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イタリア人が好きなSushiトップ3

イタリアの人口16万人の小さな港町に住んでいる。ここで日本食のみを提供して12年になる一番古いレストランでウエイトレスとして働いている。先日4年が過ぎた。回転寿司ではなく、食べ放題でもない、アラカルトなので、注文を受けてから作っている。

イタリアのほとんどのSushiレストランは、中国人が営む、中華料理との二本立てで食べ放題をしている。ランチなら、一人約1600円で好きなだけ食べらると言うもの。

なのにうちは、頑なにアラカルトで日本食一本を譲らない。だから、他店と客層の違いがあり、何でもかんでも食べたい人や、食べ盛りな子どもはあまり来ず、純粋にSushiや日本食を楽しみたい人がやってくる。

勤めてきた中で、イタリア人の好きなSushiの傾向が見えてきた。魚介を食べて育ったこの街の人は、生で食することにあまり抵抗がない。だから、若い孫世代が親や祖父母を牽引するように、日本食に興味を持っている人が増えたと感じている。


では一体、イタリア人はどんなSuhsiを好んで食べているのか。
当店のランキングを紹介しよう。


3位:レインボーロール



アメリカで開発された、海苔を酢飯の内側に巻いた「裏巻き」スタイルは、イタリアでも好んで食べられている。黒い海苔に抵抗がある人が一定数いる。だから海苔を隠すように作られたのだろう。だが、裏巻きは合理的だと感じる。細巻きは、具材を一つしか入れられないが、外側を酢飯にすることで、二つ、三つの具材を入れることができる。だから一度に何度も美味しいのが肝。
レインボーロールはその上に、サーモン、マグロ、鯛、エビとアボカドを並べて、虹色に仕上げている。値段は、これ1本で約1200円。


2位:フライロール

悲しいかな、本物の寿司から逸脱したものが人気だ。生魚を食べない人も含め、老若男女にはガツンとした揚げ物巻きは喜んでもらえている。

このロールは、中にエビフライ、アボカド、上に、サーモンの炙りとクリームチーズを乗せて、照り焼きソースをかけている。贅沢な一本だ。これで約1000円。

他にどんな揚げ物を入れているかというと、
エビフライ、チキンカツ、えび天ぷら、さつまいもの天ぷら、サーモンの天ぷら。
具材だけでなく、アボカドの細巻きや、アボカドとアナゴのロール、魚と野菜のロールという、巻き寿司自体を揚げたものまである。もう寿司の域を超えている。

家では手間がかかる、Sushiと揚げ物のタッグは、外食にはもってこいだ。だから、ここぞとばかりに、揚げ祭りを開催するテーブルまである。こんなに食べて大丈夫かと心配になるが、特別な日なのだろう。


さて、イタリア人が一番好きなSushiとは



1位:Nigiri di Salmone


サーモンの握りは、ダントツで1位に君臨している。ちなみに、イタリア語で「Nigiri di Salmone」と書いて、「ニジリ ディ サルモーネ」と言う。日本通なら、「ニギリ」って言うんだよ!と仲間を指摘するほど。


どれくらい人気かというと、
船形や橋型の盛り皿に、サーモンの握りで一杯にしてくれという人がいる。握り寿司の盛り合わせも、サーモン一色がいいと。これを、ピンク色を意味する「ローザ」という言葉を使って注文してくる気取った人もいる。

Sushiを食べたことのない初心者も、あまり食欲がない人も、小さなお子さんのお腹を満たすのも、最後の一口にもサーモンの握りは重宝される。
二貫を約400円で提供している。



生魚が怖いイタリア人も


お店は12年で一番の古株。この街のSushi文化を築いてきた。しかし、未だに生魚を信用していない人もまだまだいる。食中毒を心配して、生魚を食べ過ぎないように注意したり、火の通ったものしか食べさせなかったりする親は少なくない。

だけど、声を大にして言える。
今まで、魚による食中毒で指摘されたことはない。

法律で決められた冷凍処理

イタリアでは、生食を提供する際に、冷凍処理をしないといけない。マイナス20度で24時間は最低でも行う必要がある。アニサキスや微生物などの菌を抹消するためのもので、法律で定められている。
抜き打ちで衛生管理の担当者が市からやってきて、調理場のチェックをすることがあるようだ。この4年で出会ってないが、先日、同じ街の日本食レストランで指導が入り、この冷凍作業を怠っていて、10万円相当の罰金となっていた。

当店はというと、オーナーがしっかりしているので信頼できる。ノルウェーから、食品業者を介してやってきたサーモンは、一日おきに6尾はやってくる。長さ1メートルはあるだろう。それを三枚におろしにして、皮をはいで骨を抜いて冷凍。結構な重労働なのに、Sushiマンたちは黙々と作業している。



魚にどうやって番号を振るのかというと、送られてきた発泡スチロールに貼られたシリアルナンバー等を冷凍するときに、切り取って入れる。解凍するときに、いつどこでどれた魚でいつ購入し冷凍したものかがわかる仕組みを作っている。

ここまでしていることを、お客さんたちは知らない。当然だから言わないが、武器として公言してもいいようにも思う。でもオーナー夫婦は性格からか、でしゃばらないよう・恥じぬようにしとやか。


現在、物価が上昇し、流通が遅れる中で、サーモンにも影響が出てくるだろう。4月上旬の時点で、ホタテとイクラはなかなか手に入らなくなってきたようだ。揚げ油の値段も上がっているので、料理の値段も上がるかもしれない。この状況をどこまで耐えれるのだろうか、もしくはうまく変化していけるのか。また数ヶ月後に夏のSushi店について書こう。

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