなかった。本当に特に美味しくなかった。全然不味くはないんだけど、特に美味しくなかった。ただ給餌をしてくれるスタッフの青年が、新入りなのかものすごく緊張していて、初々しくてとても和んだ。

部屋に戻りラグビーを観る。日本は負けてしまったけどとても面白かった。その後仕事したりなんだかんだしていたらもう23時過ぎで、そうだ温泉が24時までだった、と慌てて大浴場へ。
正直なところ、温泉を楽しむ資格と、蕎麦を味わう資格を持ち合わせていない。温泉は硫黄の匂いがするとかしょっぱいとかくらいの違いしかわからず、入浴後の効能を感じられたことも特にない。
そばも、これは美味しい蕎麦ですよという蕎麦屋の高い蕎麦も、富士そばも、コンビニのそばも、カップそばも、一様に全て美味い。
別府と言えば日本でも有数の有名温泉であるが、この日もやはりそのお湯の良さみたいなものはわからずにとりあえず雨に打たれながら露天風呂に入っていた。

すると誰かが洗い場に入ってきて、公共の場とは思えない音量で熱唱しながら体を洗っているようだった。洗い場から露天風呂が見えないし、この時間でもう誰もいないと思ったのかもしれない。
歌声の主は依然歌い続けながら露天風呂に向かってきた。気まずい。どうしよう。と思いながら対面してしまったその人は、給餌してくれていた青年だった。なんとなく打ち解けてちょっとだけ露天風呂で話す。この数分のおかげで、温泉以上にとても心がほぐれてよかった。

とてもいい気分で部屋に戻ると、電気がつかない。テレビもつかない。洗面所の電気もつかない。あちらこちらパチパチオンオフしてもうんともすんとも言わない。フロントに助けを求めに行くと、直しに行くからちょっと先戻っててと言われる。部屋に戻り、ドアを開けっぱなしにして暗闇で待機していると、突然カチッと音がして全ての電気がつき、存在していることも気づいていなかったラジオが大音量でザーっとなる。ストレンジャーシングスの、あっち側との通信みたいな感じで、怖くて必死に切ろうとするが全然切れない。どうにかこうにかラジオを切れたタイミングで宿の人が部屋に来て、ブレーカーの不具合でしたと説明される。

眠りにつくとすぐに部屋のドアがガチャガチャと鳴る。
また宿の人かなとドアを開けに起きようとするが金縛りで動けない。
ドアを勝手に開けて誰かが入ってくる。怖い。
でもここでこれは夢だと気づく。起きなきゃ起きなきゃ。
ようやく目が覚める。
目が覚めるとすぐに部屋のドアがガチャガチャと鳴る。
開けに行こうとするが金縛りで動けない。
ドアを勝手に開けて誰かが入ってくる。どうやら人ではなさそうな何かだ。怖い。ここで夢だと気づく。起きなきゃ起きなきゃ。起きないとこのループに閉じ込められてしまう。

朝までこの悪夢の無限ループで、全く疲れが取れないどころか、本当にちゃんと起きられた時には疲労困憊していた。

きっと遭難事故ばっかり調べてしまったせいだ。
別府、今度はもっとちゃんと調べて、良い温泉旅館とラクテンチと高崎山公園にと地獄めぐりをしに来たい。

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