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うまなみ 第二稿

前の「うまなみ」はこちら。
https://note.com/ikedarego/n/nf632d4e894e7
渋谷悠氏の指導の下、以下のモノローグに生まれ変わりました。
以前との違いをぜひご覧ください。

『うまなみ』

(夫に離婚話をしている)
ごめん。本当にごめん。
全部私が悪いの。ゆうちゃんは全く悪くないから。だから本当にごめん。
ゆうちゃんが頑張るとか頑張らないとかそういう問題じゃないの。
だって、ゆうちゃん、すごく良くやってくれてるじゃん。私、目玉焼きすらまともに作れないから冷凍食品ばっかりだし、掃除も雑だからゴミ溜めちゃうし、アイロン掛けも上手くできないからワイシャツくしゃくしゃだし、なのに、ゆうちゃんそれでもいいよって言ってくれるし、私、ゆうちゃんと結婚できて本当に良かったって、そう思ってるもん。

だからこれは全部私の問題なの。本当にごめん。
私、ゆうちゃんのこと大好きだよ。本当に大好き。
ゆうちゃんが大きな手で優しく頭をなでてくれるのすごく気持ちいいし、ギュって抱きしめられたら今でもドキドキするし、ずっと一緒にいたいって思ってる。
でも、無理なの。ゆうちゃんにはどうすることもできないの。
離婚してください。

‥‥‥だって、ゆうちゃん子供欲しいんでしょ。
私も子供欲しいもん。
だからもう無理なの。無理でしょう。無理だったでしょう!
つきあって三年、結婚して三年。初めて挑戦してから五年だよ。でもこの五年間、何度チャレンジしてもできなかったじゃない。入らないでしょう。
だからごめん。私じゃゆうちゃんとの子供作れないから。だから本当にごめん。

もう私も頑張れないよ。頑張るとか頑張らないとかそういうサイズじゃないから。
正直、夜が来るたびに罪悪感で押しつぶされそうになるの。
私がもっと頑張ればいいのかなって、もっと我慢すればいいのかなって、でもゆうちゃんは優しいからさ「我慢する必要はない」って「正直に思ったことは言ってほしい」って「私のことが一番大切だから」って言ってくれるじゃない。その優しい言葉が全部重いの。

ゆうちゃん、私たち、もうすぐアラフォーでしょ。
だから、引き返すなら今しかないってそう思うの。男の人はさ、何歳になっても子供作れるかもしれないけれどさ、女は年をとればとるほど妊娠って大変だから。
別れよう、ゆうちゃん。

‥‥‥ゆうちゃん、子供大好きだもんね。わかるよ、そんなの。
休日に一緒に買い物に行くとさ、私たちのそばをベビーカーが通るじゃない。
その時、ゆうちゃん、いつもものすごく優しい目で赤ちゃんをみるよね。

結婚する前にさ、一緒に、子供の名前考えたりしたじゃない。
男の子だったら優一、女の子だったら優子にしようって。勉強もスポーツもできなくていいから優しい子であればいいよねって。他には何もいらないねって。
私、あの時ね、ゆうちゃんとなら家族になれるって思った。
ゆうちゃんと家族をつくりたいって本当にそう思ったんだ。

優しい優しいゆうちゃんはさ、とてもいいお父さんになれると思う。
目に浮かぶもん。ゆうちゃんがさ、笑顔で子供とキャッチボールしてる姿が。
無理しなくていいんだよ。ゆうちゃん、子供大好きだもんね。
今まで本当にありがとう。ゆうちゃんと結婚できて幸せだったよ。

‥‥‥ねぇ、どうして怒らないの?
私さ、すごく理不尽なこと言ってるの、自分でわかってるんだよ。
怒っていいんだよ、ゆうちゃん。そんな子供をみるような優しい目で私をみないでよ。
ゆうちゃんの優しさは全部プレッシャーになるの。私、もう潰れそうなの。
優しさだけじゃ乗り越えられないの。乗り越えられないじゃない‥‥‥


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