これはひどい実話。映画「ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金」(感想)
バカってなんだろう
ドウェイン・ジョンソンが出演しているという理由だけで手に取った本作。サブタイトルからするに、凡そ最終絶叫計画みたいな感じだと思っていたのだ。(ちなみに最終絶叫計画を観たことはない)
ボディビルダー3人が、金持ちを誘拐して財産を強請り取るらしい。これはマッチョがたくさん筋肉をふるってくれそうだ。
開幕一番、主人公ルーゴ(マーク・ウォールバーグ)がジムの屋上で筋トレをしながら「I'm strong!」「I'm big!!」「I'm hot!!」と叫んでいる。これだよ!!!!いいぞ!もっとやれ! ‥と思っているとサイレン鳴り響き警察が突入。「Shit!」と悪態ついて走り出すルーゴ。ジムから脱出した瞬間、超スローモーションでパトカーが激突‥そして
「これは実話である」
まじで?これそういう映画だったのか。今まで全然そんな気配無かったし、これからも無いけどな。
筋肉は裏切らない。
でも筋肉しかなかったら‥? ルーゴはジムのトレーナーで、金持ちの年寄りの体を強くし、よき友人となるのが仕事だ。日々の生活はそんなに悪くない。でも。
こんなにグレートな肉体、努力の美しい結晶を持っているのに、この醜い老人にはあり余る資産があって、なぜその全てが俺には無いのか。そのおこぼれを貰う生活が、人生なのか? 嫌味で醜い老人の成功のすべては自分にこそ相応しかったはずだ、だってアメリカってのはそういう国だろ?
バカな人間がやるバカなこと
ここで老人が積み重ねたはずの努力にまで想像力は至らない。(だってバカだから。) 自分の努力に対する成果を「俺とお前」の間だけでペイさせようとする。(だからバカなんだ。) そして自己啓発セミナーにいく。(バカが知恵をつけた気になった。) ここから転げ落ちるように、仲間を集めて犯罪に手を染めていく。(仲間もみんなバカ。) 行き当たりばったりで詰めが甘く、ズルズルだらだらと下手を打つ。(理由が"バカ"しかない) 脳みそ付いてるんだから使えよ!
私はコメディ映画の中でも「ホームアローン」みたいなやつが大っ嫌いだ。なぜなら人間が愚鈍すぎるから!!! バカがやるバカな行為を観て面白いか? ‥その考えは変わらないが、この映画、何かがおかしい。五感は「これは私が嫌いなコメディだ」と言っている。でも頭がそうじゃないと言っている。
それでもまだ実話
少々ショッキングだが、散々バカのやる愚行を見せつけられてうんざりしている私に突きつけられる事実だ。それこそが違和感の実だったのだ。
普通に考えれば人から奪ったお金で生活しようというのなら、少なくとも計画だけはオーシャンズばりに緻密に立てるべきなのだ。それが何にもない。全員が全員、後先考えず行き当たりばったりで、その後始末のためにどんどん犯罪がエスカレートしていく。それでもやることが‥溜息しか出ない。
マイケル・ベイ監督作らしいド派手な画に、確かにブラックコメディとして散々なことが次々に巻き起こり、(もううんざりだが)でも辟易しきれない。「普通こんなバカしないだろ! ‥‥え、やったの?」とある種 肝が冷える。
まとめ
結局つまらない映画なのか、いやでもこれが実話だと思うと理解の範疇を軽く超える。これはどえらいことなのでは?と、この不可解な感覚を確かめるため、日本語字幕、英語字幕、日本語音声で計3回見た。隣人が実はものすごく頭の切れる連続殺人犯だったら震えあがるだろう。だがバカでも怖い。
散々ひとをバカ呼ばわりしたことに若干罪悪感を感じ始めたが、バカというのは問いの立て方を間違える人間のことだ。正しい問いを立てねば、正しい答えには辿りつけない。ずっと踏み外したまま転がり落ちていった"実在する"男たち。コメディなのにどこか怪談のような、背筋を冷たいものがそっと伝った。