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1月のOA 「イタリアの年末年始」

新年早々の生放送

イタリアにおいて、一番重要な行事は
「ナターレ」つまりクリスマスだ。
何年にも渡って、イタリアのナターレについて紹介してきた。

今回は、ディレクターから年始にと依頼がきたので、
まだナターレ期間ではあるものの、
イタリアの年末年始の様子を伝えることにした。



まずは、避けては通れない、
【イタリアにおける新型コロナウイルスの現状】
軽くおさらい
第一波は、3月から急激に広まり、瞬く間にロックダウンへ。
     初夏には徐々に規制が解除され、
     真夏に終息しかけた。

第二波は、新学期が明け、しばらく経った10月中旬。
     前回を上回る勢いで、新たな規制が敷かれた。
     ピークは11月中旬。一日の感染者数は4万人にまで達した。

1月上旬の情報は、
一日の感染者数の平均が約1万6千人
一日の死亡者数は約500人。
累計感染者数は220万人を超えた。


年末年始の特別規制発令


前回のOAで紹介したように、
イタリアでは、州や地域ごとに色分けして規制を行っている。

ナターレは、日本人にとってのお正月のような存在で、
家族全員が揃って祝うもの。
だから24日のイヴに恋人とロマンチックな夜を過ごすという文化はない。
前日は、親元へ帰省や準備をする日になる。


そこで、イタリア政府は、
ナターレの期間である、25日から1月6日まで、
イタリア全土一斉に規制を強化した。

特に、不要不急の外出禁止が強かった。
緩い日もあれば厳しい日もあり、毎日ニュースや
情報を把握していないと、うっかり罰金の対象になってしまう。

では、今年は親元に集まることができないのか?
と、多くの家族が不安に駆られたが、そうではない。
政府が発表した規制を要約すると、

州をまたいで親族や友人に会うための移動は禁止。
同じ自治体ならば可能だが、
一日に1回限り、朝5時~22時の間。
最大大人2名と子どもや介助が必要な人の同行が可能。
他の街に住むパートナーに会う場合、
戸籍登録している住所の地域なら可能。
移動の際は、自己宣言書が必要。
移動制限に違反した場合は、
行政罰として400~1000€。最大で12万円
街には、国家警察や地方警察が常に巡視。


私たち家族は、真隣に義母が住んでいるため、
例年と変わらない過ごし方ができた。

イタリア人の友人家族は、
旦那さんの実家で、家族全員は集合せずに、
昼食に友だち家族、夕飯に弟家族が訪ねるという、
時間制で大勢が一斉に密にならないように配慮したとか。

また他の友人は、プレゼントだけを渡しに各家庭を訪問した。
今年は異例のナターレに、どこか寂しく物足りなさを感じたことだろう。
そしてこの規制は、年が明けても続くことになる。


27日は歴史に残るV-Day

ナターレが明け、瞬く間にメディアがこの話題に包まれた。
「V-Day」

Vとは、ワクチン(Vakzin:ドイツ語)のこと。
イタリアでもVで始まるVaccino ヴァチーノと呼ぶ。




ファイザー社のワクチンを、
EUで足並み揃えて一斉開始するという計画。
ローマに入ってきたワクチンは、全国で同じ日に行えるように、
配送方法を念入りに組み、
警察の護送の元、完璧に津々浦々に渡り切った。

私の住む人口14万人のこの街にもそのワクチンがやってきた。
その数なんと、
45本!!
少なッと思わず声が出た。
それでも、医療従事者を中心に接種が実行された。
イタリアはドイツに続いて、12万8千人が受けたようだ。
毎週47万回行われる予定で、
秋までに終了を見込んでいるとか。
実際に、ワクチンの受付が行われていると、
看護師である、夫のいとこがFbで情報を拡散していた。



「年の瀬」ってなんですか?


ナターレは25〜26日の連休になっている。
しかし、飾り付けや音楽は、そのままに6日まで継続。
とはいえ、翌27日から通常通りに仕事をし、商店は開いている。
これが、一年の最後の日である、31日まで続く。

元日に特別な行事を行わないために、
「大晦日」や「年の瀬」、はたまた「仕事納め」という
特別な言葉は存在しない。
さらには、大掃除なんて習慣もない。
もちろん、好みで掃除をする人はいるが。
よって、彼らは年が暮れることに、そこまでの重きを置いていない。

