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『ざっくり理解する原子力発電』 日本の業界には、現在どのようなプレーヤーがいて、何をしているのか?

Kindle電子書籍『ざっくり理解する原子力発電 誰が・日本のどこで・何をしているのか』より一部を抜粋して公開します。


 日本で原子力発電に関わっている現役プレーヤーにはどのような組織があるのか。

 ◇

 これについては吉岡の著書(吉岡斉『新版 原子力の社会史 その日本的展開』朝日選書 二〇一一年)が理解を助ける〝補助線〟を提供してくれている。

日本の原子力開発利用体制の、国内体制としての構造的特質は、「二元体制的国策共同体」というキーワードで表現することができる。ここで二元体制というのは、原子力開発利用の推進勢力が二つのサブグループに分かれ、それぞれが互いに利害対立を調整しつつ事業拡大をはかってきたことをさす。また国策共同体というのは、二つのサブグループからなる原子力共同体が、原子力政策に関する意思決定権を事実上独占し、その決定が事実上の政府決定としての実効力をもち、原子力共同体のアウトサイダーの影響力がきわめて限定されてきたことをさす。

 二つのサブグループとは何か。

つまり電力・通算連合と科学技術庁グループが、たがいの縄張りの棲み分けをはかりつつ、それぞれの事業を進めてきたのである。なお二元体制とは、事業性格の縄張りにかかわる概念であり、事業内容の縄張りにかかわるものではない。すなわち一方の電力・通算連合は、商業段階の事業を担当し、他方の科学技術庁グループは商業化途上段階の事業を担当してきた。

 二つのサブグループとは「科学技術庁グループ」と「電力・通算連合」である。
 そして、前者は「商業化途上段階の事業」を担当し、後者は「商業段階の事業」を担当するというように棲み分けてきた。

電力・通算連合のおもな構成メンバーは、次のとおりである。
(1)通産省(およびその外局である資源エネルギー庁。二〇〇一年からは経済産業省(経産省)
(2)通産省(経産省)系の国策会社(電源開発株式会社)
(3)電力会社およびその傘下の会社(九電力、日本原子力発電、日本原燃)
(4)原子力産業メーカー
(5)政府系の金融機関(日本開発銀行、日本輸出入銀行。のちに国際協力銀行、日本政策投資銀行に統合)

 これに対して、

科学技術庁グループは、科学技術庁(二〇〇一年に文部省に併合され文部科学省に)本体と、それの所管の二つの特殊法人(日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団)、および国立研究所(理化学研究所、放射線医学総合研究所など)を、主たる構成メンバーとしていた。

 なおそれぞれのグループの特徴として、電力・通算連合は海外からの「導入習得路線(燃料については原料の海外からの購入委託路線)」を、科学技術庁グループは「国内開発路線」を志向してきたと言う。
 さらに科学技術庁グループの行う事業については、

それらはおしなべて遅延に遅延を重ねており、一つとして真の意味での実用段階(つまり電力供給等の実用目的に供する事業として、それぞれの対抗馬に対する経済的競争力をもつ段階)に達していない。

 と評価されている。
 さらに両グループの関係について次のように指摘する。

ここで読者に注意していただきたい点は、科学技術庁グループが自分自身の手で、開発途上段階の技術の商業化という最終目標を完遂することが、決してできない仕組みになっていたという点である。なぜなら商業段階の事業の実施は、電力・通産連合の縄張りとなっているからである。仮に科学技術庁グループが商業化への道筋をつけたと自負するような成果をあげても、電力・通産連合がその受け取りを拒否すれば、それまでの科学技術庁グループの努力は水泡に帰すこととなる。このように科学技術庁グループは、最終目的の達成に関して、他力本願的な立場に立つことを余儀なくされてきた。

 以上の吉岡の〝補助線〟を頼りに、原子力発電の界隈で活動している現役の組織・プレーヤーを列挙すると次のようになる。


(続きはKindleでお楽しみください。)


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