見出し画像

スノーボードを持っていくということ

空港職員にとって、スポーツは切っても切れない関係にある。

それは、空港職員にスポーツをする人間が多いという訳ではない。

スポーツで使用するあれこれを運べるか、預かれるかと問われ、
対応をするからだ。


早朝
初便に乗るであろう、若い男女混合の集団が、
カウンターの前で楽しそうに話している。

なんとか、冬の寒さの中、
布団から抜け出してきた私たちにとって、
その元気さが眩しく見える。

それでも準備を整え、カウンターを開ける。

「おはようございます
 こちらで、お手続きを承ります」
笑顔でお客様をお迎えする。
それが空港職員である私たちだ。

呼び込んだのは、目の前で楽しそうに話していた、
若い男女の集団だ。

「おはようございます
 お手荷物のお預けですか?」
全員が自分の身長と同じか、それ以上の長さのカバンを背負っているので、
手荷物を預けるためか?、と問いかけてみる。

「はい
 これをお願いします」
厚手のジャケットを手に持って、ニット帽をかぶった男性が、
背負っていた自分の背丈以上の細長い荷物を下ろしながら言う。

「本日の搭乗の情報が分かるものはお持ちですか?」
私たち空港職員がカウンターにいらっしゃった方には、
ほぼ100%尋ねる内容だ。

「これじゃない?」
同じように厚着をした女性がそういって横からA4サイズの紙を手渡す。

「ありがとうございます
 確認をさせていただきます」
A4サイズの紙を受け取ると、内容を確認していく。

見る限り、私たち空港職員にとって、
必要な情報が網羅されている。

「ありがとうございます
 では、荷物をお預かりします」
十分な情報があれば荷物も預かれる。

「では、預けていただくお手荷物について、確認させていただきます
 壊れやすいもの、貴重品、
 こちらのパネルに該当するものは入ってますか?」
荷物を預かるためには、この質問は必ず聞かなければならない。

「はい ありません」
しっかりとパネルを見たうえで、答えてくれた。
ここでパネルを見てくれるのは、とてもありがたい。

「今日お預けの荷物はスノーボードですか?」
このシルエットの荷物は多くない。

「そうです」
やっぱり、そうだった。

もしかして…
そう思って、確認をすることにした。
「では、スノーボード用のワックスはお持ちではないでしょうか?」
スノーボードワックスは種類によって、輸送の可否が異なってくる。

「大変恐れ入りますが、拝見してもよろしいでしょうか?」
本人がとても理解していることも多い。
しかしながら、私たち空港職員は、確認をしなければならない。

「これです」
スノーボードが入っているであろう、ケースの中から、
缶に入っているペースト状のスノーボードワックスを取り出してくれた。

「恐れ入ります、こちらの説明書はお持ちでしょうか?」
引火点が摂氏60℃を超える液体状のものは輸送可能なので、
確認をせざるを得ない。

「持ってないです」
申し訳なさそうに、そういう男性

「少し、調べてみてもいいでしょうか?」
出発時間まであまり時間はないが、
インターネットを使って調べてみるしかない。

私が調べている間、ワックスを取り出した男性は、
不安そうな顔をしている。

調べているのだが、ショッピングサイトしか見つからない。
ショッピングサイトに記載されている情報は信頼性が低い。
製品を製造しているメーカー情報が最も信頼性が高い。
しかし、メーカーが情報を公開しているとも限らないのだ。

「確認させていただきましたが、
 この商品は、安全基準を満たしているかの確認が出来ませんでした」
申し訳ないところだが、内容が確実に確認できない場合、
航空機に載せることはできない。

「どうしたらいいですか?」
男性から質問が来る。
大体はこういう質問になる。

「申し訳ないのですが、破棄をしていただくほか、ないかと思います」
航空機に載せられないものである以上、提案できることは少ない。
特に、旅行ということであれば、陸送をしたとして、
短期間に手元に届けることはできない。

「車で来ているので、車に置いて来ることはできますか?」
男性は車で来ていたらしい。

「ぜひ、お願いします
 車に置いてきてくださるのであれば、問題ありません」
破棄以外の選択肢が出てくることは少ない。
しかし、今回は車に置いてくるという選択肢があったことは、
私たちにとってもありがたい。

「では、スノーボードワックスを除いた、
 こちらのお手荷物はお預かりをさせていただきます」
今回は、何とかなったことに、ほっとした。


スノーボードワックスを持ってきている方はあまり多くない。
自宅でワックスをかけてから持ってきていただいているのか、
スキー場で依頼をしているのか、どうなのだろうか?

しかし、スノーボードワックスは種類によって、持ち込めるのかが異なる。

スプレータイプや固形タイプ、液体やペーストなど、
本当に多種多様だ。

固形であれば、持ち込みも受託も出来る場合が多い。
しかしながら、液体やペーストについては、
引火点が問題になってくる。

なので、それが確認できないことには、判断が出来ないのだ。

是非、スノーボードにワックスはかけてから、
持ってきてもらうことをおすすめする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?