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心はゴブリン気分

小さい頃、お父さんはよく公園に連れて行ってくれた。小学生低学年くらいの話。

家から30分くらい車で行ったところに僕の好きなでっかい公園があって、休日はよく僕と兄とその友達で公園に連れていってくれた。
公園に着くとベンチで本を読んでいて、僕たちが夢中で遊んでいる間にコンビニに行ってお菓子とかジュースを買ってきて、僕たちは休憩にジュースを飲んだりお菓子を食べるのを見届けて、また本を開いて難しい顔をしている。そんな父だった。

あんまりこういうのは恥ずかしいけど、いいお父さんだったと思う。

これはそんな父の本当にあった話。

ある日、僕たちはいつもみたいに公園に連れていってもらえることになった。
お気に入りのサッカーボールを袋に入れて、カラーバットを車の後ろに詰んで、僕が助手席で兄と兄の友達で後ろの席に座って。さぁ出発。

その時、家の前に一台の車が止まっていた。

僕の実家は自営業だから、そんなに珍しいことじゃないけど、なんか様子がおかしい。明らかにウチの客層じゃないし、家の隣のお菓子屋さんも閉まってるし、ちょっと車を止めて父は見ていた。
不審な車から一人のおっさんが降りてきた。ぼんやりとしか覚えていないが、黒Tシャツで小太りで身長が175くらいで歳が35〜40くらいおっさんだ。ウチとウチの隣の間の電柱をじーっと見てる。難しい顔をして、決心したかのように頷くと、性器を出した。

え!!!!!??????

おい!!!!!!!!ウチの前でチンポ出すな!!!!!!!おっさん!!!!!!

土曜日午後1時の商店街。魚屋に行った帰りのマダム。自転車で友達と並んで走る小学生。暇だななんて思いながらストレッチをする時計屋のおじさん。そして電柱に性器を露出するおっさん。

おっさん!!!!??????

おっさん!!!!!!!ダメだって!!!!!

街破壊しにきたんか??

兄は後ろで友達と腹を抱えて笑っていた。僕もちょっと笑ったし、父も笑った。

おっさんは、電柱におしっこし始めた。ようは立ちションだ。街の真ん中で立ちション。多分トロフィーもらえないとやらないだろうな。

実績を解除しました。
"何者にも縛られない者"

たぶんこういうの出てたんだろうな。

父は窓を開けておっさんに言った。
「ウチのトイレ貸してやるから外でおしっこしないでくれ」

正論すぎてびっくりした。

おっさん
「もう始まっちまったからとまんねぇよ」

怖えよ。アメコミのヴィランが暴走列車を走らせた時のセリフかよ。


「そんなことしていいはずないでしょ。子供も見てますし。」

兄は後ろでずっと笑っている。僕は助手席なので父とおっさんの間にずっと挟まれてる。父を見るのは違うかなって思ったのでおっさんの立ちションを見ていた。

おっさん
「警察に捕まるわけでもねぇし別に誰に裁かれるわけでもねぇ。関係ねぇだろ。」

本物の悪党かよ。嫌なことあったんか。


「わかった。じゃあ警察呼ぶから待っとけよ」

そういうとおっさんはズボンを閉じて車へ戻っていった。

おっさんは車に乗り込むときに一言だけ

「へへっ捕まえてみやがれってな」
って言って去っていった。

父がおっさんを撃退する姿は、幼少期の僕にはさながら村を守る勇者のように見えた。

今考えるとあのおっさんは多分ゴブリンなんだと思う。

体は人間。心はゴブリン気分。土曜日だからかな。

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殺さないでください。僕は普通に生きたいだけなんです。
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