勝手にふるえてろ
えいがのこと
江藤ヨシカ(24)
10月生まれ
B型
雪国育ち
ひとりっ子
彼氏なし
絶滅した動物がすき
中学校の時のクラスメイト、
「イチ」に片思いをし続ける、
人の名前を覚えることが苦手なOL、ヨシカ。
ただただ脳内に「イチ」を再生するだけでビューティフルなサンデーを過ごせる彼女だったけど、会社の同僚「ニ」に好かれることで脳内彼氏(?)の「イチ」と現実彼氏(?)の「ニ」の間で揺れ動く。
その末、脳内だけの優しい世界から出てくることになっちゃって、とっても傷つくことになってしまうけれどそれが現実世界だよなぁ、と感じる映画。
主に高校生までの人生(一般的な青春?)に後ろめたさ、というか全力で「楽しかった!!」と言えない人に見てほしい映画だと思い。そんな人とこの映画を見た後に、ヨシカに重ねながら互いの傷を舐めあいたい。
見終わった後に走って閉店間際の書店に行き、原作本も購入した。
行動力がヨシカに底上げされたのかもしれない。というか、自分が動かなきゃ妄想は妄想のままなんだと痛感したのかもしれない。
ある友人が「付き合おうって口約束しないとどんなにいい雰囲気だろうと、付き合ってることにはならないんだよ」と、言っていたことを思い出した。本当にその通り。ヨシカはイチに好意を伝えることも自分という存在をアピールすることさえしない。(なんなら目を合わせることさえもしない。視野見……)
序盤は明るくチャーミングな色彩感とヨシカの人懐こさ全開で、映画館でもところどころ笑いが起こっていたけれど、中盤からはグッと心に踏み込んでくる展開。むしろ序盤の明るさが滑稽だったんじゃないかと思えてさえくる。
おもったこと
「あの頃に君と仲良くなれば良かった」
この言葉がヨシカの名前すら知らないイチとヨシカの関係の終着点。
異常巻のアンモナイト、こじらせ女子のヨシカ。
異常巻のアンモナイトだって、絶滅したくなくてかたちを変えた末にホタテのひもみたいになって、
こじらせ女子のヨシカだって、精神的に死にたくないから妄想世界の中で生きてきて、
ねぇ絶滅すべきでしょうか。
生きることに不器用すぎるがゆえに愛くるしい。
不完全だからいとおしい。
その不完全なヨシカがアンモナイトみたいに絶滅しなくて済んだのは「ニ」がヨシカの名前を呼び続けてくれたから。
ちょっとウザいけど憎めない、まっすぐなまでにヨシカのことが好きな「ニ」(結局最後の最後しか名前が出てこなかったね)のこと、最初はまじでうざすぎて嫌いだったけど映画が終わるころには「悪いやつではないな」と思う。
この映画の主軸は「名前」であり、高校までを決して明るくないタイプで過ごした人には抉られるような内容かもしれない。
「え、あの人の名前なんだっけ」
こっそりこの言葉を聞いて誰にも気が付かれないように落ち込んだことのある同志たちに捧げたい映画だ。
ヨシカが大切にしてなかった「人の名前」だけれど、自身は最愛のひとに自分の名前が知られてすらいないことがわかるとひどく傷つく。一方でずーっと名前を呼び続けてくれていたのはニ。
(ヨシカはニの名前を呼ぶことはほぼないのですが。そういうとこだぞ、ヨシカ。)
「名前って大切でしょ」(CV:片桐はいり)
真摯なばかに愛着が湧く、人のなまえを呼びたくなるような、昨日までをたくさん後悔して、明日からすこしだけ強くなるような映画だと思いました。
余談
松岡茉優さんがこの映画きっかけに大すきになりました。彼女自身も新生モー娘。のガチファンのようで、ヨシカのまとうオタク気質は彼女だからこそ演じることができたのでは、と思います。彼女が新生モー娘。について語るときと、イチについて語る時の目が完全に一致です。
映画を見た人が自主制作したファンブックもあるそうで、うっかり買ってしまいそうです。
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