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正岡子規『はて知らずの記』#21 八月七日 楯岡→大石田

(正岡子規の『はて知らずの記』を紹介しています)

疲れて午後休。


七日、晴れて熱し。
殊に、前日の疲れ、全く直らねば、
歩行困難を感ず。

何やらの 花さきにけり 瓜の皮

賤が家の 物干ひくし 花葵

三里の道を、半日にたどりて、
やうやう大石田に着きしは、
正午の頃なり。
最上川に沿ふたる一村落にして、
昔より、川船の出し場と見えたり。
船便は朝なり、といふに、
ここに宿る。

ずんずんと 夏を流すや 最上川

蚊の声に らんぷの暗き はたごかな


大石田

⇒大原恒徳(自宅へ十円の送金願い。朝、楯岡から発信)(全集第22巻)

扨私去る頃申上候通り奥羽漫遊に出掛候へども兎角にはかどりかねやうやう昨夜当地着仕候 これより羽後の象潟を一見致し候上盛岡にいで再び汽車にて帰京する積りニ御座候 旅行少々病気にかかり養生旁仙台にハ一週間許り滞在仕候 病気と申しても別に何病といふでもなく只々身体疲労して朝も昼も夜も無闇に眠たき許りにて隔日位にハ午睡もいたし大に体力を養ひ候処甚だ健壮に相なり仙台を出て二日許り山路を辿り現に昨日ハ下駄ばきにて九里余之道をありき候へども足こそたるけれからだにハ申分無御座候 併し途中用心して日中ハ茶屋にやすみさなくとも二里三里許行けバ必ず一時間許休息する事に定居候/○例之通り恐入候へども今月末迄に十円丈宿許(根岸)宛にて御送付被下間敷候や 途中仙台滞在抔の為余計之費用を要し為に本月分月給の内より十円丈前借致し候次第に御座候 他の健壮書生の話をきけば一日三十銭にてすむ抔ト申候へども私のハどうしても五十銭ハ要し候故太た閉口致し候 やすミやすミの茶代馬鹿にならぬものに御座候(…)今日ハ最上川の舟にのるつもりに御座候(全集第18巻、明治二十六年八月七日大原恒徳様)


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