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【イタリア】軟禁生活54日目 ついに外出!

堪忍袋の緒が切れる5秒前

4月下旬、テラスから見下ろす中庭広場に
老若男女が溢れるようになった。
主に周りを囲む居住者たちの広場だが、
噂を聞きつけたか、急に人が増えた。
子どもたちが元気にはしゃぐ姿は
我慢している日々を思うと微笑ましく、
目一杯遊んで欲しいとつい眺めてしまう。

しかし、本来ならばこのような状況は認められず、
マスクをしていない人、距離を空けていない人など
明らかな不要不急の外出は罰金の対象となってしまう。

この日は初めて、警察官が来た。
あまりの賑わいに誰かが通報したのだろう。
雲の子を散らすようにいなくなった。
だが一人の男性は、警察と言い合っている。
自分が正しいと主張しているようだ。
行き場のない怒りを彼らにぶつけているのだろう…

話は変わるが、知り合いが罰金を取られたとか。
家から数百メートル離れた森を歩いていただけなのに。
一方で街に目を向ければ距離の近い人たちがたくさん。
彼女の怒りは収まることはないだろう。


実はというと、私も一度ミリタリー姿の軍の人たちに声をかけられた。
ウォーキングしていたのだが、 外出許可証を所持していなかった。
さらに、身分証明を見せてと言われたが、
これも持っていなかった。なぜなら、
紛失したり盗まれると再発行の手続きが面倒で
近所に行く場合は持たないことが多い。
(実際、不所持も違反。)
幸いにも、彼らは警察ではなかったために、
きつく問い詰められはしなかった。
逆にあっけにとられたか、注意するだけで終わった。


別れ際に、彼らにもらった外出許可証。
名前や住所連絡先を書き、
行き先も記入し日付や時刻と共にサインをする。

この日のウォーキングで撮った写真。
近くの公園は、もともと動物園であった。
今でもその名残が見られ、柵や檻の中は草木が茂っている。
現在は七面鳥やニワトリなどの動物がいるのみ。
この他、子どもたちが遊べる遊具の広場、ドッグラン、
広大なトラックやローラー系のスポーツができる
整備された広場、芝生や木々などピクニックもできる。
周りを囲む砂利道は、ウォーキングやランニングに最適だ。

がしかし、ロックダウンになりずっと閉まっている。
これからがとてもいい季節なのに。。。
爽やかな花の香りが漂うはずが、今年は嗅げそうにない。
その花はというと「楠: くすのき」だ。
防虫剤や樟脳として知られているだろう。

私の地元高松では、中央通りに長く楠が連なっている。
これが辺りに香ると初夏を感じることができる。

イタリアに来て7年半、ついに出会うことができた木。
引っ越しし、近くなったことで嗅げる!と思っていたが
今後どうなることやら。
地域のニュースによると、他の公園はオープンするが、
ここはまだ未定のようだ。残念で仕方がない。

ついに、外出できる!

数日前から街が賑やかになった。
夫が中央市場から買い物に帰ってくると、
明日5月1日から外に出られるという噂が広まっていると言った。

5月4日から開始のはずがなぜ3日も早く始まるのか…。

夫がこれを信じて外出し、罰金でも取られりゃ恐ろしいと思い
すぐさま新聞サイトを開いた。すると、



トスカーナ州は5月1日より外出が可能。
家から他へ立ち寄ることなく家に戻ってくることが条件。
徒歩と自転車のみの移動が許された。

本当だったようだ。
ということで、明日私たちも外出することを決めた。

やっと夫婦で出かけることができるようになる。
家にこもって54日目のこと。

港へ行こう

早々に昼食を済ませ、出かけることに。
その前に、外出許可証に記入して鞄に忍ばせた。
新聞には所持せよとは書いていないが念の為準備した。

天気は曇りで、少し風があるが寒くはない。

家から30分ほどの港へ向かって歩くことにした。
街の繁華街である大通りには、
家族連れの姿が目立った。しかも一族郎党だ。
同じ家の住人なら距離を保つ必要はない。
そして、自転車に乗った家族の姿も多く見られた。
錆まみれの自転車のおじさんも、陽気に漕いでいた。
車の往来はほとんどなく、歩行者天国のようなで歩きやすい。

港へ着くと、人の少ないフェリー乗り場へ向かった。
マスクを退けて深呼吸すると、
久しぶりに潮風を感じ、感慨深くなった。
また目の前のフェリーの重低音の響きも心地良い。
ずっと恋しかったんだと、気付かされた。

ここから、ヨットハーバーを散歩。
どこを歩いても前後に人がいる。
みんなのんびりと歩いていて、
急かされないのは不思議な感覚。
また、みんな静かに歩いているのにも驚いた。
あのおしゃべりな人たちが…
各々に自粛しているようだ。

帰り道、喉が乾いた。

この日は、祝日のためお店はほぼ閉まっている。
しかし、新たにバールやカフェテリアでも、
コーヒーや食事の持ち帰りの許可が降りた。
港近くのバーでは、コーヒーを買う人の列があった。
並ぶほどでもないと思い帰ることにしたが、
さらに進むと、ジェラート屋には長い行列が。

歩いていると少し汗ばむほどの暑さ。
つい、食べたくなるが我慢我慢。
5分歩けば家にたどり着くと言い聞かせ、
後ろ髪を引かれる思いで帰路についた。

街に笑顔が溢れた

これまでの外出は買い物や暮らす上で必要なことだけだった。
それが健康上のために、出かけることができるようになった。
家でこもる生活を始めて54日目のこと。

何よりも、家族みんなで "堂々と" 歩ける日がやってきた。

街行く人々の笑顔、家族の姿、自転車で爽快に走る人々、
随分見ていなかった光景にグッとくるものがあった。
まだまだ終息には時間がかかるけれども、
僅かな一歩がとても大切でありがたいと感じた。

5月4日からはさらに外出の範囲が広がる。
感染拡大を防ぐよう努力するが 、
心の開放にも注力していきたい。

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