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【インタビュー】小さな決断の積み重ねが、望む未来につながっていく ③

前回までの記事はこちら。


■小さな決断の積み重ねが、望む未来につながっていく

そういう意味で、今回、2月11日に体験したことは、ドイツで活動していく上で欠かせないピースだった。それまで自分の中で制限して抑えていたものを外に解き放つことができたという自信にもなり、意識が大きく変わった。
この体験によって、3年前のミュージカルの舞台でのトラウマが解消されたのだが、そのトラウマから逃げずに向き合ったというような強い感覚はなかった。気がついたら、そういう流れができていた。ただ、その流れに乗るための小さな決断はしていた。優さんのレッスンに参加するかどうかを決めるときは、それが自分の人生を変えることになるとは全く思っていなかった。少し怖かったが、やってみたいと思う小さなことを一つ一つ積み重ねていったことで、自然と流れに乗っていた。
以前は、思い切って大きな決断をして人生をグッと動かさないといけないとどこかで思っていたが、今は、何も大きな決断をしようと思わなくても、小さな決断をするだけでいいのかなと思っている。ちょっとした勇気が必要なことをしていった結果が今につながっている。

「ドイツ行きだって、夫に『海外留学に行きたい』とLINEを送ることで叶った。
いつもよりも少し赤めのリップを塗ってみることも、すごくやりたいけれど怖いことだった。でも、今回、舞台に立った時に、あの時チャレンジしておいてよかったと思った。
日常の小さな望みにも耳を傾けた。家の中ではくつろげる恰好をしていたいけれど、外に出るときは可愛い自分でいたかった。それがたとえ保育園のお迎えであったとしても。そのために服も買いたい。でも、これにお金を遣っていいのかな、これはちょっとお迎えには派手かも、この歳でこの格好はどうなのとか、色々と考えが出てくるんだけど、やりたいかやりたくないかといったら絶対やりたいというのは自分でも分かっている。だから、怖いけれどやってみようと思ってやってきた。それが全てその先につながっている。ちょっと怖いけれどやってみたいと思うことをコツコツやっておいてよかった」

そういう小さな決断をしていると、人生が180度変わってしまうような大きな決断にはならない。目の前の小さなことを自分の気持ちに正直に選んでいるだけで、自分が行きたい方向にきちんと道が伸びていくような感覚がある。その感性が育っていることが嬉しいと純子ちゃんは話す。


■無いものではなく、在るものを見る

「在るものを見るようになったことも大きい。私の『今』というのは、過去の私が望んだものが結集した結果なんだという感じ。過去の自分が何を望んでいたかを定期的に見るとそれがよく分かる。私はそれに気づけたときに変わったと思う。それまでは無いものばかりを見ていたから、在るものが見えなくなっていた。例えば、夫の応援もずっと無いと思っていたけれど、実ははじめからあったということに気づいた。在る方を見るようになると、在るがどんどん増えていくから不思議」

お金が無いからお金があるという感覚に変わった話も興味深い。
半年くらい前までは、“人と比べて無い、これでは足りない”と無い方ばかりを見て不安になっていた。それまではどんぶり勘定で、あったら使って「ああ、今月も足りない」という感じでやっていた。しかし、ある時、「足りない、足りないと思っているけれど、それは本当なのか」と思い、きちんとお金と向き合おうと決心した。
3ヶ月分のレシートをもとに、収支をすべて書き出してみた。すると、使途不明金がかなりあった。払えて嬉しいというときめきもなく消えていったお金だと考えると、自分は何をやっていたんだろうと思った。
また、義理や見栄などで使ったお金、これさえ持っておけば後々いいことがあるという欲で使ったお金も結構あった。欲しいと思わないで買っているものを整理していったところ、お金がたくさん余っていることが判明した。
本当は嫌なのに、お金を得るために我慢してやっていたこともあった。嫌いな仕事でたまったストレスを発散するためのご褒美ランチなど、余計なコストもかなりあった。お金を得ても、その分使っていて、苦痛しか残っていないことに気づいた。
嫌なことをやめて、自分が満足を感じることにお金を使うようになった。また、嫌いな仕事を辞めたことでとても身軽になり、代わりに好きな仕事を増やしたところ、収入も安定した。こんなことでよかったのかと思った。

「それから、夫がすごく出世した。やっぱり嫌なことをしていないと、私も心に余裕がある状態だから、それも良かったと思う。夫が仕事に関して家で色々話すんだけど、私自身、何かあるたびにノートに書いて自分自身と対話してきたから、夫とのコミュニケーションの質もすごく良くなった。自分とのコミュニケーションが取れているから、他の人とも本質で伝え合える。当然、彼の仕事にもいい影響を与えるし、家庭の場がいいから、仕事をますます楽しめるようになったみたい。それに、そもそもお金はいつもあったと気づいてから、ますます増えていった感じ」


■自分に対する優しいまなざし

HTLのスタート時点では、"ちっちゃい"というセルフイメージだったのだが、2ヶ月経ってどう変わったのか。

「はじめは、小さい箱の中に自分から閉じこもって、うずくまっているイメージだったんだけど、今は箱から出てもいいし、入りたかったら入っていてもいいみたいな感じになった。大きいとか、私は何でもできるとか、そこまでにはならなかったんだけど、大丈夫感が強くなった。温かい日向の気持ちがいいところで好きに遊んでいいよ、可愛いね、という感じ。やりたかったらやればいいし、やらなくてもいい。すごく楽になった」

どちらを選んでもいいと思えるのは自由だ。以前よりももっと自分に優しくなったのだろう。
純子ちゃんは、子どもの頃は怖いもの知らずでやりたいことをやっていた。成長するに伴って少しずつ自分を抑えていった。自分と向き合うとそんな子どもの頃を思い出し、あのままでいればよかったのだと思った。

「どんどんその頃の自分に戻っていっている感覚はあるけれど、もっと自由になりたい」

そう言いながら、純子ちゃんは柔らかな微笑みを浮かべた。

(2020年2月17日インタビュー)

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