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【ラジオ】イタリア通信:故郷の味/レシピ紹介/次なる日本語


西日本放送のお昼の生ワイド番組「CHIT CHAT Radio」内にて、
2ヶ月に一度、イタリアから生電話リポートを行なっています。
珍しい文化や暮らしでの発見、イタリアにあるニッポンなどを紹介。

2023年9月に放送した内容をまとめたものです。


ON AIR


Buongiorno a tutti‼︎

話題1:故郷のムラサキ


ラジオ制作として10年働き、イタリアに来て今月丸11年経ちました。
放送やWebでの発信をしつつ、レストランでの仕事を生業としています。

今年の5月にイタリアンレストランに転職。
まさか、Sushi を作る側になるとは思ってもみませんでした。
できるかどうか不安でしたが、ただ目の前のコマを前に進めるのみ。
大繁盛とは行きませんが、コツコツとやっております。


Sushi 食材

いつも、Sushi に使う材料は、経営者のみが購入できる業務用のスーパーを利用しています。
お米、お酢、海苔、ガリなど、今となっては簡単に手に入ります。

その中に、いつもとは違うものがあったんです。
日本食には欠かせないアレ。

なんだと思いますか?


イタリアでは、誰も家庭に常備していないので、隣の人にも借りに行けない。
何度、断念せざるを得ない悔しい思いをしたことか。。。

それは、、、


「醤油」です。


イタリアのスーパーでは、どんな小さな商店でも醤油を扱っています。
一番有名なメーカーは、Kikkoman。

調べてみると、1970年代に販売開始。
1997年にはオランダにヨーロッパ工場ができ、製造・流通が可能になりました。
(流通の拠点は日本人街があるドイツ・デュッセルドルフで管理を行っているようです。)

ですが先日、いつものように醤油の注文をしたら、
キッコーマンではないものが届きました。


そこに書いてあったのが、


太い「丸」に、でっぷりとした「金」の文字。


その名の通り、黄金に輝いている!!




マルキン



思わず涙が出ました。
隣には「小豆島」の文字が!!

ここここれは、私の故郷の醤油だ!!!!!
思わず抱きしめました。

ボトルをすぐに開け、みんなに嗅がせまわりました。
キッコーマンと比べるとどうだッ!と強気で攻める。

すると、料理人たちは皆声を揃えて、
香りが違う!」と。
ほぼ言わせているも同然。でも、

「そやろ〜!(讃岐弁)」鼻息荒く鼻高々!

日本での公式HPの希望小売り価格は、
1L ボトル 448円ですが、
イタリアだと、なんと、


1L あたり約1250円!! 3倍です。

ですが、Kikkoman も同じくらいの値段です。
イタリアに来て、醤油を頻繁に大量に使うことはしません。

ちなみに、日本食を扱うイタリアの通販サイトを見てみると、
パックに入った醤油でお馴染みのアレもありました!

鎌田のだし醤油」!

これも故郷、香川が誇る有名醤油です。

かつて、フィレンツェでの留学時代、東京出身の超美男子が、
自慢そうに日本の美味しい醤油があると出してきたのがコレ。
まるで私が作ったかのように熱弁したのはいい思いです。


こちらの値段も、香川県で買うより3倍の値段!
500ml で1500円!!けど欲しい!!

イタリア人の友だちに贈ったところで味は分かるまい。
それより、自分への誕生日かご褒美に買いたい…


小豆島の香りを楽しむ中、職場では変化が起きています。


話題2:仕事変更とレシピ紹介


Sushi とウエイトレスの契約で始まった仕事ですが、
なんと7月から厨房で働いています。
以前シェフから、「副料理長になって!」と突然告白されましたが、
あれから2人減り、そこを埋めるように私が入りました。
シェフの想いや切願が強いのか、彼女の描いた道を歩んでいるような
不思議な感覚ですが、心地いいものでもあります。
まさか四十路を前に、「料理人」としての歩みを始めるだなんて思ってもみませんでした。


仕事の内容

さて、今行っている仕事は、
Sushi 作り、夕方のお酒とおつまみを楽しむ時間「アペリティーヴォ」という、
ハッピーアワー用の酒の肴を盛り付けています。
ちなみに、どんなものかというと、魚介の専門店なので、

