見出し画像

誰もが平等に学習し挑戦できるプログラミングスクールを目指す、 CODEGYM の挑戦

あらゆる業界にDXの波が押し寄せ、できるソフトウェアエンジニアは引く手あまた。

学生の将来なりたい職業にもITエンジニアやプログラマーが入ってくるようになり、名実ともにソフトウェアエンジニアは人気職業になってきつつあります

それに伴い、大学や高専でエンジニアリングを学んでいない人でもプログラミングを学ぶことができる、いわゆる「プログラミングスクール」も増えてきています。

プログラミングスクールは、体系的に効率よくプログラミングを学ぶことができるため、未経験者がプログラミングを学ぶ上では有効な手立てのひとつです。

しかし、プログラミングスクールを事業として運営していく場合、実力がつくような充実したカリキュラムを組むと高額化してしまうし、無料もしくは格安で運営する場合は、転職を前提とした人材紹介が事業の軸になってしまいます。

経済的事情に左右されず、充実したカリキュラムを提供するにはーー。

プログラミング教育事業に携わる株式会社 LABOT の鶴田浩之さんは、そうした課題意識を持つなかで、成功した人だけが成功した度合いに応じて学費を後払いする「ISA」という仕組みに出会いました。学生が多額の学費ローンを抱えることが深刻な社会問題になっている米国では、すでに広がっている仕組みなのだとか

そんな日本初のISAを採用したプログラミングスクール事業を運営し、鶴田浩之さんをインタビューしました。実は、鶴田さんはわたしの大学時代のお世話になった先輩でもあります。

画像1

鶴田浩之(つるた・ひろゆき): 1991年生まれ。2011年、大学在学中に株式会社Labitを創業。大学生向けのスケジュール管理サービス「す ごい時間割」を開発、その後も複数の事業を立ち上げ、大手企業へ売却。2017年メルカリのグループ会社 執行役員に就任。スキル×教育領域のCtoCサービス「teacha」をプロデュース。2019年、10年後、20年後 を見据えた教育事業を手がけるため、株式会社LABOTを設立。

(聞き手・編集: 池澤 あやか)

プログラミングを学びたい人が、金銭的なハードルを超えるための新しい選択肢となりうる「ISA」とは

池澤: もっちさん(鶴田さん)は大学時代の先輩ということもあり、インタビューでもあだ名である「もっちさん」で呼ばせていただきます。早速ですが、ISAとはどういう仕組みなんですか。

鶴田さん: ISAとは、受講開始から卒業までの期間は受講費用が発生しない代わりに、一定の条件をみたした場合に卒業後の収入から一定割合をスクールに支払うという内容の所得分配契約です。

弊社では、CODEGYM ISA という卒業後の給与に変動する後払い式のプログラミングスクール事業を運営しています。

ISA は投資に近い仕組みなので、受講者は、最初にまとまったお金がなくてもスクールに通えるし、もし挫折して辞めてしまっても、金銭的リスクはゼロです。逆に言えば、そのコストは僕らが支払わなければいけないので、決して儲かるビジネスではありません。それでも、環境や金銭的な格差が広がっている今の社会には中長期的にこういうプログラミングスクールが必要とされていると考えています。

池澤: もっちさんが日本では普及していない ISA に注目した理由はなんですか。

鶴田さん: プログラミング教育事業は、改善しなくてはいけない構造的問題があります。本来、プログラミングスクールのKPIは「受講者の技術レベルが向上すること」であるはずですが、多くのスクールでは「就職できること・就職率をあげること」になってしまっています。就職できた場合は授業料を返金するプログラミングスクールもあって、こうなっていると、自分にカルチャーマッチしない企業だろうがブラック企業だろうが前職に比べて給与が落ちようが、最終的には就職しなければならない強い動機づけになるわけで……。それって受講者の幸せには繋がらないし、日本のエンジニアの質も下がっていくばかりです。

そんな業界の構造を変えたくて、CODEGYM ISAでは、「望む転職の実現までは、学費を支払う必要が一切ない後払い方式」を採用しています。

CODEGYM ISA は、受講生がIT系人材として年収を上げて就業することを前提とした収支モデルになっています。僕たちはリスクを取って選抜した受講者に投資しているため、彼らの長期的なキャリアの成功が僕たちの成功で、完全に利害が一致しているんです。

画像4

プログラミング教育事業にこだわるわけ

池澤: 儲かるビジネスではないということですが、もっちさんはなぜそこまで「プログラミング教育」にこだわっているんですか。

鶴田さん: 10代から20代にかけて、新しいサービスをつくることに注力してきて、きついことも楽しいこともたくさんありました。

一方で、子どもの頃から教師になるのが夢でした。なりたかった理由は月並みで、僕自身、幼少期にあるひとりの先生が認めてくれたことがこれまでの人生の支えになってきたから。

