大事なことだからもう一度言っておきます。売上に影響を与えるクチコミは「思い出してもらうまで」と「思い出してもらってから」の2つに分けて考えよう!という大事なお話
ここ、本当によく誤解される、というか誤って理解されてるんですが、とても大事なことなので改めて書いておきます。
クチコミ(Word-of-Mouth)には「思い出してもらうまで」と「思い出して(想起して)もらってから」の2種類があって、それぞれぜんぜん違う効能を持っているんです。
Pre-Evocation(想起前)とPost-Evocation(想起後)ともいえます。
おさらい
この話は基礎知識が必要なので、下記の記事をお読みでない方は恐縮ですがまずはこちらを読んでください。後悔させませんm(_ _)m
真実の瞬間(Moment-Of-Truth)と、消費者は4回評価する(ZMOT→FMOT→SMOT→TMOT)のお話。
次に想起集合(Evoked Set)と、第一想起(Top-of-Mind Awareness)のお話。こちらも何卒。
アテンションエコノミーの時代、マジでZMOTが重要
さて、2011年にGoogleが提唱したZMOT(ZERO Moment-Of-Truth)。
少々あらっぽく言ってしまうと、いかに認知されていても、興味を持ってもらえていても、理解されていても、好意を持ってもらえていても、パーセプションが正しく理解されていても、購入意向が高くても、ニーズが顕在化したときに思い出してもらえない(想起してもらえない)ブランドは買ってもらえない(可能性が高い)んです。
ネットやSNSが当たり前の時代、消費者は店頭に行く前から商品やサービス、ブランドとの接点や交流を持ち、店頭に行く前(ネットならAmazonや楽天にアクセスする前)にある程度購入もしくは比較検討する商品を決めてしまう。
だからZMOTが重要と。
でもこのZMOTがイマイチ正しく理解されていない。
これが今回の記事の主題。ZMOTは「思い出してもらうまで」と「思い出してもらってから」の2つに分けて考えましょう、という提案です。
思い出してもらうまでのZMOT
購入の起点となるもの。僕はそれが想起だと考えています。
・アイスが食べたくなったとき、ハーゲンダッツが頭に浮かぶ
・ビールが飲みたくなったとき、アサヒスーパードライが頭に浮かぶ
・洗濯用洗剤と言えばアタック
・歯磨き粉といえばクリニカ
・マヨネーズといえばキユーピー
・トマトケチャップといえばカゴメ
・醤油といえばキッコーマン
・お酢といえばミツカン
・ウインナーといえばシャウエッセン
・カップラーメンといえば日清のカップヌードル
・カップスープといえばクノール
・頭痛薬といえばバファリン
・消臭剤といえば消臭力
・ひげそりといえばジレット
・カフェといえばスタバ
・マスカラといえばメイベリンニューヨーク
・ドライヤーといえばパナソニック
・掃除機といえばダイソン
・デジタル一眼レフといえばキヤノン
・クレジットカードといえばVISA
・自動車保険といえばソニー損保
・住宅メーカーといえば積水ハウス
では、これらの「想起」は何によってなされているのか?
その正体は、広告、PR、タイムライン型のクチコミの3つです。これこそが「思い出してもらうまでのZMOT」(Pre-EvocationとしてのZMOT)です。
僕らは掃除機のことなんて1日に1秒も考えていない
あなたは先月、掃除機のことをどのくらい考えましたか? たぶん1秒も考えていないはず。なぜなら、あなたの家の掃除機は、いま調子が悪くないから。
1週間に1度、掃除機を使っていたとしても、関心を持って考えているわけではありません。無意識で使っている。無関心状態なんです。
でも、あるとき調子が悪くなる。「ああ、5年も使ったからそろそろ寿命かな…。しょうがない、新しいのを買うか…」となったとき、一瞬にして「潜在顧客」から「顕在顧客」に変身するんです。そしてきっとそのとき、1/3の人が「掃除機 価格 安い」と検索し(価格志向の人)、1/3が「掃除機 おすすめ」と検索し(こだわりのある人)、1/3が「ダイソン」と検索する。
ここで注目すべきは、「ダイソン」と検索する人です。
昨日まで、1日に1秒も掃除機に関心を持っていなかった人(←ここがポイント)が、ニーズが顕在化した瞬間に「ダイソン」とブランド指名検索をする。
ここに効いているのは、ほぼ間違いなく、ニーズが潜在期にいたとき(←しつこいですが、ここがポイント)、長期間にわたって触れ続けたダイソンの広告とPRです。それがニーズが顕在化した瞬間に花開き、おもむろにスマホのGoogleアプリで「ダイソン」と検索させる。
これが思い出してもらうまでのZMOT(Pre-EvocationとしてのZMOT)。
思い出してもらってからのZMOT