大西洋ニシンのオイル漬け、
イタリアのオムレツ、
アンチョビをパンに乗せたクロスティーニ、
鱈のフリットなど、

4種類をソースやスプラウトなどを盛り付けて提供しています。

このほか、生食用のえび、牡蠣、貝類などの料理盛り付け、
最後にドルチェの盛り付け担当です。

食材は、2人いるシェフが午前中に仕込んでくれます。
それらを、お皿に盛り付けて出すのが私の作業。
一応助っ人として、飾りに使うソースやクリームなどは
一人で準備できるまでに成長しました。


簡単レシピ紹介

ではここで、皆さんに簡単なイタリアンのソースをお伝えします!

日本の出汁といえば、昆布や鰹節ですが、
イタリアの出汁をブロードと言いますが、
主な食材はなんでしょう??


お肉や魚介ではなく、野菜です。

香りの出る食材…




正解は、「にんじん、玉ねぎ、セロリ」
これらを基本材料として使います。

多くの家庭でのトマトソースは、
全てをみじん切りにして、トマトピューレで煮込む。
ここにひき肉を入れるとミートソースになります。

そうではなく、もっとヘルシーで簡単なトマトソース。

オーブンを使います!

【トマトソースの作り方】

1、トマトをスライスに切る
2、玉ねぎ・セロリ・にんじんも均等に火が入る大きさに切る
3、オーブンシートに全て並べて塩胡椒、オリーブオイル、乾燥オレガノを振る
4、約180度で数十分加熱(火が通ったら美味しい香りが漂います)
5、粗熱が取れたら、ブレンダーで攪拌するとソースの完成!

このソースを、リゾットやパスタに混ぜるだけ。

これだけでも美味しいですが、アクセントになる食材を合わせると完璧です。
揚げ焼きにしたナス、生のエビも最高です。
カリカリベーコンなど、一緒に混ぜ込むより引き立つ食材を乗せてください。
シェフは、スタッフ用のまかないとしてこのソースを作っています。



話題3:新しいニッポン語… 馴染まないだろう


最近、イタリアの Instagram で、新しい日本語を見つけました。
グルメにまつわる情報を発信しているアカウントで、
食材、文化、歴史、言葉などを紹介しています。

その中で、日本語を見つけたんです。


「お〇〇〇」



イタリア語の文章を直訳すると、

Mi fido di te / Lascio fare a te.
「あなたを信じている」「あなたのしたいようにして」


つまり、、、



「Omakase:おまかせ」

スタジオのパーソナリティからも、韓国やアジアの若者が
日本で「Omakase」を体験をしに来ていると話ていました。

実際に、Omakase を検索すると、たくさん出てきたので
なぜだろと思っていたところ。すでにアジア圏では既に注目されているようです。


ですが!
これがイタリアで馴染むかどうかは疑問を抱いています。

なぜならば、「レストランでの注文の仕方が違う」から。


まず、魚か肉料理を選びます。

前菜、
第一の料理として、リゾットかパスタを選び、
第二のお皿として、魚介や肉料理を決めます。
この時に、副菜となるサラダやグリル野菜なども注文。
そして食べ終えた後に、ドルチェを食べるかどうか、
食後のお酒を飲む?なんて店員さんと会話をします。

よって、それぞれに自分の献立を作るんです。
4、5人で大皿を突いたり、回したりなんてことはありません。
団体客ならありますが、家族やグループなら
自分の料理を頼みます。

私たち夫婦は、一口ずつ渡して味見をしますが、
あまり行儀の良いものではないのです。

高級店でも、自分の食べたい料理を前菜から想像して、
次にこれを頼んで、最後はこれで締める、というように構成します。

おまかせが馴染まない理由の一つに、
小さな頃から「決断する力」を身につけてきた文化の違いにあると考えています。


イタリアでは、子どもの頃から「朝ごはんに何食べたい?」と訊かれると、
「クッキー」「シリアル」「ブリオッシュ」のように、はっきりと決めるんです。

また、遊ぶときも、「何したい?」と聞かれたら、
「公園で遊具」「家でゲーム」「自転車に乗りたい」など、具体的に言う。
服装も、この色がいい、こっちが着たいとこだわりがあるようなんです。


