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「サクラストークン」を発行しました

「サクラストークン」を発行しました

「岸田トークン」が話題に

ちょうどいま、「岸田トークン」なるものが話題となっています。

実は、私たちの会社サクラスでは、
「サクラストークン」なるものを
今年3/1から試験運用していますので、
今日はその取組みを紹介したいと思います。

もちろんこのサクラストークンは、
現行の法制度や税制面を考慮した不完全なものであり、
さらに現在の技術的成約も考慮して
オフチェーンで行われています。

それでも試験的運用を実施しているのは、
将来、環境が整備された際に、
土台となる思想やオペレーションの面でも
WEB3に慣れておくことが重要と考えたからです。

2月時点でのSlack投稿

「トークン」って何?

詳しい説明はより専門的な記事に譲りまして
ここでは、
Web3型の組織(コミュニティ)における基本的な仕組み
であって、ガバナンスや動機づけに使われるもの、
少し面白い言い方をするなら
NFT(Non-Fungible Token)のNonじゃないもの
くらいの説明に留めておきます。

トークンというと、どうしても(株式会社に代わる新たなビークルとしての)DAOの文脈で、そのテクニカルな面が注目を浴びがちですが、
基本的にはガバナンス参加者の動機づけを目的としたコミュニティの活性化のための潤滑油のような役割かと思います。

そのため、トークンそのものに魔法のような効果や革新性があるわけではなく、あくまでトークン配布や用法の設計コミュニティの思想が反映される類のものと理解しています。

「サクラストークン」とは

さて、「サクラストークン」の場合は、「会社から成果報酬を受け取る権利の単元」として、主にサクラスの選手を対象にカウントしています。

現行の法制度や税制上の成約から、あくまで(選手が将来受け取ることのできる)成果報酬の額を計算する際に基準となる数値であり、財産的価値を持つものではなく、選手間の売買などの2次流通はありません。

具体的にサクラストークンでできることとしては、成果報酬の受け取り以外に投票免責消費があります。
また将来においてはメンバー間の信用付与に使用する予定があります。

「サクラストークン」の実際

トークンの用途

サクラストークンの用法について、もう少し紹介します。

投票
というのは、文字通り、社内の決議事項に対してトークン数に応じた票数で投票が行えるというものです。実際にどんな議案に投票を実施しているかはまた別の機会に紹介できればと思います。

免責消費というのは、社内で何らかの処分を受けた際にトークンと相殺して免責される仕組みです。こちらについては「そもそも処分って何?」(物騒な響きです)という疑問点があるかと思いますが、それについても長くなるので本稿では割愛します。。

なお現在のところ、ガバナンストークンユーティリティートークンなどを区別しての発行は行っていません。

トークンの獲得方法

トークンにおいては、(既に述べたようなトークンの趣旨に照らすと)その獲得方法も重要です。

サクラストークンの場合には、組織のカルチャーとして重視している「友情・努力・勝利」を体現した行動に対してトークンを配布しています。

具体的には例えば、イベント企画や参加、研修参加や単位取得、ランキング1位獲得などに対して配布しています。

トークン獲得の様子


トークン運営の実現方法

こうしたトークンの獲得や活用については、本来であればブロックチェーン上に実装されたスマートコントラクトによって自動的に処理させるべきものです。

しかし、よく知られているように現在のイーサリアム上の取引には高額のガス代がかかり、また一般の参加者の感覚からするとウォレット等の準備のハードルも高いため、今の段階でERC上で駆動させることは現実的ではありません。

そのため、サクラストークンの場合は本来スマートコントラクトにより自動的に実行されるべき処理を、手動またはグーグルのアプリケーション上のスクリプト(GAS)などにより実行し、データもグーグルクラウド上のスプレッドシート等に記載しています。

サクラストークンの趣旨

何の実証実験なのか?

ブロックチェーンの技術的または経済的側面に注目している人からすると、オフチェーンで取引のできないトークンというのは片手落ち(それどころか全く意味がない)ではないか、と思うかもしれません。

もし技術的または経済的側面に注目した場合には、日本を離れてシンガポールなどで活動し、サイドチェーンを活用するなどして頑張ってオンチェーンで実装して、トークンはDEXに上場し、という全く違う実験の仕方も考えられます。

しかし、WEB3には色々な側面があります。
私たちはその中でも組織運営の面に着目しています。

いったい何のための実験なのか?
先ほどは「コミュニティ運営の潤滑油」などと就活生の自己PRのようなことを書きましたが、もう少し具体的に補足しておきたいと思います。

カイシャは「みんなのもの」になるか?