掃除機は数万円します。そして購入したら数年間使い続ける。だから失敗はできない。そのため、購入前に徹底的に「失敗しないための行動」をします。
それが「思い出した後のZMOT」、つまり検索行動による情報接触です。
その検索で見るものは何か? そう、購入者(既存顧客)のレビュー(評価)です。Amazonレビュー、kakaku.comのレビュー、個人ブログのレビュー。実際に買った人は、ダイソンをどう評価しているのか? 良いイメージはあるけど、本当に買って大丈夫か? 失敗しないのか? 後悔しないのか? を徹底的に調べます。
これが「思い出してもらってからの検索型ZMOT」(Post-EvocationとしてのZMOT)です。そしてそのZMOTの発信者(書き手)は既存顧客(のSMOTやTMOT)です。
だから新規顧客を効果的に獲得するためには、既存顧客のSMOT(商品パフォーマンス)やTMOT(ブランド体験)が大事なんです。だからファンマーケティングや熱狂マーケティングによるブランドエンゲージメント獲得が重要というわけ。
ファンマーケティングや熱狂マーケティングは、顧客の熱狂度向上によるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化や、NPS(Net Promoter Score:正味推奨者比率)の向上だけでなく、「思い出してもらってからのZMOTの”源泉”」という意味でもとても重要なのです。
一般消費財における「思い出してもらうまでのZMOT」
掃除機の場合、「思い出してもらうまでのZMOT」は広告とPRが主役ですが、一般消費財の場合は様相が異なります。
なぜなら、掃除機はTwitter、Facebook、Instagramなどのタイムラインに出現する確率は低い(つまり思い出してもらう想起にクチコミはさほど影響していない)ですが、スーパーやコンビニで購入する一般消費財の場合は頻繁にタイムラインに出現し、それによって「再想起」につながる可能性が高いからです。
「今日、私は頑張ったからハーゲンダッツを食べる権利がある!」
たとえば、このツイート。レビューもレコメンドもしていません。単に食べると言っているだけ。もしかしたら、ツイ主は買わないかもしれない。それでも、このツイートを見たフォロワーは「最近食べてないな」「久々に食べたくなってきた」と思うかもしれない。すぐにじゃなくても、次にコンビニに行ったとき、そのツイートがきっかけで購入するかもしれない。
これが(主に一般消費財における)「思い出してもらうまでのタイムライン型ZMOT」の効果です。
このように、一言で「ZMOTが重要だ」「UGCの量が重要だ」「クチコミだ、レビューだ、レコメンドだ」と言っても、業界や商品のカテゴリー関与度によってマーケティングのポイントはぜんぜん異なることに注意が必要です。
バズによって売れるものと売れないものがある、という話も全く同じ話です。
まとめ
価格が安く、購入頻度が高い(=購入による失敗リスクが低い)一般消費財やサービス財は、事前に検索がされないため、検索型ZMOT(レビューやレコメンド)は効きづらい。
その代わり、「タイムライン型ZMOT」が認知や再想起を促し、それが購入につながるチャンスを得る。だからSNSのUGC量が重要。
同時に、広告やPRによる持続的な接触も重要。広告を打ち続ける予算がない場合、SNS文脈のPR戦略を実行することによって、タイムライン上のUGCを増やす施策によって再想起性を高める施策も有効です。
ソーシャルメディア時代のPR(PRのソーシャル化)事例については下記記事もご参照ください。
一方、価格が高く、購入頻度が低い(=購入による失敗リスクが高い)耐久消費財や専門財は、SNSのタイムラインに出現することが少ない(たとえ出現したとしてもタイミングが合わなければさほど意味をなさない)。
その代わり、購入による失敗リスクが高いため、ほぼ確実に検索をする。そこで接触するのは「検索型のZMOT」(=既存顧客のSMOTやTMOTによるレビューやレコメンド)であり、それが最後の購買意思決定の決め手になる。
だから高価格帯の商品は広告やPRによる「Pre-EvocationとしてのZMOT」で思い出してもらい、思い出してもらった後は良質なレビューによる「Post-Evocationとしての検索型ZMOT」で購入を決定してもらう導線を強化するが吉。
このあたり、弊社の業界別マーケティング戦略のポイントとしてまとめてありますので、よかったら見てみてください。
ZMOTの解説はこちらもめっちゃ詳しいです。
そして、本記事の詳細は近著『売上の地図』でも解説してますので、もっとkwsk! という方はぜひ。
売上獲得においてとても重要なZMOTの理解がもっと進みますように。
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