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拓郎の東京 ~地名が出てくる吉田拓郎の唄~(5)

「今度はいったい何回目の引越しになるんだろう」では魚籃坂を起点として東京都を出て湘南へと至った。
 次の曲も東京からの脱出を促している。

淋しき街(1995)
→「Tokyo」


理由もなくここはTokyo

「思い出はあふれる程あるけれど」「振り切ってこの街を出て行こう」と自分を鼓舞してみる。詞は吉田拓郎。

 湘南への浮気を経て〝拓郎の東京〟は再び23区内へと回帰する。今度は麻布界隈がその中心になる。

僕達のラプソディ(1998)
→「仙台坂」「麻布」


仙台坂を降りて 左に曲がると
麻布からの風が 追いかけてくる

 福岡県出身のタモリが日本坂道学会副会長を自称しているが、東京は意外に坂が多い。しかも暗闇坂、狸穴坂、芋洗坂、閻魔坂など味のある名の坂道が多い。
 仙台坂は有栖川宮記念公園から麻布通りへと下る坂道だ。東京で暮らす一握りのセレブの住む高級住宅地と言ってよい。警察官が入口を固めているのは、そばに韓国大使館があるからだろう。

参考マップ:仙台坂上

 確かに、坂を下りきって大きな道に出ると、(あの!)魚籃坂下から麻布十番方面へと抜ける風に合流しそうである。詞は吉田拓郎。

 そしてこの記事を思いつくきったけとなったのが次の曲である。

真夜中のタクシー(2009)
→「西麻布の交差点」「白金」「天現寺」「恵比寿三丁目」


「すいません、西麻布の交差点から白金の方へ行って下さい」
「わかりました! 天現寺からでいいですね。お客さん!」

「天現寺はどっちへ曲がります? お客さん!」
「あ! まっすぐ行って、恵比寿三丁目の方へお願いします」

 西麻布の交差点は、青山霊園の南、六本木通りと外苑西通りが交わるところにある。
 そこから白金方面へと南に進む。

参考マップ:西麻布交差点。直進して「白金の方へ行って下さい」

 両サイドはカネの匂いしかしない高級住宅地・商業地である。朝の早い時間帯には幼稚園児を車で送迎するマダムの姿が見られる。それにしてもマダムたちの服装はなぜ紺色のワンピースで見事に統一されているのだろう。
 まっすぐ進み続けると歩道橋の架かった天現寺橋交差点があり、その右前方の先が目的地の恵比寿三丁目である。(それなのに、左に曲がって裏道を云々という事情は、車を運転しない筆者には分からない。)

参考マップ:天現寺橋交差点

 後から気づいてみれば、タクシーで移動しているこの道のりは、『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』などの著書でお馴染みの矢部宏治が、在日米軍横田基地から六本木ヘリポートを経由して日米合同委員会が開かれるニュー山王ホテルに米国の要人がフリーパスで日本に入国できると指摘しているルートではないか。
 詞はTakuro Yoshida。もちろん拓郎の念頭には、日米安保のような政治的なことなどまったく無いだろうけれど。

(次回に続く)


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