WEB3の本質は非中央集権化と言われます。

事業主体としての組織のあり方で言うと、
会社は株主のもの」というこれまでの資本主義の原則は一定踏襲しつつ、
みんなが株主(的存在)になれる」(つまり参加者自身が会社を所有できる)ということが新しい点であり、大きな挑戦となる点と思われます。

そうするとフィンテックやDeFiといった金融の仕組みの話だと、遠いものに感じられるかもしれませんが、仕組み(ハード面)だけでは片手落ちです。

仕組みをどう使うのか?使い方が重要です。

そして、それを使う側はこれまでのような、スティーブ・ジョブズのような強いリーダーではなく、もっとたくさんの一般の参加者となるのです。

これこそ、一君万民の伝統を持ち、万物に偏在する八百万の神を信仰する我が国が強みを……
・・話が大きくそれました・・
戻します。

まとめると、会社の仕組みが大きく変わろうとしている時代に、その仕組みになじめるよう、頭と体(習慣)の訓練をしておこう!ということです。

トークン獲得ルールが記載されたシート


コミュニティの熱量は高まるか?

今回のそうした訓練におけるゴールとしてはコミュニティの熱量を高めること、およびそのためのノウハウを獲得することが挙げられます。

NFTの価値がコミュニティの熱量に比例することは既に別記事で記載した通りですが、それは(代替可能な)トークンエコノミーでも同様で、WEB3型組織運営全般に言えることです。

私たちの実験でもコミュニティの熱量に相当するものをKPIとして定め、どのようにそのKPIを維持し高められるかということを研究すべきといえます。

未来のカイシャの姿とは

サクラストークンの活用状況

現在の足元でのトークンの活用状況としては、
2022年3月の開始以来約3ヶ月が経過し、
合計874個のトークンが配布され
139個のトークンが消費されています。

取引回数(といっても2次流通はありませんので、配布または消費が行われた回数であり、擬似的なものとなります)は、
合計259回であり、
3月81回、4月72回、5月106回
となっています。

取引回数の推移

GASやSlack botなどによる自動化はまだ道半ばで一部のみが自動化されており、後は手動で運用しています。

今後の展望

導入から3ヶ月が経過した現在において、将来に向けた計画は以下の3点です。

1/ コミュニティの熱量醸成
既に述べたとおりこれは実験の目的そのものですのでこれ以上の説明は省略します。目的を見失ってはいけませんので一番目に書いておきます。
熱量を維持し高める具体的な方法については今後まとめていき、またこちらのnoteでも報告できればと思います。
残りの2つはもう少し中期的なものです。

2/ 「社外」の巻き込み
Web3の本来の趣旨に照らせば「社内/外」の境界は無意味なものになっていくと想定されますので、秘密保持を含めた規約を踏んだ人をより広くトークンエコノミーに巻き込む方法については、検討していきたいと思います。
但し、サクラストークンでは当面は「業務委託の報酬を計上する方法としてのトークン」という枠組みを超えない範囲でできることに限られるかと思いますし、請求書など現行の法制度・税制下での証憑を並行してやりとりする必要があると思いますので匿名ということにはならないかと思います。

3/ 自動化
(セキュリティなどの観点からは時にデメリットにもなり得る)スマートコントラクトのある種の「融通の利かなさ」は、トークン・エコノミーやDAOの重要な成立要件になっていると思います。サクラストークンでは現在のところ手動で人力も使って仮想的に自動処理を行っていますが、人間の判断の余地が介在すること(及び参加者から見てそれが介在していると思われること)による弊害を感じる場面がどうしても出てきています。(実験してみてわかったこととして改めて)オンチェーンになった時に完全自動化されることは魅力的です。

未来のカイシャの姿

まだ3ヶ月ではありますが、未来のカイシャのあり方には様々な可能性を感じていて、とてもワクワクします。

ちょうど6年前に『会社を辞めて年収が上がる人、下がる人』という本を書いた時はこれからは個人の時代だ!みんなが副業をする!みんなが個人事業主になる!とその時も鼻息が荒くなりましたワクワクしましたが、当時の私の想像なんかを超えるスピードで世界は進化しています。

サラリーマン社長を辞めてからの7年間、プロフェッショナルのネットワークや学生だけの組織、フルリモートの組織など、様々な形で組織運営をしてきたからこそ、WEB3型の組織(全然チェーンに乗ってないのでエミュレーターみたいな仮想WEB3ですが)についてもどんど実践していきたいと思います!


サクラストークンによる取組みは完全にまだ実験段階であり、何か有意義な発見を報告できる段階にはありませんでしたが、「岸田トークン」が話題となっていたため、何かの参考になったらと紹介させていただきました。

正解のない領域で、私たちも色々と暗中模索中ですので、読者の方からの意見、リスクの指摘、取組みの紹介、質問など、歓迎です。

また進捗が出てきたら投稿させていただきます。

トークンによる取組みは一般に実証実験段階にあり、法整備が追いついていない領域があります。行政や専門家の指示のもとそれぞれの責任で行って下さい。本稿は情報の適法性や有効性を保証するものではなく、本稿を読んで実行した結果発生したいかなる損害についても当方は責任は負いません。


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