1月1日は祝日となり、全ての商店はシャッターを閉じて家で過ごす。
では、彼らがどのように過ごすのか見てみよう。



一年の最後の日に食べるものがある



30日(水)に中央市場へ食材を求めに出かけた。
鮮魚コーナーへ行くと、この時期ならではのものがあった。
それは、


「うなぎ」

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市場のショーケースの中で、
魚の上をヌルヌルと動き回るうなぎのショーが見れる。
暮れならではの光景だ。


うなぎを食べる由来は、
旧約聖書で、イヴに誘惑するために果物を差し出した
「ヘビ」に似ているために、悪魔の象徴とされ、
それを食べることで悪を追い払うというもの。
意味が分かるようで分からない摩訶不思議な風習だ。

他の説では、ナターレはお肉料理を食べるので、
イヴには、魚料理を食する文化がある。
そこで、うなぎが出回るとか。

それも、生きたうなぎを買うのが特徴。
マンマたちはこれを捌くようだ。
聖者の一員になった心持ちで行うのだろうか。
揚げてマリネ液につけたり、煮込み料理にしたりして、
食べる文化が一部地域である。



31日に必ず食べるものがある。
それは、数えられる食材
粒々したものと言えよう。

例えば、
・栄養価が高くお金に似た形で金運アップの「レンズ豆」
・忠実さと豊穣の象徴である、愛情運アップの「ザクロ」「ぶどう」

レンズ豆の横には、コテキーノという、
いわゆる豚のソーセージと一緒に食べる。
背脂がたっぷり入ったものなので、
我がスポーツを愛する夫は食べない。
毎年、ナターレに食べる食材セットを会社から送られていたが、
このコテキーノや甘すぎるお菓子はご近所へ配っていた。

これらの食材は、家族で食べるというよりは、
友だちや恋人同志で過ごすのが一般的で、
ワイワイ騒ぎながら食事して、
テレビや音楽でテンションを上げて
カウントダウンへと気持ちをピークに持っていく。


今年は異例の静かなカウントダウン



街の広場では音楽イベントが催され、
多くの人がそこへ詰めかける。
気分が絶頂に達した民衆は、
こぞってカウントダウンをする。
10、9、8、7、6、
この時点で、彼らは既に、
家からスプマンテという炭酸入りのワインの瓶を持参する。
コルクを緩め、あと少しという状態にし、
周りの仲間はグラスを片手に待つ…

5、4、3、2、1、
ポーーーーーン!!
とコルクを弾き飛ばす。

「アウグーリ!」イタリア語でおめでとうという言葉を
掛け合って、グラスに注がれたスプマンテを乾杯!
恋人たちはキスをする。

この時後ろでは、賑々しく大きな花火が上がる。
実は、カウントダウンが始まる前から、
手持ちの花火や爆竹音が広がって少し恐怖を覚えるほどだ。


が、しかし

今年は、新型コロナウイルスの影響により、
夜22時以降の外出、催し、花火も禁止。

日本の大晦日のような静かで鐘の音が響くと予想された。



勤めているレストランはもちろんコロナで営業停止。
時間に余裕があったため、年越し蕎麦を作った。
食後はティラミスをたらふく食べて、
テレビを見ながらさらりと年が変わろうとした。

いざ、カウントダウン!

外がいっそ賑やかになる。
なんと、打ち上げ花火が堂々と上がっている!

5、4、3、2、1、0!!
ドンドーン!ドドドンドーン!
ピュルルルルー!パチパチパチドーン!!

あれ?花火禁止じゃ?
どこから上げてるの?
えっ、住宅の間から?
もしかしてベランダで?

テラスに出てみると、
街のあちらこちらから花火が打ちあがっていた。
大通りに面した窓から外をみると、
若者たちが窓からロケット花火を投げている。
投げたところで誰もいないから大丈夫だが。
駐車している車に当たっている。
瞬く間に、通りや空は煙で真っ白に。

そしてどこからか、
「アウグーリー!」という声が聞こえてきたので、
私たちもそれに応えた。
知らない人たちと、こんな風に声を掛け合うなんて
特別なカウントダウンになった。


そもそも、花火は大きな音を立てて、
邪気を払うという意味が込められているとか。

コロナで塞いだ時期があったからこそ、
花火で思いっきり吹き飛ばしたかったのかもしれない。
「2020年なんて、バッキャロー」と叫ぶ
若者の声も聞こえてきた。
そう言いたい気持ちも分かる。
学校で勉強できなかった学生たちは、
あまり思い出ができなかっただろうに。


2021年は、ワクチンの効果も期待しつつ、
かつてのような賑やかな暮らしを取り戻したいものだ。

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