30代になって、本当に好きなことに注力してみようと考えたときに、プログラミングと教育が好きなので、そのふたつを掛け合わせると、僕のやるべきことはプログラミング教育なのかなと。

池澤: 当時、もっちさんが自主的に開いていた HTML/CSS 講座にわたしも参加していました。あの講座でわたしは初めて本格的にWeb制作にまつわる技術を学び、そこでの学びを生かして、Web制作会社でのアルバイトにありつきました。そのアルバイトを通じてプログラミングを覚えて、今ソフトウェアエンジニアとして働いているので、「あの講座がなかったらわたしソフトウェアエンジニアしてるのかな……? 」ってくらいです。本当に心から感謝しています。

もっちさんが友人や後輩のために自主的にしかも無料で講座を開いていたことからも感じたのですが、もっちさんは知識を独占するのではなく、シェアすることを心がけていらっしゃいますよね。

鶴田さん: 人に何かを教えて成長してくれた瞬間がとても好きなんですよね。大学生の頃に起業した Labit でも積極的にインターン生を受け入れてきましたが、それも人の成長を見るのが好きだったからです。

教材ではなく、コーチングに注力

池澤: CODEGYMでコーチングスタイルを採用している理由はなんですか。

鶴田さん: オンラインは1対多の授業にあまり向いていないというのと、プログラミングが上達するためには、とにかくプログラムを書くしかなくて、結局学習の95%くらいは自習になります。

オリジナル教材を開発しているところもあるけれど、弊社でも採用している CS50をはじめとして、良い教材はすでにインターネット上でたくさん無料公開されています。なので、スクールとしては、モチベーションを維持するための仕組みづくりや、技術的・メンタル的・キャリア的なサポートのほうが大切になってくるんじゃないかと弊社は考えています。

画像2

朝会の様子

画像3

チーム開発の様子

池澤: なるほど。鶴田さんの自身はどういうふうにプログラミングを学んでこられましたか。

鶴田さん: 僕はコンピューターが好きだったから、独学で学んでいました。つくりたいものがあって、それをつくるためにはどうしたらいいかインターネットで調べたり、ディベロッパーツールで他のサイトの構造を見てみたり、手を動かしたりしていくうちに、少しずつ実力がついていきました。

好き」っていうのは弊社でも大切なコンセプトにしています。

池澤: プログラミングは学び続けないといけないから、好きじゃないと続かないですもんね。ソフトウェアエンジニアになってからも、最新技術を追いかけないといけないし、アプリケーションやWebを構成する技術も深く学んでいく必要があります。

鶴田さん: 好きになってもらうように、技術的にもキャリア的にもサポートするし、コミュニティマネジメントもしています。好きなものじゃないと何事も続かないんですもんね。

CODEGYM Academy でコロナ禍で学習環境に苦しむ学生を少しでも救いたい

鶴田さん: CODEGYM ISAというメイン事業から派生して、先日学生向けに CODEGYM Academy というプログラムが立ち上がりました。

ちょうど昨年の夏過ぎたあたりから、大学生からの問い合わせが増えたんですよ。「コロナ禍で大学辞めちゃったんですよね」とか「休学しているんですよ」とか「学校をやめようかなと思ってます」とか。

IT業界は実力さえあれば学歴は関係ないので、こうした事情を抱える大学生や高校生に対してなにか機会を提供できないか、というところから、このプログラムははじまりました。

最初は学生向けの少額の ISA 形式で提供しようと思っていたのですが、GMOやスマレジ、Google、サイバーエージェントなど、たくさんの企業が「家庭環境・経済的事情・文系理系・住んでいる地域・ジェンダーにかかわらず、誰もが平等にテクノロジー教育を受けられ挑戦できる社会の実現を」という CODEGYM Academy の理念に共感してくださり、学生1000名に向けて無料で講座を提供できることになりました

池澤: わたしも「誰もが平等にテクノロジー教育を受けることができるべき」という CODEGYM Academy の思いに共感し、アンバサダーを務めさせていただくことになりました!採用している教材である CS50 もやりごたえのあるとてもいい教材なので、「プログラミングを学んでみたい」と考えている学生のみなさんは、公式サイトより、ぜひ奮ってご応募ください。応募期限は、2021年4月23日までです。

■ CODEGYM Academy 公式サイト

■ 関連ニュース

本記事は、日経MJでの連載『デジもじゃ通信』と連動した記事になります。

いただいたサポートは次の企みのための資金として大切に使わせていただきます。ありがとうございます。