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寂しいから自転車漕いで夕陽を見たらお腹減った話
1年前、パニーニ屋の友だちから連絡が来て、「今、日本人の女の子が来ているんだけど、イタリアに到着したばかりで、誰も知り合いがいないから、君のことを話たよ!会ってあげて!」と。確かにFacebookを見てみると、知らない人から友だち申請とメッセージが。そしてすぐさま「会いましょう」と返信。社交辞令ではなく、すぐに日にちを決めて会った。
最初は丁寧語で話していたけれど、年齢の話になり、なんと同学年だと分かったら、無条件で意気投合。時間が足りないくらい話した。
彼女は、アメリカ人と結婚していて、短くて3年毎に転勤しているとのこと。イタリアには半年前に来たばかりで、コロナの影響で身動きが取りにくい中、やっと散策できるようになったとか。
出会った当初の気持ちをnoteに綴っていた。
それから頻繁に会い、料理を作ったり、買い物をしたり、運動したり、外食したりと、息子ちゃんのお迎えまでの時間を有意義に過ごしてきた。
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テーブルセッティングが素敵
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彼女との思い出は、いつでもどこでも食べ物と結びついている。会うと食べない日はない。食を通して意思疎通を図っているのかもしれない。
突然の告白
昨日、彼女からメッセージが届いた。
「イタリア滞在は残り一年」
延長申請が通らず、次の夏に新しい場所へ転勤しなければなら
ないとのこと。
もう、一年後のことを想うと寂しい
まだ一年も先の話なのに。これまでの日々が楽しすぎたから、これがなくなるのかと思うと、辛くて悔しくて居た堪れない。感情を抑えることができず、自転車で出かけた。ひたすら漕ぐ漕ぐ。行く宛てもなく走らせる。
街を抜け、海岸通りへ
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少し海を眺め、
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新しくできた道を通り、
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このまま帰りたくない…
夫に電話。
海べでアペリティーヴォしようと誘う。
アペリティーヴォとは、食事の前にお酒とおつまみで軽く乾杯すること。空腹で食事するのではなく、少しお酒で胃を刺激し、落ち着いたところで夕飯にするというもの。
彼は夜に、バンド仲間との練習があり歌の準備していたけれど、すぐ海まで駆けつけてくれた。こんな時の彼の行動は素速い。ただ外食となると喜んで出かけるだけなのかもしれない。
夕陽が見えるところに行こうと言ったけれど、「お腹が空いたから、アペリティーヴォじゃ足りない。お肉より、魚介の気分なんだ」と。おやっ?あんた、レストランへ行く気満々だな。思ったと同時に、私はふさわしい格好をして出てきていなかったので戸惑った…
ちょうど話し合うために立ち止まった場所が、たまたま魚介のレストランを営む友だちのお店の前。もう決まったも同然。急遽立派なディナーをすることに。
夕陽の見える場所に座らせてくれた。
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まもなく時刻は21時。太陽が沈もうとしている。明るいうちの外の席は特別感が高まる。
悲しみであまり食べたい気分じゃないから、前菜とサラダでいいと言う私とは反対に、夫はどんどんと注文していく。どこにそんな余裕があるんだ…なんて思いながら、私は「今、財布を持ってきていないからね」と念押し。誘っておきながら出さない宣言で先手を打った。
「ここずっとタコが食べたかったんだよねぇ〜」と夫は、メニューに載っていないタコを注文。それでも出てくるんだからおもしろい。
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想像以上の美味さに目がグッと開いた。ただ茹でて味付けを簡単にしただけなのにウマし。少しのピリ辛がアクセントになって心地いい。
私はムール貝を、夫はさらに魚介が乗ったものを頼んだ。
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魚介はキウイやオレンジを彩に使う
よくレモンを添えてくるが、ライムを合わせるところがニクイ。いつもと違った味わいとなった。
この後、私はサラダで軽めにし、夫はアサリのリングイネを食べた。アルデンテでソースが濃厚で最高。夜はパスタやご飯を食べないようにしているが、お腹がハチ切れるまで味わいたいと思った。
最後はやっぱりドルチェで自分を癒す。
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ティラミスのようで少し違う。柔らかいクッキーとマスカルポーネのクリームを重ね、ザバイオーネという卵黄のクリームをかけている。
夫が「これ、リキュールが入っているょ!」と何度も言ってくる。私は少しのアルコールにも反応してしまう。これくらいなら大丈夫そう!とペロッと食べた。
二人で笑いながら夕飯を満喫。
食事の最中は悲しみを忘れることができた。
優雅に食事をして、ゆっくり自転車を走らせていると、いつもの景色が、私を慰めているように映る。
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…なんて感傷に浸ってる場合じゃない!
前で夫が振り返って待っている。そう、彼はバンドの練習があるから一刻も早く帰りたい!夜は危ないから一人にはさせられない。行きたいけれど行けない!もどかしそう。
それから急いで帰宅。夫はすぐさまバンド練習へと行った。私はというと、デザートに使われていた少しのリキュールが回ってきて、すごい眠気に襲われている!昨日の建物に関する記事を書きながら何度も寝落ちし、日付が変わる前に投稿しなければともがいていた。
インスタにも夜の写真をアップ。悲しみに浸っていたが、寂しいのは彼女の方かもしれないと気づいた。
私だけじゃない、たくさんの人とお別れすることになる。しかもそれを数年ごとに行なっているのだから。別れを嘆くより、次の予定を楽しもう。プチ旅行もいいし、パンを焼く会も、マンマの料理教室も、キャンプも、ショッピングも、パリへの女子旅もまだまだやりたいことやできることはたくさんある。
あと一年。濃密なイタリアを堪能してもらうために、私は全力でプロデュースする。そう、
これが私のできること!
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