あの公園へ、子どもたちとともに。【6月18日 宮城県気仙沼市〜岩手県陸前高田市〜釜石市】
気仙沼港のすぐ近く、ご厚意で車中泊を許可してくださった気仙沼プラザホテルの駐車場での目覚め。今朝は蒸し暑さを感じる。海の匂い。いい気持ち。朝食には昨日気仙沼お魚市場で買った「あぶりさんま」を。しめ鯖のような酢をきかせた味付けなのに、炙った香ばしさが伴って、脂ものっていて本当に美味しい。地のものをいただく朝ごはん、何よりも贅沢だと感じる。
今日はゆっくりめのスタート。主人のクロックスが壊れたり、収納棚が必要になったり、いろいろと整える必要が出てきたため、近くのイオンへ。旅とはいえ暮らしだから、当然買い物も必要になってくる。お店であれこれ見ていると、「めんこいなぁ〜」って、おばちゃんが息子をあやしてくださった。ふふふ、うれしいな。一通り購入して体制も整ったので、さあ、今日も北上ルートへ!
今日最初の目的地は、陸前高田の「箱根山テラス」。以前greenz.jpの取材で訪れて、とてもお世話になった場所。2年半ほど前、忘れもしない雪の日にレンタカーで恐る恐る坂を上って訪れ、出会った人々もとても印象深く、濃密な時間を過ごした。テラスからの美しい景色と、人の集まる素晴らしい空間を家族とも共有したくて、この旅のルートにも提案していた。気仙沼からは1時間弱。海沿いを走ると、様々な記憶がよみがえる。特に「津波浸水地域ここから/ここまで」の看板が現れるたびに、背筋が伸びる思い。陸前高田のまちは、他の被災地域よりも、被災した建物をそのまま残している。娘も、「何あれ?」と、あまり目にしない光景に驚き、あれこれ質問してくる。そのたびに、ひとつひとつ、答えていく主人と私。娘は、リアルにはわからなくても、目で見て聞いて、何かを必死で感じ取っているようだ。
海沿いの国道から急な坂を登ると、洗練された箱根山テラスの建物が見えてきた。今日は、あの日とはうってかわって美しい新緑と青空。こんな日にここに来られた幸運に感謝。
中に入る前に、まずはテラスへ。今日は一段と視界が開けている。ここでの朝食は格別だったなぁ、なんて思い出しながら、家族で写真を撮ったりしていると、スタッフの方が声をかけてくださった。今日は長谷川さんも、取材をアレンジしてくださった溝渕さんもいないとのこと。あぁ、残念。でも仕方ないかな。
しばらくのんびりくつろがせていただいて、さあ出発しようかというそのとき、一台の車が入ってきた。溝渕さん!タイミングよく、午後からの出社時間と重なったようだ。再会を喜びご挨拶すると、なんと私のブログを読んでくださっていて、近くにいると思っていてくださったとのこと。なんだかうれしいな。箱根山テラスの近況をお聞きしたり、旅の話をしたり、前回の記事の反響をお聞かせいただいたり。数年ぶりにお会いして、なにげない会話を交わせることが、本当にうれしい。
途中から飽きちゃった娘がグズりだし、あまり長くは話せなかったけれど。それでも、心は満タンになった。今度は家族で泊まりに来たいと心に誓いつつ、箱根山テラスをあとにしました。あ、そうそう。今日は娘と私、昨日南三陸でつくった藍染のTシャツを着ています!
取材のときも美味しくいただいたレストラン「フライパン」でランチをいただいたあとは、さらに北へ。家族で訪れたいあの公園のある釜石を目指す。「こすもす公園」。被災して遊び場を失った釜石の子どもたちのために、多くの人が得意なことを差し出し合い、与え合いながらつくった場所。絵本にもなっていて、娘と一緒によく読んでいた。取材で訪れたとき、あたたかく迎えてくださり、お食事やイルミネーション見物にまで連れ出してくださった藤井了さん・サヱコさんご夫妻のもとへ。
私たちを迎えてくれたのは、木をそのまま活かした大きな大きな滑り台。あれ?当時よりもバージョンアップしていて、滑るところが2つになっていた。
お隣の工場長さんが背中を貸してくださった壁画も、色鮮やかな姿そのままで、うれしくなる。娘はさっそく遊具に登り、この笑顔。木のかたちや節をそのまま使っているので、上ったり這い上がったりするのが少しむずかしいらしく、きゃーきゃー言いながら私に助けを求めてくる。次から次へと、遊具に飛びつき、楽しくて仕方がない様子。息子も主人の抱っこで、ぶーらんぶーらん。
こすもす公園があるのは、釜石でも少し内陸側。そのため、ここは津波の影響を受けることなく、被災を免れていた。震災後、釜石を訪れる多くのボランティアさんのために、ごはんや寝場所を提供し続け、ここに導かれるように集結した人々とこの公園をつくり上げた藤井了さん・サヱコさんご夫妻。今日はいらっしゃるかな、と思っていたら、農作業をされているサヱコさんのお姿を発見!うれしくなり、ご挨拶を交わし、近況をお聞きして。「相変わらず遊んでいます」の一言に、サヱコさんの変わらぬあり方を感じ、心が踊りだす。なによりも、ただただお元気な様子を伺えて、本当にうれしい。
こすもす公園をフィールドに活動し、森のようちえんも運営されている深澤鮎美さん、パソナ東北創生を立ち上げ、地域内の移住支援や創業支援をされている石倉佳那子さんも、お忙しい中私たち家族を出迎えてくださり、子どもたちとともに、楽しい時間を過ごす。みなさん全力で娘と遊んでくださり、あぁ、ここはみんなの「遊び」で生まれた場所だったのだ、と改めて感じたり(詳しくは取材記事を、ぜひ)。釜石の今や、それぞれの生き方のお話も聞き、鮎美さんも佳那子さんも、なんだか共通の知り合いがとても多くて、あぁ、すでにつながっていたのね、と、うれしくなる。
あっという間に夕暮れどきに。娘は遊び足りないらしく、最後まで遊具にしがみついていた。この日は、農作業をする高校生や、ご近所さんらしい親子がゆったりと時間をすごしていたけれど、こすもす公園の自然豊かなフィールドや関わる人々の遊び心がつくる居心地の良さは、これからも、この地で生きる人々を包み込んでいくのだろうと思う。釜石で生きる女性のみなさんの凛とした美しさ、そしていつも「遊び」とともにあるあたたかな温度に触れ、私もそうありたいと心から思ったのでした。人生、「遊び」続けていきたいな。
こすもす公園をあとにした私たち、みなさんに教えていただいた釜石のお風呂とお食事を堪能し、今日の車中泊場所、道の駅「釜石仙人峠」へ。川がすぐ近くに流れているのかな、せせらぎが聞こえてきて、気持ちいい。あぁ、今日も幸せな1日でした。ありがとう。
そうそう、こすもす公園でいただいた甲子柿ジェラート、絶品でした!
貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。