一方で私は、「なんでもいい」と育ってきました。
休日の母は「ビュッフェ」のように、
目玉焼き、ソーセージ、サラダ、パンをすでに用意し、またホットケーキを焼く段階まで準備していました。
好きなだけ焼きなさいというような状態。
私にとっては贅沢な朝ごはんでした。

どちらがいいとかではなく、文化の違いがここにあるのです。


だがら、日本だと大将が選ぶ、
「旬で新鮮な食材を、あなたが思うように料理してくださったものを食べたい」と願う。
これは自然な感情だと思うし、私もそれで食事をしたい。

ですがイタリアでは、自分で決めたいので、
・人が決めたものを食べる不安さ
・気に入らない可能性がある
・新しい味に抵抗がある人も
・何が出てくるのか想像できない
・私の味の好みを知らない大将が選ぶ?
・途中で嫌になったりするかも

このような心情が想像できます。
イタリア人の夫も同じようなことを言っていました。


ショーケースから

当店では、新鮮な食材を並べた冷蔵のショーケースがあります。

そこには、鯛、スズキ、ヒラメ、カサゴ、ホウボウ、メカジキ、
いか、えび、ロブスター、ヨーロッパ伊勢海老など並んでいます。

お客さんはこれを見て、調理方法を選びます。
ムール貝やアサリは生で食べるかパスタか。
鯛はアクアパッツァ、塩釜焼き、オーブン焼き。
イカとえびはグリル、ロブスターはパスタかグリルなど。

店員側が調理方法の提案を行い、お客さんが食べたいものを選ぶ。
もしくは、食べ方を指定することも。

よって、注文の仕方が逆なんです。
だから「おまかせ」が馴染むかどうかわかりません。


決断力が足りない

イタリアに来て、決断することが多いなと感じます。


義母や友だちとの会話でも、
「クリスマスに何食べたい?」とか、
「今度の休みは何したい?」とか、
「買い物はどこへ行きたい?」など。
私としては、どこでもいいし、合わせる!と言いがち。
「こうしたい!」と言い切ることが苦手というか抵抗があるんです。

シェフ道を進む中、あらゆる質問が飛んできます。
「あの食材が無くなる前に作っておこうか?」
「この味見して、何か足すなら?」
「〇〇を使った料理は何と合わせようか?」

今日も「パスタの茹で加減どう?あと何分?」と。

訊かれたら、”すぐに” 返事する瞬発力も必要だと感じています。

文句も直ぐさま

イタリア人同僚を見ていると、
気になることはすぐに言い合うんですが、文句を言われることも。
「早くして!」「遅いのよ!」「もっとこうして!」などと。
隠語:スラングつまり汚い言葉を使うことは日常茶飯事。
私は、一切言わないので、無言か簡単に「ハイハイ」と誤魔化すのですが、

それが逆に、周りに不満を募らせている…

「なんで、君は言い返さないんだ!」と。
「言い返し方を教えてあげる」など提案されました。
言い返しても倍以上に喋り続ける人には、それ以上関わらない方がいい。
すると、一人のスタッフが、
「僕だけが、彼女に文句言っているみたいじゃない!」と。
「君も何か彼女に言うべきだし、言わなきゃわからないんだから!」と。

でも、家に帰ると夫は、
「君は何も言わなくていい。巻き込まれないのが一番」と。
「君は正義感が強くなる時がある。その気持ちもわかるけれど、
間に足を踏み入れるべきではないこともある。」

さすが、私のことをわかっている。
このような観察力は素晴らしいなと感心します。

これから、日本も世界各国に負けないためにも、
決断力、瞬発力、発言力」など、
学校教育の中に取り入れていくべき要素ではないかと感じています。

日本の政治家も、諸外国の人との会合で、
「うまく言い返せたのか」が気になるところですよね。
黙っていては通じない。気の利いた一言が求められる場面も。

sns や YouTube など、誰もが発信者になった現代、
自分らしい意見の言語化と判断力、そして瞬発力まで問われます。
大人になっても磨き続けるべき技術ですね。


以上、ラジオ放送のまとめを文字にしました。

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